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グロテスクな新人 『PSYCHE(プシュケ)』

PSYCHE(プシュケ)唐辺 葉介
PSYCHE (プシュケ) (SQUARE ENIX NOVELS)
唐辺 葉介。まったく無名の新人作家が今、ネット上で注目を集めている。
「しかしこの家は気持ち悪いな。きみの内臓のなかにいるみたいだ」
彼の正体をめぐって噂が流れている。ノベルゲームライターを引退した瀬戸口廉也ではないか、と。声優・榎津まおの日記(7/31)をもって、確定という意見もあるが……。一部に熱狂的な人気をほこるライターだけに、消えていくのを惜しむ声は多かった。ファンの願いが叶ったのなら、それに勝る出来事はない。

いずれにしても、この新人がおよそ新人らしからぬ、飛び抜けて異様な(グロテスクな)小説を書き上げたのは事実だ。はっきり言っておこう、本書は決して、心身が疲れている時、心が鬱な状態で読んではいけない。最低の体調で、最悪の劇薬を口にするようなものだ。引き込まれるぞ! 部屋から出られなくなりかねない。

表紙の冬目景のイラストに惹かれる人もいるだろう。だいじょうぶ。冬目景の世界と完全にマッチした、いや、それ以上に静かで暗い世界が待っている。

飛行機事故で家族をすべて失ったナオ。しかし彼には死んだはずの家族の姿が見えた。自分はおかしくなってしまったのだろうか……疑問に思いながらも、ナオはそんな奇妙な状態に慣れていく。絵を描きながら、「家族」と静かに暮らす日々。傍目には一人っきりの寂しい生活だが、幼なじみで従姉妹の藍子が遊びにきては、何時間も話をして帰って行く。

透明感のある文体で、淡々とつづられていく日常。
奇妙だけれども、大きな変化は無く、あたかもこのまま続いていくかのような気がしていた。
けれども兆候は少しずつ表れる。

後半、ある事実が明らかになった途端、世界の様相はグロテスクに変貌を遂げる。
現実は歪み、狂い、壊れていく、美しく。
卓越した文章力によって描かれる、静かに狂っていく様子は圧巻。壊れた万華鏡のように入り乱れる現実。しかし万華鏡のようにどの現実も美しい。これは恐怖(ホラー)ではない。ただの異様(グロテスク)だ。

劇中では蝶が象徴的な意味をもっている。各章の扉絵を舞う蝶が増えるにしたがい、現実は幻覚と区別がつかなくなっていく。ブックデザインは秀逸で、あたかも蝶たちが現実に浸食してくるかのような錯覚をおぼえるはずだ。

狂っていく現実と共に、現実に対する投げやりな気持ちがわいてくる。見えている現実が現実じゃないって? どっちだっていいじゃないか、自分には見えているのだし、だって自分には見えるものしか見えないのだから。引き込まれるぞ! 再度、注意しよう。鬱な時に読むのは危険だ。

いく通りもの解釈が可能だが、どんな解釈もぴったり当てはまらない気がする。どこまでもつきまとう違和感。噛まずに呑み込む以外無いのではないか。これはライトノベルでは断じてないし、一般文芸の枠でもない。言葉で作られたただの異様(グロテスク)である。


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コメント

冬目景ファンとしては表紙のイラスト絵にものすごく惹かれるんですが
どんな内容なのかちょっと気になりますね
冬目景作品で近い作品ってのはないでしょうか?

>Ni.O さん
うーん。
絵は内容に合ってますが、内容的に近いものは無いですね。
あえていえば初期作品に近いか・・・・?

冬目景はここまで、内面世界(精神世界)に迫らないと思うんですよね・・・・。

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「内臓」です。
ご指摘ありがとうございました。

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