Latest Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

あの懐かしい夜にようこそ 『死図眼のイタカ』

死図眼のイタカ杉井光
死図眼のイタカ (一迅社文庫 す 1-1)
ライトノベル界衰退の兆しと言われる『ばけらの!』を執筆したことで、さらに注目が高まっている杉井光だが、空気を読まずに『死図眼のイタカ』を取り上げよう。

『火目の巫女』でデビューした杉井光は、救いのほとんど無い終わり方を好む作家だった。絶望の夜の中でたった1本だけろうそくの明かりがはかなく揺れているような、それさえ今にも消えてしまいそうな小説を書いていた。『されど罪人は竜と踊る』の浅井ラボに連なる、鬱作家になる可能性もあった。

しかし杉井光は『神様のメモ帳』と『さよならピアノソナタ』を経て、徐々に明るく、希望に満ちた終わりを描くようになっていった。『ピアノソナタ』は不器用な少年少女が言葉以上に音楽で語り合う、良質な青春ストーリーだ。

けれども夜が無ければ、希望に満ちた朝も、あらゆる物が躍動する昼間も、はかない夕暮れも無いのだ。杉井光という作家の「夜」はここにある。夜の闇は人の心をすくませるし、呑み込まれそうな恐れを抱かせる。震える足で無理に踏み入る必要は無いのかもしれない。

それでも人は夜を欲する。

地方都市を支配する女系の一族、朽葉嶺家。主人公の朽葉嶺マヒルは次期当主の婿として、四つ子の姉妹と共に育てられた。20年に1度の儀式によって、彼女達の中から次の当主が選ばれ、残りの娘はそれぞれ分家に嫁いでいく。

傍から見ればいびつな掟は、当事者達には生まれた時から当たり前のことにすぎない。何の疑問を抱くこともなく、マヒルは可愛い四人姉妹と平穏な生活を送っていた。彼の周囲で、少女猟奇殺人がくり返し行われ、鴉をつれた黒衣の少女が現われるまでは。

殲滅機関の遺影描き、藤咲イタカ。
彼女と出会うことで、マヒルは地方都市の歴史に隠された秘密に迫っていく。

古参のノベルゲーマーならピンとくるだろう。90年代後半から2000年前後にかけて数多く発売された伝奇ノベルゲームを思わせる設定であり、本書を読んでいるうちに、ふしぎとあの夜の匂いが蘇ってくる。90年代後半のノベルゲームラッシュにこの物語がまぎれ込んでいても、違和感は無い。

どの娘も可愛い四つ子との日常シーンがもう少し長ければ、まったく言うことはないのだが。昼間の光が強ければ、夜の闇はさらに深くなっただろう。



関連
凶悪ドラッグVSニート! ニート探偵が難事件を解決!! 『神様のメモ帳』
あのニート探偵が帰ってきた! 二億円の大金をめぐる事件 『神様のメモ帳 2』
恋と革命と音楽 『さよならピアノソナタ』
音楽で会話するバンド小説 『さよならピアノソナタ 2』


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

メールアドレスおよび名前の無い投稿はすべて掲載不許可となります。また明らかに偽のアドレスの場合も不許可です。

管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

2017-08

  • «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • »

検索



カテゴリー

月別アーカイブ

最近の記事

最近のコメント

連絡先

RSSフィード

忍者カウンター

 

 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。