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ゲームにおけるテキストのリアリティ

実は今日は別の記事を掲載するつもりでした。
ある書評の中で、小説の会話におけるリアリティについて書いていたのですが、ふとゲームにおける「テキストのリアリティ」について書いてみたくなりました。


■まずはストーリーゲームのリアリティから

まずはストーリー性の高いゲームから入った方がわかりやすいでしょう。そういうゲームでは、小説や映画に近い意味で解釈してかまいません。良い例はなんと言っても『ドラクエ』でしょう。また公の場での言及としては、『ゼルダ』の店員の台詞の例がありますね(「ゼルダの伝説」のフランチャイズの進化について ”ゼルダらしさ”を損なわず、継承と変革を判断する)。

メニューの項目はどうでしょうか?
一番分かりやすいのはゲームを始める部分です。『ドラクエ』ではパスワードを「ふっかつのじゅもん」、セーブデータを「ぼうけんのしょ」と呼んでいます。当時の水準からいえば、かなり気を遣った表現です(当時は「パスワード」「バッテリーバックアップ」「セーブファイル」といった無機的な用語がそのまま使われているゲームが多かったのです)。まぁ今でも雑なソフトはありますけども。

プレイヤーがゲームの中の世界に没入していくタイプのゲームでは、デモや台詞だけでなく、ゲーム中のあらゆるテキストがその世界観に合っている必要があります。そうでないとプレイヤーが醒めてしまいます。ノベルゲームはテキストが重要な割りに、メニュー関連の言葉選びは雑ですね。その辺りが(ノベルゲームに慣れきった)マニア以外は相手にしてないなあ……と感じる所です。


■1人1人のユーザーに話すことができないから、ゲームにしゃべらせる

では物語性の薄いゲームで、「テキストにリアリティがある」とはどういうことでしょう?
ゲームというインタラクティブなメディアでは「わかりやすさ」が非常に重要視されます。メニュー等のUI、ゲームの説明、結果表示などなど、至る所でわかりやすさが追求されます。

昔からの人によく言われるのが「ユーザー1人1人の所に行って説明できるならいいけど、数十万人の家庭に行って説明するわけにはいかないんだよ」という事です。つまりゲームにおけるテキストとは、作り手がユーザー1人1人の目の前で、説明し、賞賛し、励まし、叱咤するかわりにゲームにしゃべってもらうことなのです。

例えば、そうですね、『脳トレ』を例にしますが、あのゲームでは教授はひたすらプレイヤーを誉め、励まします。また、事あるたびに、毎日トレーニングを続けましょうといい、その効用を説き続けるのです。あのゲームは「脳を鍛えるためのトレーニングを毎日続けて、その結果として脳年齢を測定する」という目的にむかって、あらゆる要素が整っています。ゲームの製品としての使命と、テキストの意図が一致しているんです。

テキストのバリエーションは少ないし、特別、文章が洗練されているわけでもありませんが、あのソフトのテキストは意図が一貫しています。当たり前のように思われるかもしれませんが、意外と少ないのですよ。


■リアリティがあるテキストとは

脳を鍛えたり、英語や漢字を学習できる実用ソフトが多数発売されているなか、愛嬌を持たせるためにキャラクターを使ったり、アドベンチャーモードみたいな物を入れているソフトはいくつもありますが、トレーニングの成果を確認するようないちばん大切な部分で、妙に無機的だったり、官僚的だったりします。テキストがソフトの目的を忘れてしまっていることがあるのです。

例えば、想像してみてください。
あなたが英会話教室の営業で、やってきてお客さんを勧誘して、入会させなければいけない立場だとしたら、あるいは3日間の体験入会で、その間にお客さんに正会員になってもらわなければならないとしたら、いったい何を話しますか?

