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ゲームデザインの変遷を読む 『メタルギアソリッド4』

感想を書く際に、最も気をつけなければいけないゲームの1つが『MGS』シリーズです。
物語には極力ふれずに感想を書こうと思ってますが、先にどんなステージがあるかも知りたくないという人は、これ以上お読みにならないコトをオススメします。



「老い」の凄み

いち『MGS』ファンとして、いちプレイヤーとして、今はただただ「ありがとう」という気持ちでいっぱい。すさまじいプレッシャーや、「PS3撤退」を含む様々なノイズに負けず、これだけの作品を仕上げてくれた開発者全員に感謝したい。

「老い」という、これまでゲームでは真面目に取り上げてこなかったテーマに真摯に取り組み、主人公のスネークを老人化した点も挑戦的。皮膚の表現は本当に秀逸で、大げさではなく、キャラクターの「人生」を感じさせるレベル。後半でのスネークの顔面の傷も、どんな困難にぶつかっても戦い続ける漢の「凄み」が漂っている。

ボリュームも過去最大で、8時間以上といわれるデモシーンはもちろん、ゲームプレイの時間もかなり長く、シリーズ最長だと思う。正直、このクオリティなら『3』より短くても仕方ないと思っていただけに、全5章におよぶ膨大なボリュームには圧倒された。

章と章の間でインストールが入る件も、不快感は特に無い。濃厚なデモシーンに浸った後、それから少しの休憩をはさんで、再びゲーム内へと潜っていく、ちょうどよい「息継ぎ」の時間になっている。煙草をくゆらせるスネークを見ながら、こちらもミネラルウォーターを口にふくんで、ホッと一息つけた。


1作目から完成度の高かった『MGS』シリーズ

ひとつひとつの要素に言及していると、いくら書いても書き足りないので、ゲームデザインについて簡単な感想を書くことにしたい。(詳細なプレイレポートはNao_uの日記さんが連日取り上げています。やや辛口ではあるものの、シリーズを全部やってる人なりの愛情がうかがえて、好感がもてます。ただしネタバレ上等なので、ご注意を。)

純ゲームとして見たとき、『MGS1』が最も完成度が高いのは確かだ。
敵の視界から逃れて進むというゲーム性がはっきりプレイヤーに提示され、ほぼ順番にステージを進んでいく構成だったため、わかりやすくプレイできた。

敵が強いため、隠れて進む必要があり、力押しは難しい。敵の動きをつかむために、レーダーと主観&張り付きカメラを駆使するバランスも程よく、見つかった時にレーダーにノイズが走るといった制限もあり、緊張感もたっぷり感じられた。しかし『MGS』シリーズは、『1』の完成度に安住することなく、チャレンジを続けていく。


1発ネタ好きな小島監督

『MGS』シリーズの特異な点は、プレイヤーにやらせたい遊びが毎回大きく異なっている事で、任天堂やカプコンの「定番性」重視の作りと比べるとかなり異様である。定番性というのは、たとえば、3Dゼルダでは剣と盾をそろえないと最初の村から出られないとか、まずは村の中でルピー探しをしてこいとか、そのダンジョンで手に入ったアイテムでボスにダメージを与える、ということ。

任天堂はストーリー重視ではないからそれで構わないし、「お約束」性そのものを売りにしてる部分がある。またプレイヤー自身が「経験」を積んでいくアクションゲームでは、「定番性」はプレイヤーの習熟をうながす点で重要な構成法になる。同じ要素を何度か提示することで、プレイヤーは上手くなり、自分の熟達を実感できる。

いっぽう『MGS』は小島監督の茶目っけもあって、定番性の破壊、むしろ「意外性」「裏切り」を良しとしている。「1つのネタに対して、基本、実戦、応用がある」といった任天堂ライクなゲーム構成を取っておらず、使い捨ての1発ネタがこれほど多いゲームも珍しい。1回プレイしただけでは、使わないアイテムのなんと多いことか。

勘違いしてほしくないが、良し悪しを論じるつもりはない。それぞれの個性にすぎないからだ。ただし『MGS』シリーズは伝統的に、開発者が用意したギミックを、期待ほど、プレイヤーが使わない傾向はあるように思う。実際、『インテグラル』『サブスタンス』『サブシステンス』では、バーチャルミッションの追加などで、アクションゲーム的な使い所を補っている。

(ギミックの使い所をしつこく用意する任天堂ライクな作りと、最悪使われなくてもよいというMGS的な作りは対照的。その辺りは、Nao_uさんのブログのコメント欄の議論にも表れている)


