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戻ってきた。 『神様のメモ帳 3』

神様のメモ帳 3杉井光
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もう出ないと諦めていた小説が戻ってきた。

彩夏が戻ってきた。
1巻の事件の後遺症で、主人公の藤島鳴海との思い出をみんな忘れて。楽しかった思い出を犠牲にしてでも、あの残酷な現実をきれいに失くしたのは、正しく、それが必要だったからだろう。学校の屋上から飛び降りた彼女が最後に何を考えていたのかはわからない。しかし昏睡状態からめざめて戻ってきた。いろんなものを失くしたまま、それでも戻ってきたのだ。

ぎこちなくも、鳴海と彩夏が園芸部の活動を再開する。お互いに遠慮しながら、少しずつ、恐る恐る近づいていく。その矢先、生徒会長に呼び出され、宣告される。園芸部は廃部にするから、と。

廃部の理由を探っていくうちに、設立時のうさんくさい経緯が浮かび上がる。4年前の生徒死亡事件。事件の影響による園芸委員会の廃止と、それに代わる園芸部の設立。温室にたまっていた不良生徒のいじめによるものとされた死亡事件の真相は? 強引な方法で園芸部がつくられた理由は?

鳴海はニート探偵アリスとともに、事件の調査を始める。
だが死亡事件の容疑者は、仲間の1人、テツ先輩だった。事件について語るのを拒否するテツ先輩。ヒロさんと少佐は先輩の味方につき、ニート探偵団は二つに割れた。鳴海とアリスは、それでも捜査を続ける。

失ったものを取り戻すため?
それとも、もう一度始めるため?
わからない。けど、どっちでもいいのだろう。
「わ、わあ……」
 彩夏が漏らした声に、アリスの髪がおびえた野良猫みたいにぴくっと震える。
「わあ! わあ!」
 アリスに飛び退くひますら与えず、彩夏はそのちっちゃな身体を抱きすくめてさらさらの黒髪に顔をうずめた。アリスは彩夏の腕の中でばたばた暴れながらわめく。
「見たかいマスター、はじめて逢ったときと寸分違わず同じ反応だよ、あきれかえった! 記憶を失くしてもこれだ、七千回生まれ変わった後でも同じことをするにちがいないよ、彩夏、ぎゅうぎゅう首をしめないでくれたまえ! ぼくは抱き枕じゃないぞ!」
 だとしたら。そういう、ことなのか。
 失くしてしまったことも、損なわれてしまったことも、傷ついたものも、みんなそのままで、だけど僕らはこうして今たしかにそばにいて、だからあのときのように、また近づいていく。
 たったそれだけのこと。

1巻のあの陰鬱な現実から、3巻の爽やかな終わりまで。
暗黒作家の気があった作者が、これだけ明るい物語をつむぐようになったのは歓迎したい。『さよならピアノソナタ』の執筆も良かったのかもしれない。贅沢をいえば、明暗の陰影をさらにクールに使い分け、『池袋ウエストゲートパーク』の石田衣良に迫ってほしくもある。


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