英語が下手だからといって笑いますか? いえ、うまくできる所を見つけて、ちょっとした自信を錯覚させ、もっと続ければもっと英語がしゃべれると思い込ませるのではないですか? 3日間でほとんど結果が変わらなかったとして、あまり変わってませんね、とそのまま正直にコメントしますか? そんな営業はクビですよね。どうやって誉めようか、どうやって励まそうか、真剣に考えるはずです。

たぶんそういう事は、ほとんどの人ができるのです。人間、面と向かって人がいれば、それなりに対応できます。上手い下手はあるでしょうが、少なくとも相手の事は意識するはずです。ところが目の前に相手がいないと、途端に難しくなるのです。

できることができなくなる。それは作り手がリアリティを持てていないからです。つまりゲームのテキストのリアリティとは、ユーザーが目の前にいる時のように語れるかということなのです。


補足:どうやってリアリティを持つか

ブログを読んでいて最近、デジタル家電のUIやWeb2.0の絡みで「おもてなし」「心配り」「サービス精神」といった言葉を見かけることがあります。非常に良い言葉なのですが、ブログでそういう言葉を読んでも、まぁ頭ではわかるし、納得するのですが、いざ実践しようとすると、意外と難しいと感じることはないでしょうか?

ユーザー志向といっても、実際に面と向かって話したこともないのに、どんな実感がわくでしょうか? そこまで想像力がある人は普通いません。

ゲーム制作者は職場にこもりがちではあるのですが、アーケード系の会社ならロケテに出向くことがありますし、それ以外の会社でもイベントの説明員をやることもありますし、ある程度年季をつむと新卒や中途の面接をしますし、会社の説明会を手伝いますし、人によってはCEDECやGDCで講演することもあるでしょう。

制作者にしてみると、そういう場は面倒くさく感じられることもあるでしょう。ゲームを作るのが仕事なのに、なんで……と思うかもしれません。しかし仕事の中で、ふだん話す機会のない社外の人と話すというのは、良い訓練になりえます。

あるアーケードゲーム開発者の人と話したときに、言っていたことです。アーケード系の会社では、新入社員を店舗に派遣して研修することがあるそうで、そういう体験は実はとても贅沢なものだったことに後で気づいた、と。

実際にユーザーと接する機会を得るのは有益です。また企業も意識的にそういう機会を与えるべきです。そうでないと「ユーザー志向」という言葉が空々しいものになってしまいます。そこまでが第1ステップです。

そしてもう1つ大切なのが、そういう体験と制作をきちんと線でつなぐことです。この第2ステップが難題なのです。第1ステップはじつはそんなに難しくありません。目の前に他人がいれば、人間はそれなりに対応しようとするからです。目の前に相手がいない時に、人を前にしたように語れるか。それはより意識的に仕事しなければ身につかない、おもてなしのリアリティなのです。

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テーマ:ゲーム - ジャンル:ゲーム

コメント

とても納得できました

はじめまして。
非常に読み応えがあり、また納得することができる記事で、大変参考になりました。

関係ないかもしれませんが、10年以上前、まだ私が小学生だったときには、つまらないゲームをプレイするたびに、
「自分のような小学生のいうとおりにゲームを作らせれば絶対楽しいものが出来るのに!」と思ったものでした。
自分が楽しいものがみんなにとっても一番楽しいはずだ!
という痛い勘違いをしていました。
でも、人に伝えることは自分で感じるよりも格段に難しいんですよね。

>ノベルゲームはテキストが重要な割りに、メニュー関連の言葉選びは雑ですね。その辺りが(ノベルゲームに慣れきった)マニア以外は相手にしてないなあ……と感じる所です。

そのあたりは、小説で言うところの装丁にあたる気がしました。
もくじや表紙、帯、しおりなど、凝っているものはとことん細部にまでこだわっていて感心します。
それらは文庫本になってしまうと、どれも装丁という点ではある程度テンプレート化されてしまい、大体は表紙のイラストぐらいでしか差別化がされないのですが、
文庫本はまた文庫本なりのとっつきやすさがありますよね。
どの出版社の本かが一目でわかるのは、整理好きの自分にとっては大きな利点です。

似たように、セーブデータを「ぼうけんのしょ」と表示するのも「ロード」と表示するのも、それぞれなりに良さがあるのかなぁ、とも記事を読んでいて思いました。

とっちらかった文章で、すいません。。

これからもブログの運営、がんばってください。
期待して読ませていただきます。

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