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蛇の足 『ダブルブリッド Drop Blood』

ダブルブリッド Drop Blood中村 恵里加
ダブルブリッドDrop Blood (電撃文庫 な 7-12)
作者みずから「蛇足」と断言した後日談『続いた世界のある顛末』ほか、優樹の子供時代を描いた『こどもらしくないこども』シリーズ3編と、大田真章、相川虎司、帆村夏純のエピソードを収録した短編集。

個人的には飯田敦彦がお嬢さん=片倉優樹を遊びに連れていく話が気に入っている。神社のお参り、寄席、ドジョウ専門店。小学六年生の女の子を連れていく場所として、正直どうかと思うが、そんなコースが不思議と似合ってしまうのが片倉優樹という存在である。年齢の割に老成している。

お嬢さんとの会話に苦労する飯田と気を遣いすぎる優樹の会話はぎこちない。老成せざるを得なかった優樹は、めったに笑わない。幸せそうに、楽しそうに笑わない。太古から生きる鬼が本気で子供を喜ばせたくて、あれやこれや苦労するさまはユーモラスで、そして優しさに満ちている。
 優樹が鰌を口に運ぶのを、飯田は固唾をのんで見つめる。これで口に合わなかったらどうすればいいのだろう。優樹はたとえ不味いと思っても不味いとは言わないだろうが、そんな嘘はつかれたくはない。
(何を、俺は緊張しているのだろう)
 自分が好む食べ物を、優樹が嫌うかもしれない。そんな些細なことに、飯田は敵と殴り合うのと同じように拳を握り締めた。もし優樹が一口食べて少しでも表情を歪めたら、この拳を自身の腹にでも叩き込んでやらねばなるまい。

アヤカシでもなく、人でもない、二重雑種(ダブルブリッド)。彼女は徹底的に孤独な存在で、ゆえに老成してしまった。ため息をつきながら。不安定な存在ゆえに短命でもある。本当に短い生だった。その生涯について、色々な感想はあるだろう。

しかし彼女の言葉を借りるなら、死ぬまで生きることができた。死にたいと何度も思ったろうが、死ななかった。彼女が望んだのは、残された者たちにも、死ぬまで生きてもらうことだった。

『続いた世界のある顛末』は、最終巻に収められなかった、残された者たちのその後を書いた物語である。そこには片倉優樹の願いと想いが込められている。だから蛇足ではあるが、これもまたまぎれもなく『ダブルブリッド』の一部なのだと思う。
この話は、蛇の足です。その足は、蛇の尻尾を引きちぎって足にしたものであり、この足が蛇の一部であることにはかわりはありません。

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