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人々を誘いだせ 『クロスイッチ』
クロスイッチ 電通式クロスメディアコミュニケーションのつくりかた

アップルや任天堂のサクセスストーリーは多くの人が知っている。
世の中の大半の人にとって、それは「遠い物語」であって、身近で役に立つ実感は持てないのが現実だろう。革新的な商品と巧みなプレゼンテーション、考え抜かれたプロモーション。美しく素晴らしく輝かしい物語がそこにある。
しかし革新は希少だから革新であり、サプライズはめったに無いからサプライズなのだ。
世間には定番の商品、あまり変わらなくてもいい商品、何気ない商品、既存のプロダクトを改良した商品が満ちていて、それらは美しくなく、素晴らしくなく、輝かしくない。ほとんどの人間はそういうモノを作り、改良し、売っている。
「革新」や「天才」といった言葉と無縁の商品群は、消費者からの関心をうしないつつある。ネットの普及に伴い、手に入る情報が増えると共に、人々は自分が関心を持っている情報をより多く摂取し、興味の無い情報を無視しはじめた。関心と無関心のあいだの壁は、おそろしく高くなってしまった。それが著者たちがのべる「情報バリア」である。
「情報バリア」から消費者を誘い出すためにどうしたらいいのか?
電通のプロジェクトチームが実際の仕事の中で編み出し、積み上げたノウハウ。その結晶が本書、クロスイッチである。
明確に差別化された商品であれば、最初に注目を集めれば、口コミが自然発生しやすいだろう。しかし大半の商品は、新鮮味がなく、マイナーバージョンアップのくり返しで、大きな差別化は難しい。
ここにはiPodも、ニンテンドーDSも、Wiiも登場しない。かわりに取り上げられているのは、縮小する漫画雑誌市場で新しく創刊された漫画雑誌(ジャンプSQ)、かつての人気が衰えつつあった長編小説シリーズ(ハリー・ポッター)、昔からあるカップヌードル(日清カップヌードル)といった10の商品だ。
商品そのもので差別化が難しいなら、単に大量のCMを投下しても、効果は薄い。クロスメディアでは消費者をどうやって動かすか、その「導線」を作るのが大切になる。シナリオを練り、消費者の生活サイクルの中で商品との接点(コンタクトポイント)を配置していく。
消費者に均等に情報をばらまくのではなく、意図的に格差をつけるのも口コミの発生には効果的だ。ジャンプSQの「検索しないで」は、するなと言われればしたくなる心理と、手間をかけて得た知識は他人にしゃべりたくなる心理をうまく突いている。『ハルヒ』のWebサイトの数々の仕掛けでも同じことがいえる。
好奇心を刺激するシナリオ作り。そこまでくれば、もはや広告はただの宣伝ではなく、エンタメ性を帯びてくる。事実、「FREEDOM-PROJECT」はアニメのDVD制作も行われ、アニメ事業とCM制作の両方に足をまたいでいる。
本書では触れられていないが、最近海外で注目を集めているARG(代替現実ゲーム)も、ゲームをクロスメディアに応用した事例といえそうだ。日本では、CM映像をユーザーに作らせるプロモーションも出てきており、UGC(ユーザー生成コンテンツ)もまた広報との親和性が高い。
現代においてコンテンツと広告の境界は曖昧であり、ARGのような現実を利用した新ジャンルの台頭や、UGCの隆盛にともない、さらに境界は曖昧になってきている。もはや開発は開発だけしていればよい時代ではなく、広報も宣伝だけしていればよいわけではない。
そういう時代に仕事するすべてのコンテンツ制作者に、本書をお薦めしたい。

アップルや任天堂のサクセスストーリーは多くの人が知っている。
世の中の大半の人にとって、それは「遠い物語」であって、身近で役に立つ実感は持てないのが現実だろう。革新的な商品と巧みなプレゼンテーション、考え抜かれたプロモーション。美しく素晴らしく輝かしい物語がそこにある。
しかし革新は希少だから革新であり、サプライズはめったに無いからサプライズなのだ。
世間には定番の商品、あまり変わらなくてもいい商品、何気ない商品、既存のプロダクトを改良した商品が満ちていて、それらは美しくなく、素晴らしくなく、輝かしくない。ほとんどの人間はそういうモノを作り、改良し、売っている。
「革新」や「天才」といった言葉と無縁の商品群は、消費者からの関心をうしないつつある。ネットの普及に伴い、手に入る情報が増えると共に、人々は自分が関心を持っている情報をより多く摂取し、興味の無い情報を無視しはじめた。関心と無関心のあいだの壁は、おそろしく高くなってしまった。それが著者たちがのべる「情報バリア」である。
「情報バリア」から消費者を誘い出すためにどうしたらいいのか?
