Latest Entries
化物語を楽しんだ人へ 『きみとぼくが壊した世界』
きみとぼくが壊した世界(西尾維新)

西尾維新の最近の作品は微妙だけど、『化物語』だけはガチ。
そんな読者にお勧めしたいのがこの『きみぼく』シリーズ最新刊だ。
えー、嘘つけ、この戯言野郎め!
という声も聞こえてきそうだ。無理もない。なにせ、この『きみぼく』シリーズ、1巻、2巻ともに読後感が非常によろしくない。バッドエンド小説が裏テーマなのかと疑うほど。2巻に至っては、主人公がただの悪魔っ子に思える。共感も何もかも置き去りにしていた。
しかし3巻はガラッと変わった。
保健室登校にもかかわらず成績トップの情報通・病院坂黒猫と、狂えるシスコン・櫃内様刻(ひつうちさまとき)がイギリスのロンドンへ海外旅行に出かける。シチュエーションも展開もまさに「番外編」。1巻ではあまり描かれなかった、病院坂黒猫と櫃内様刻の楽しげな日常会話が次から次へと飛び出してくる。
初めて書かれる黒猫視点では、彼女の可愛いげのある内心が明らかになる。またシャーロック・ホームズ博物館での暴走っぷりも微笑ましい。様刻くんも、シンプルという個性が際だち、よりユニークな人物に思えた。1巻はノベルゲームのバッドエンド主人公に見えたものだが、変われば変わるもの。
読者が西尾作品に最も求めている、軽妙にして愉快な会話が存分にあり、本シリーズの暗く、重いイメージとは異なる小説に仕上がっている。『化物語』級というと、誇張しすぎだが、1巻、2巻で読むのをやめてしまった方はぜひもう一度読んでみてほしい。求めていたモノがきっと得られるはずだ。信じる者は報われる!
またこの巻の特徴として、作品全体にある仕掛けが施されており、不思議な感覚で楽しめる。
ありきたりな表現で恐縮だが、「現実と虚構の揺らぎ」をクラクラ感じた。アイデア自体は古典的でも、西尾維新流の言葉遊びと戯れ言文体のおかげで、かる~くゆる~い遊戯的な感覚が面白かった。戯れ言性の高い西尾文体と相性が良い手法だと思う。
惜しむらくはオチのつけ方。
後半になると予想がついてしまい、尻つぼみ感も拭えないのは、西尾維新の最大の欠点が発露している。同じパターンを最後まで続けてしまうか、最後の畳み方が強引な傾向があり、『刀語』を始め、「中盤から終盤一歩手前が一番面白く、最後はイマイチ」という終わり方が多い。
思えば、処女作『戯れ言』シリーズでさえ、終わり方は強引だったし、「終わりが良かった」と感じる作品は1つも無い気がする。若い読者にカルト的な人気を誇りつつも、一方で当たり外れが激しく、他人に勧めにくいのはそのためだ。
西尾維新は奇抜なキャラクター同士の掛け合いについては天才的だが、小説トータルで見るとアンバランスな感があり、いちファンとしては、そこを突き抜けてほしい。まあそれ故の「戯れ言作家」であり、無いものねだりをしてるのかもしれないが。
関連
4年前に生まれたヤンデレ小説が復活! 『きみとぼくの壊れた世界』
最低で最悪な読後感をあなたに 『不気味で素朴な囲われた世界』

西尾維新の最近の作品は微妙だけど、『化物語』だけはガチ。
そんな読者にお勧めしたいのがこの『きみぼく』シリーズ最新刊だ。
えー、嘘つけ、この戯言野郎め!
という声も聞こえてきそうだ。無理もない。なにせ、この『きみぼく』シリーズ、1巻、2巻ともに読後感が非常によろしくない。バッドエンド小説が裏テーマなのかと疑うほど。2巻に至っては、主人公がただの悪魔っ子に思える。共感も何もかも置き去りにしていた。
しかし3巻はガラッと変わった。
保健室登校にもかかわらず成績トップの情報通・病院坂黒猫と、狂えるシスコン・櫃内様刻(ひつうちさまとき)がイギリスのロンドンへ海外旅行に出かける。シチュエーションも展開もまさに「番外編」。1巻ではあまり描かれなかった、病院坂黒猫と櫃内様刻の楽しげな日常会話が次から次へと飛び出してくる。
初めて書かれる黒猫視点では、彼女の可愛いげのある内心が明らかになる。またシャーロック・ホームズ博物館での暴走っぷりも微笑ましい。様刻くんも、シンプルという個性が際だち、よりユニークな人物に思えた。1巻はノベルゲームのバッドエンド主人公に見えたものだが、変われば変わるもの。
読者が西尾作品に最も求めている、軽妙にして愉快な会話が存分にあり、本シリーズの暗く、重いイメージとは異なる小説に仕上がっている。『化物語』級というと、誇張しすぎだが、1巻、2巻で読むのをやめてしまった方はぜひもう一度読んでみてほしい。求めていたモノがきっと得られるはずだ。信じる者は報われる!
またこの巻の特徴として、作品全体にある仕掛けが施されており、不思議な感覚で楽しめる。
ありきたりな表現で恐縮だが、「現実と虚構の揺らぎ」をクラクラ感じた。アイデア自体は古典的でも、西尾維新流の言葉遊びと戯れ言文体のおかげで、かる~くゆる~い遊戯的な感覚が面白かった。戯れ言性の高い西尾文体と相性が良い手法だと思う。
惜しむらくはオチのつけ方。
後半になると予想がついてしまい、尻つぼみ感も拭えないのは、西尾維新の最大の欠点が発露している。同じパターンを最後まで続けてしまうか、最後の畳み方が強引な傾向があり、『刀語』を始め、「中盤から終盤一歩手前が一番面白く、最後はイマイチ」という終わり方が多い。
思えば、処女作『戯れ言』シリーズでさえ、終わり方は強引だったし、「終わりが良かった」と感じる作品は1つも無い気がする。若い読者にカルト的な人気を誇りつつも、一方で当たり外れが激しく、他人に勧めにくいのはそのためだ。
西尾維新は奇抜なキャラクター同士の掛け合いについては天才的だが、小説トータルで見るとアンバランスな感があり、いちファンとしては、そこを突き抜けてほしい。まあそれ故の「戯れ言作家」であり、無いものねだりをしてるのかもしれないが。
関連
4年前に生まれたヤンデレ小説が復活! 『きみとぼくの壊れた世界』
最低で最悪な読後感をあなたに 『不気味で素朴な囲われた世界』
スポンサーサイト
コメント
>774 さん
『化物語』はここ最近ではベストなので、まずはそれを読むのが一番ですね。
あの1巻や、2巻だと、切っちゃう人が多いのも無理はなく、ちょっと残念です。
『化物語』はここ最近ではベストなので、まずはそれを読むのが一番ですね。
あの1巻や、2巻だと、切っちゃう人が多いのも無理はなく、ちょっと残念です。
うろ覚えですが、シスコンの話だったような
オチも展開も最早覚えていませんが…
なんか評価の高い化物語を買ってきたのでそっちを読んでみます