ゲームデザインの変遷

『2』は初代に比べてプレイヤーキャラのアクション性が増し、「麻酔銃」の導入により、潜入の意味も変わった。敵の視界を回避することから、敵をこっそり麻酔銃で撃つゲームになった。PS2になって、敵兵士の出現数が増えたこともあり、やや攻撃的な方向へゲーム性を変化させるのは必然だった。

舞台が屋外のジャングルになった『3』では、ゲーム性の変化は大きい。
レーダーの機能が低下したことに加えて、地形が複雑になったため、3Dのメイン画面を見て判断する比重がぐっと増した。グラフィックがあがった分、制作者がメインの画面をよく見てほしいと考えるのは自然で、「レーダーばかり見ているゲーム」からの脱却は、『3』から少しずつ始まっていた。

また『3』は制作者サイドの「迷い」も、あちこちに散見された。サバイバルビュワーやCQCなど、増えた要素の消化も今ひとつだった。『3』の時代性を考えると、やはり一番悩ましかったのは『GTA』の存在だろう。『GTA』の「自由度の高さ」に対する幻想が最もふくらんだ時期だ。行動の選択肢を増やすのは良いことで、箱庭世界での自由度を高めたゲームこそが良いゲームだという風潮が非常に強かった。

しかし、色々と要素は増えたものの、結局『3』は従来型の『MGS』シリーズのほぼ1本道なステージ構成を踏襲した。その結論は妥当だと思う。『MGS』シリーズはストーリー、それも短時間に濃縮されたディープな映像体験に重きをおいているゲームであり、その軸線をぶらしても仕方ない。その一方、『MGS3 サブシステンス』では、増えた行動の自由度をオンラインゲームにまとめ上げてみせた。

『4』はよりTPSっぽくなり、レーダーも機能が極端に低下し、メインの画面を見て判断する比重がさらに増した。また「麻酔銃」でチマチマ敵兵士を眠らせるよりも、力押しで突破しやすくなっているうえ、ボス戦をふくめていつでもどこでも武器を買えるようになっている。弾丸も買えるため、セコセコと拾い集めたり、節約する必要性はほとんど無い。

そういう意味では、「潜入性」は大幅に薄れており、あくまで「蛇」としてのスタイルを貫くか、力押しで進むかはプレイヤーの自由にゆだねられている。その「ゆるさ」をどう捉えるかは人それぞれだろうが、これまで見てきたように、元々『MGS』シリーズはゆるい作りではあった。

こなれていないのはカメラで、TPSっぽいカメラになった事で、従来よりもずっと右スティックを回す羽目になった。それはまだ良いが、オートエイムが頭悪すぎで、本当に辟易した。近くの敵を狙ってくれなかったり、はるか上の塔の敵を狙ったり、思い通りに行かないことが多く、敵に撃たれてるのにそちらを向けないストレスは結構たまった。

TPSっぽいカメラなので、視界そのものが大きく動き、混乱を助長するのだ。オートエイムを使うなというチューニングなら、照準はもっとゆるくしてほしい(『MGS』シリーズは割とシビア)。

まあしかし、良い解決法がなかなか無いのはわかる。『MGS』のように複数の敵に取り囲まれやすく、高低差のある所からも飛び道具で撃たれるゲームでは、プレイヤーの意志通りに動くオートエイムは難しい(例えば、『ゼルダ』のZ注目は、戦闘が近接主体だから問題が起きない)。従来、俯瞰型のカメラだったのは、それなりの理由があったのだ。

カメラ操作には不満が残るものの、カメラの変化は没入感の増加に大きく寄与している。全体的にみれば、正解だろう。グラフィックの向上は、ゲーム性とイコールではないが、完全に独立した概念でもない。両方の組み合わせで、総合的な体験が決まるからだ。近年、ゲームデザインのバランスを取るのが難しくなっている要因でもある。

そういう意味では、じつは海外のゲームデザイナーの方が、ザックリ割り切っている傾向が強いのだが、その辺りはまた他の記事で述べたい。(『God Of War』の自由度の無さや、2週目以降遊びたくなる要素の少なさ。グラフィックが進歩しても、機能を落とさない『GTA4』のレーダーマップなど)

次回作からは小島監督は離れて、若いスタッフがあたらしい『メタルギア』を作るそうだが、どのようにリデザインしていくか、興味深く見守りたい。やはりさらにTPS性を増していくのだろうか? 今後もファンで居続けたいと思うし、その期待に応えてくれると信じている。事実、『4』は信じて良かったと思える内容だった。それは間違いない。


