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2つの世界の溝を埋める比較文化論 『大人が知らない携帯サイトの世界』

大人が知らない携帯サイトの世界佐野 正弘

携帯電話のネット文化とPCのネット文化には大きな隔たりがある。
中心ユーザーの行動の仕方も年代も異なっているし、時として文化衝突を起こすこともある。現在はまだお互いに「鎖国」していられるし、ガイジン扱いで笑い捨てることもできるが、はたして今後5年、10年経ったとき、そうした態度を取り続けられるのだろうか?

可能だと思う人はここで読むのをやめて、「戻る」ボタンを押した方がいい。これからも「ケータイ小説(笑」「スイーツ(笑」と笑い捨てればいいし、逆に「オタクきもい」と遠くで笑われたところで知ったことではないだろう。しょせん異文化なんてすべて理解できるはずも無いのだし、自由に境界線を引けばいい。

fladdict.net blog:みんながパソコンから逃げ出してる
とはいえ、ビジネスという観点でいえば、ケータイを無視し続けるのは、あまり得策ではない。少なく見積もっても、マーケットを半分にしてしまう行為だろう。かといって、10代と同じぐらいディープにケータイ世界に入っていくのも、なかなか辛いものがある。いきなり水に飛び込む前に「準備体操」ぐらいしておきたい。

この本は『ケータイ小説家になる魔法の方法』『モバゲータウンがすごい理由』と並んで、「準備体操」のための1冊である。過去に紹介した2冊との違いは、特定のサイトに限らず、ケータイ世界の文化を広く紹介していること。

また全体的に、ケータイとPCの比較文化論が多い。ケータイユーザーとPCユーザーの検索傾向の違い、「待ち画」「歌詞画」「部活画」などの●●画、2006年半ばから急速に広まったプロフ、メール主体(1対1)からSNS(1対多)への移行、学校裏サイト、……。

素晴らしいのは、事例を紹介するだけでなく、どうして人気になったのかをできる限り説明しようとしていること。ケータイ小説がどれだけ人気を集めたところで、それだけでは奇妙な文化が流行ってると感じるだけだろう。溝はまったく埋まらないし、あちら側の住人を笑い捨てて終わりになってしまう。

筆者はケータイ小説の特徴を丁寧に列挙した上で、ケータイ世代の感じる「リアリティ」についてもしっかり解説している。PCユーザーに本当にわかってもらおうという筆者の真剣さは、まぎれもなく本物。人によっては、その熱意が少し鼻に付くかもしれない程だ。実はかなり「熱い」本である。

PC側の住人にケータイ文化をわかってもらおうと本気で努力しているケータイ人がいることに、僕は新鮮な感動と脅威をおぼえた。僕の知る限り、ケータイ側の住人にPC文化を本気で伝えようとしているPC人はいないからだ。それはPC側の住人の一般的な認識をよく表している。PCがケータイの上位にあるのは自明であり、PC文化をケータイに流れていくのは自然なことで、ケータイはしょせん上位の文化の劣化コピーにすぎない、と。

典型的な年寄りと若者の構図に似ている。
現時点でいえば、それは一面の事実だ。しかし全てではない。文化とは究極的には、侵食したものが勝つ。伝達と継承こそが本質だ。文化どうしのバーバリズムにおいて、ケータイ文化は徐々に暴力的な侵食性を発揮しつつある。


関連
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ケータイ世界の皮膚感覚に迫る 『モバゲータウンがすごい理由』

コメント

少し落ち着いたので、少々コメントを。

面白そうな本ですね。
私は携帯には詳しくないので(持っているのが安い機種なので、見れないサイトもあるし(汗))、PC文化圏の人間の戯言を言わせていただくと、リンク先の、英語圏でのケータイ文化の勃興などは私の想像以上の話ですし、予測などしても無駄そうなので、現状感じていることを書きますが、結構うまくPCとケータイは住み分けているような気がします。

