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自由と平等の人道的処刑機械、その名はギロチン 『死刑執行人サンソン』

死刑執行人サンソン安達 正勝

帯に書かれた、荒木飛呂彦のコメントがまず目を引く。『スティール・ポール・ラン』のジャイロ・ツェペリのモデルが、この死刑執行人サンソンなのだという。なるほど。おかげで荒木飛呂彦の絵を思い浮かべながら、この本を楽しむことができた。

事故に遭った時に助けられたのをきっかけに、処刑人一族の娘に恋してしまった初代サンソン。そうとは知らずに好きになり、真実を知って苦悩しつつも、処刑人を継ぐことを決意した彼は、紳士たらんとしたジョナサン・ジョースターを思わせる。

国王の命によって、正義のために死刑囚を処刑するのが死刑執行人である。しかしそういう職業が差別の対象になるのは、洋の東西を問わないようで、サンソン家も役目の重要性とは不釣り合いな扱いを受け続ける。

そして四代目のシャルル - アンリ・サンソンこそ、この本の主人公である。
フランス革命を経て、死刑のあり方や、死刑執行人の扱いが大きく変わった時代であり、歴史上の有名人とも関わっていく。その筆頭は、彼が処刑しなければならなかったフランス国王ルイ十六世。国民のことを考える善良な人物であり、サンソンも大いに敬愛していたにも関わらず、ギロチン処刑にかけるほかなかった。他にも、マリー・アントワネット、フランス皇帝ナポレオンなど、日本でも知名度の高い人物が活躍している。

ちょうどフランスでギロチンが発明された時代であり、現代人の感覚からすれば、ギロチンが自由と平等の思想から誕生したというエピソード1つで、驚かざるを得ない。どういう時代背景があったのか、どんなロジックで人類史上もっとも有名な処刑機械が生み出されたのか。その詳細はじっさいに本書を読んでほしい。
≪自由と平等≫の理想から導き出された人道的処刑機械、ギロチンは、ともかくもこうしてスタートを切った。ギロチンの誕生は、死刑制度における旧体制の破壊であり、たしかに一つの進歩を象徴するものではあった。ギロチンの産みの親、ギヨタンとルイ博士はともに医者であり、ギロチンの最初の実験にはほかに二人の医者も立ち会っていた。もっとも苦痛少なくして人を死に至らしめるギロチンは、医学的、科学的にも完璧なものであったのだろう。しかし、あまりにも簡単に、迅速に、人を処刑できてしまうところに、大きな問題がひそんでいたのでもあった。

ギロチンの誕生はショッキングな出来事であり、フランス革命後の恐怖政治とも密接につながるものだが、本書の最大のハイライトは何と言っても、ルイ十六世と死刑執行人サンソンの二人だ。

職業的に差別され、市民権を認められていなかった死刑執行人と、国家の頂点に位置する国王。この実話の最初の時点で、その差は歴然。天と地のように隔たったものだった。しかし革命をへるうちに、両者の立場ははげしく変化する。

死刑執行人は法律を遵守するために死刑執行をおこなう役目を負っているのであり、不当に忌避されるのはおかしい。その至極もっともな道理が正しく受け入れられ、死刑執行人にも市民権を与えられる。一方、フランス国王はしだいに立場を失っていく。国民から敬愛され、革命によって貴族体制が打ち倒された後も、国王の権利が認められていた。しかし情勢の変化にともない、国民の国王への批判は高まり、幽閉され、犯罪者として激しく弾劾され、ついには死刑判決が下される。

天と地が逆転して交差する、その交差点が1793年1月21日、フランス国王ルイ十六世改めルイ・カペーの死刑執行である。二人の男はともに時代に翻弄されてきた。激動の時代の最大の象徴といってもいいだろう。

敬愛する国王を自ら処刑しなければならなかったサンソンは心にダメージを負う。彼が処刑の晩にひそかに行ったミサの様子は、のちにバルザックの短編小説『贖罪のミサ』になっている。当時、非宣誓派の僧侶と接触することは反革命的犯罪とされたが、そのリスクを負っても、彼は国王のためのミサを続ける。

シャルル - アンリ・サンソンは亡くなるまでの間、死刑制度廃止を願い続けた。彼の孫、アンリ - クレマンは『サンソン家回想録』の中で、死刑制度廃止を熱心に訴えている。それは死刑執行人の一族から、最大の重荷を取り除くことに他ならない。自分達の家業を廃止してほしいと願うのは、矛盾しているように思うかもしれないが、本書を読めば、彼らの数奇な運命と切なる願いがわかるはずだ。

フランスで死刑制度が廃止されたのは1981年。
シャルル - アンリ・サンソンの没後、175年経った時である。


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