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邪気眼は衰退しました。田中ロミオ最新作は痛ノベル 『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い ~』

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い ~田中ロミオ

SF+妖精さんファンタジー『人類は衰退しました』で小説家デビューした田中ロミオが、またしてもとんでもない爆弾を投げてきた。すでにあちこちのライトノベル書評サイトで話題になっているが、ひさしぶりに痛い青春小説を読んだ気分だ。

この「痛さ」は、『ネガティブ・ハッピー・チェーンソー・エッヂ』や『NHKにようこそ』に類する痛さだ。共通しているのは、世間的に見て痛いことをやり続ける若者の姿をこれでもかと描いた点。彼らはどうして現実とズレるのか、妄想を見ているから。どうして妄想を見るのか、現実で生きていくのが辛いから。優れた青春小説は、現実とズレてしまう若者たちの、痛々しい叫びを書き出してみせる。
 佐藤良子……いや、異世界の炭素型活動体にして青の魔女リサーチャーは、今の俺では太刀打ちできない難敵だ。
「帰還なんてやめろよ! ずっとこっちにいたっていいだろ!」
「一郎こそ、この世界が楽しいと本気で思っていると?」
「それは」嘘のつけない質問を投げられた。「……そうさ。普通の高校生らしさになじめない人間だよ、俺を。けど、こうやって頑張ってんだろ!」
「私は頑張れない」
「なんで頑張れないんだよ!」
「狭量だから」
「誰が」
「世界が」
子供にとって世界は狭く、自分の小ささを自覚しない。無邪気な世界の王様だ。大人は世界の広さと自分のスケールに慣れている。その間にいる中高生は、拡大する世界と自分の小ささに絶望させられる。世界がどれだけ広くても、学校のクラスという檻からは逃げられない。大人達の社会に呆れつつも、等身大の自分は「学級政治」という、空気の読み合いに束縛されている。

経済的にも自立なんて不可能で、認識の拡大に現実が追いつかない。その格差を埋める手段が「妄想」だ。かつてのヤンキー文化にしても、オタクの邪気眼にしても、若者の突飛な言動はある種の「妄想」ゲームなのだろう。

滝本竜彦がどこまでも私小説的に書いていたのと比べて、田中ロミオはあくまで計算で書いている。ゆえに描写は濃厚でも、作品の中に飲み込まれかねない切実感は薄い。『人類は衰退しました』でも見られた、シニカルな視点は健在だ。現役の中高生よりも、かつてオタクだった大人が読んだ方が「効く」のではないか。

「学級政治」もリアルで、ここまで「空気を読む」ことに長けた主人公もなかなか珍しい。空気を読めないのはただの痛いやつ。でも空気に縛られていても、生きるのが苦しい。なら、どうするの? 今どうしてるの? そんな問いかけに、主人公のふたりは答えを出す。願わくば、適度な痛みと優しさのある生き方を。

今回はあえて、できる限り内容にふれず、書いてみた。話題作ゆえ、読むならお早めに。


関連
個の無い世界でまったりと 『人類は衰退しました』
SFしなくなったSF 『人類は衰退しました 2』
妖精さんは衰退しました 『人類は衰退しました 3』


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