電通のプロジェクトチームが実際の仕事の中で編み出し、積み上げたノウハウ。その結晶が本書、クロスイッチである。
明確に差別化された商品であれば、最初に注目を集めれば、口コミが自然発生しやすいだろう。しかし大半の商品は、新鮮味がなく、マイナーバージョンアップのくり返しで、大きな差別化は難しい。
ここにはiPodも、ニンテンドーDSも、Wiiも登場しない。かわりに取り上げられているのは、縮小する漫画雑誌市場で新しく創刊された漫画雑誌(ジャンプSQ)、かつての人気が衰えつつあった長編小説シリーズ(ハリー・ポッター)、昔からあるカップヌードル(日清カップヌードル)といった10の商品だ。
- ジャンプSQ 創刊キャンペーン (集英社)
- 漢字検定DS 販促キャンペーン (ロケットカンパニー)
- 日清カップヌードル 「FREEDOM-PROJECT」 (日清食品)
- 爽健美茶 「Beautiful Story あしたまでの距離」 (日本コカ・コーラ)
- トヨタのCSR活動 「あしたのハーモニー」 (トヨタ)
- ハリー・ポッター 「今日は街へ出て、魔法をかけよう。」 (ワーナー・ブラザーズ)
- Roots 「ルーツ飲んでゴー!」 (JT)
- アメリカの地方ラジオ局KTRS 「盗まれた鳥」キャンペーン (KTRS)
- モバイルSuica ユーザー獲得キャンペーン (JR東日本)
- 牛乳 「牛乳に相談だ。」 (中央酪農会議)
商品そのもので差別化が難しいなら、単に大量のCMを投下しても、効果は薄い。クロスメディアでは消費者をどうやって動かすか、その「導線」を作るのが大切になる。シナリオを練り、消費者の生活サイクルの中で商品との接点(コンタクトポイント)を配置していく。
消費者に均等に情報をばらまくのではなく、意図的に格差をつけるのも口コミの発生には効果的だ。ジャンプSQの「検索しないで」は、するなと言われればしたくなる心理と、手間をかけて得た知識は他人にしゃべりたくなる心理をうまく突いている。『ハルヒ』のWebサイトの数々の仕掛けでも同じことがいえる。
好奇心を刺激するシナリオ作り。そこまでくれば、もはや広告はただの宣伝ではなく、エンタメ性を帯びてくる。事実、「FREEDOM-PROJECT」はアニメのDVD制作も行われ、アニメ事業とCM制作の両方に足をまたいでいる。
本書では触れられていないが、最近海外で注目を集めているARG(代替現実ゲーム)も、ゲームをクロスメディアに応用した事例といえそうだ。日本では、CM映像をユーザーに作らせるプロモーションも出てきており、UGC(ユーザー生成コンテンツ)もまた広報との親和性が高い。
現代においてコンテンツと広告の境界は曖昧であり、ARGのような現実を利用した新ジャンルの台頭や、UGCの隆盛にともない、さらに境界は曖昧になってきている。もはや開発は開発だけしていればよい時代ではなく、広報も宣伝だけしていればよいわけではない。
そういう時代に仕事するすべてのコンテンツ制作者に、本書をお薦めしたい。
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