コメント

オートエイムの記事について気になったので、初コメですが少し感想を。

今回のMGSは今までの「主観視点&オートエイム」での射撃と違い、TPS視点での肩越し射撃が用意されてますので、オートエイムの不便さは、要するに「新しく用意したこれを使え」という感じなのでしょう。
発売前の実機デモでもこの肩越し射撃をメインに使ってましたし、MGSスタッフはこの射撃モードを前提に作っていたの感じがします。
オートエイムが使えすぎるとMGOの時にオートエイム使いばかりになってしまい、いわゆる「ゲームの腕前をあげる楽しみ」が少なくなってしまうというのも理由の一つにありそうです。
小島監督は「FPSは好きじゃない」ときっぱりと宣言しているので、主観視点でのガンサイトが見にくいというのもそのせいなんじゃないでしょうか。

ただ、MGOをプレイされていればわかると思うのですが、この三種の射撃方法は臨機応変に使い分けると真価が見えてきますよ。
わたしはロックオン範囲外なら肩越し、ロックオン範囲内ならオートエイム、あまりにも敵が遠い時は主観視点と切り替えながら戦っています。
オートエイムはヘッドショットを頻繁に狙ってくる相手や多対一の状況ではかなり分が悪いのですが、バースト射撃で銃の反動をおさえれば、中距離の敵でもほぼ必中するという強みがあるので、うまく使いこなせば(そして相手の腕が低ければ)二対一でも楽に突破できます。
特に至近距離での遭遇戦はとっさのエイムが間に合わないことが多いのですが、オートエイムだと即座に撃てる反応性の高さがいいです。

まあ結局何が言いたいのかというと、複数の射撃方法があるので、プレイするなら実直に一つにしぼらないで、複数併用した方がいいということです。
FPSなら主観視点が全てなので、いわゆる「やりやすさ」のすべてをそこに集めないといけませんが、MGSは視点が三種類もあるので、「プレイヤーは自分のやりやすいように任意に使い分けろ」ということなんだと思います。
これは単に射撃方法ならず、MGSのゲームプレイ全てにおいていえることなんでしょうね。
紹介された記事も読んでみましたが、やはりMGSは「良くも悪くもプレイヤーのやり方次第で評価がずいぶんと変わるゲーム」と感じました。

>とこ さん
おおっ、いっぽうでこういう熱い書き込みがくるのも、『MGS』らしさだと思いました。
『MGO』は全然遊べていないので、時間を作らないと・・・・休みがほしいです。最近、土日のほうが働いている時間が長いので・・・・。ブログ書くのが息抜きですなー。

> これは単に射撃方法ならず、MGSのゲームプレイ全てにおいていえることなんでしょうね。

おっしゃるとおり、プレイスタイルの自由度(ゆるさ)が評価の不安定さの要因なんでしょうね。国内よりも、海外で評価が高いのも、そのせいかもしれませんね。

でも面白いのは、日本におけるブランド感は徐々に上がってきている印象があって、PS陣営の有力タイトル(バイオハザード等)がマルチ化したりで、ブランド感をうしなっていった結果、相対的に持ち上がってきたのかな、と。

まさに「コケの一念」なんとやらです。
もともと小島秀夫氏は、マイナーハードをずっと渡り歩いていた人で、苦労人ですから、辛抱強いなーと、あらためて思いました。『MGS4』については、ホントにその一語ですね。

メイキングのBDも観ましたけど、素敵でしたね。
どこも修羅場は同じだな、とも思いました。共感に満ちたビデオでした。

射撃に関して言えば肩越しor主観視点が前提として作られてるのはまず間違いないでしょう。
なにしろオートエイムじゃHSすらロクに出来ませんからね。これは2の頃から同じです。
あと潜入性が薄れているという指摘ですが、イージーならともかくノーマル、ハードとなるとごり押しで突破は中々苦労すると思いますよ。
「操作になれたらちゃんと隠れて進んでね」という天の声が聞こえてくるようです。
でも高難易度でもどうにかすればゴリ押しで突破出来るので(隠れた方がずっと簡単だと思いますが)
TPSとして遊んでも中々やり応えがあるんですよね。非常に素晴らしいレベルデザインだと思います。

>ファンの一人 さん
結局は、理想的なプレイについてのガイダンスが微妙な位置づけである、という事だと思います。その点は本文中でも指摘しているとおりです。

ごり押しについては、ノーマル以降でも、ふつうにできたので、潜入の方が簡単という印象はまったくありません。また、天の声が聞こえるようなガイダンスも無いです。

親切なガイダンスは無いけれども、もともとMGSシリーズはそういう性質である、というのが僕の感想です。なので、『MGS4』になったからといって、批判しようとは思わないけれども、『MGS4』だから持ち上げようとも思わない。いつも通りに、プレイスタイルの自由度を重視しているなー、と受け止めています。

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