個人的にケータイでネットをするときに感じるのは、見通しの悪さというか、そんなことを感じます。ただ、少し思うのは、それをマイナスに感じるのはPC文化圏の人間の価値観なのかも知れないな、ということです。ケータイ文化圏の人間にはそれは居心地のいいものなのではないかということですね。

何を言いたいのかというと、よくPCは、脳の延長として例えられますが、ケータイは、身体の延長上にあるものではないかということです。まあ、常にPCの前にいる人種と、常にケータイを持ち歩いて活動している人種の生活圏は違いますから、基本的に求めるものが違うという部分はあると思います。なんというか、ケータイの場合、感覚的に(思春期に多いような)自分のあやふやな不安感を緩和するために、自分の身体感覚を可視化したり、同世代の感覚を受け取ることで、自分が今いる時空間における立ち位置を自己確認しているようにも見えます。よって、彼/彼女らにとって、ケータイのデータは彼/彼女たちが「リアル」であると感じる、つまり、等身大だと感じる情報が価値を持っているのかも知れません(というか、ここら辺は素人の私が論じても恥をかくだけのような。社会学的見地からの2ch文化の評論本だけでなく、ケータイネットコンテンツ文化の評論本があってもいいかもと思います)。したがって、彼/彼女らにとって価値があるものを、PC文化圏ではゴミ情報ととらえる可能性が高いような気がします。逆の場合もあるでしょうが・・・(その場合、例えば、米国PC文化圏で生まれたGoogleの検索エンジンの価値判断がケータイ圏の人間にとって有効なのか?という疑念もわいてきますが)

まあでも、繰り返しますが、ケータイのコンテンツ業界の実態がつかみにくいという話は聞きますが、それはそれでいいことなのかも知れません。ケータイの文化圏には、見通しがよすぎるPCのネットでは、すぐに炎上してしまいそうなリアル厨房の方々がたくさんいる訳で。オープンで容赦のないPCのネット文化圏に入る前の準備運動としてはちょうど良いかもしれないなあ、などと思います。(総務省主導で、ケータイ文化に規制が入りましたが、どうなることやら・・・)

まあでも、単にケータイ文化が表層化しにくいだけで、ケータイ市場の大きさは、私の想像以上だと思います(ですので、現在、DQN文化がオタク文化に押されているような印象を受けますが、いつどう風が吹くのかわからないような気もします)

> とはいえ、ビジネスという観点でいえば、ケータイを無視し続けるのは、あまり得策ではない。

ということは、DAKINIさんのネットビジネスもケータイを視野に入れているかもしれませんね(笑) ケータイビジネスを考えておられる方はたくさんおられるでしょうから、私はあまり書くことはないですが。ただ、一時期話題になった複合現実感の技術は、PCよりも街の中で日常的に使うものしてのケータイで使えるとうれしいと思いますね。

>bin3336 さん
> よくPCは、脳の延長として例えられますが、ケータイは、身体の延長上
> にあるものではないか
ケータイのネットの「見通しの悪さ」を肯定的かつ真正面から受け止めた、鋭いご意見だと思いました。この辺りの感覚的な部分を、制作者の側として、どう面白がっていけるかは非常に大切ですね。

> DAKINIさんのネットビジネスもケータイを視野に入れているかもしれませんね(笑)
「視野に入れている」のは確かですね。
ケータイがらみで案件として動く予定のものは、まだ無いですが(笑

ケータイはシンプルな企画が良いと感じていて、おそらくどこかから案件を受けるよりは、自前のリソースでまかなえる範囲で始めても十分かな、という気はしています。
企画的には、PCのネットサービスをPS3や360とするなら、ケータイのネットサービスは身体性という点でWiiのようなセンスかなと思ってますが、実験ベースでやった方がいいという点でもWii的ですね。

まあ考えたらすぐに試せ的なものなので、コメント欄で書くのはここまでにしておきます。

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