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コミュニケーションによって生み出される孤独 『空の境界(下)』

空の境界(下)奈須きのこ

もう何度目になるか憶えてないが、またも読了。
同人版、講談社ノベルス版、講談社文庫版をすべて購入し、それぞれ何度か読んでいるわけで、信者乙、型月厨乙といわれても仕方ない。でもいいです、なんと言われたって。だって面白いんだから。

両儀式と黒桐幹也の物語の最終章が幕を開ける。
両儀とは、陰と陽を1つの体の中に内包すること。すなわち単独で最小の世界を構成することである。その結晶が式だった。女性としての人格である式と殺人を求める男性の人格である織。1つの身体に存在する2つの心は完全に閉じていた。

しかし幹也によって完全な世界は壊されてしまった。式と織という異常な在り方で、彼女たちが幹也といっしょに普通に生活していく事は不可能だ。式は両義の家に伝わる殺人の技を受け継ぎ、織は殺人への欲求を抱き続けている。そのままでは式と織は破綻する。かといって彼女たちが幹也を殺してしまえば、平和な夢を見る事さえかなわなくなる。

決定的な矛盾に突き当たった時、事故は起き、式は昏睡状態に陥った。3年して式が目覚めると、彼女の中に織という人格は居なくなっていた。式は彼を失った空洞を抱えて生きていかなければならない。

『空の境界』が奈須きのこの第1作にして、最もエッジの尖った作品である理由がここにある。美少女ゲーム『月姫』はプレイヤー=少女を「救う」少年という構造を取るが、この作品において「救う」という構図は成り立たない。幹也は「式と織」という1つの世界を破壊した侵略者に他ならない。

『月姫』のアルクェイドと『空の境界』の式は被るし、2人とも作られた兵器のような存在で、それ以外の生き方を知らない点は共通している。けれどもアルクェイドがより無垢性を強調されているのに対して、式はより自覚的に「式と織」という世界に充足していた。何より、織という存在を犠牲にしている点が最も大きい。

そこには、コミュニケーションとは他人の内に閉じようとする心を破壊するものだという、作者の冷徹な眼差しがあるように感じてならない。少なくとも、美少女ゲームにおいて無前提に成立している「コミュニケーション=善」とする楽観主義は、いくぶん成りを潜めている。

かといって、1人の人間が個の世界で完結する/閉鎖しているのを良しとしているわけでもない。いや正確にいえば、そんな事は不可能だと諦めているのかもしれない。1人の人間に2つの心を内包させる「両儀」という特殊なあり方でなければ、そもそも成り立たない。

しかも酷い事にこの世界では存在を許容されないのだ。代々血を重ねて、ようやっと生みだした「式と織」でさえ、たった1人の普通の高校生があっさりと破壊してしまった。

だからこそ誰もが孤独を抱えて、それを埋めようと必死に生きているのだろう。酷い話だ。1人1人が勝手に閉じていれば、誰も孤独など感じるはずもないというのに。コミュニケーションするから孤独を認識してしまうのだし、空白を埋めようともがき始めるのだ。

ああ、なんて救いがたい。
 誰に語るのでもなく、囁きが漏れた。
「あたりまえのように生きて、あたりまえのように死ぬのね」

 ああ、それは――

「なんて、孤独――」


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コメント

自分もタイプムーンネタが出る度に反応してしまう型月信者ですw
まあそれはいいとして、僕も先日もう一度読み返してみたんですが
難解で複雑なテーマを扱ってるからか1・2回読んだだけじゃ
物語の全てを理解できない所もあるんですが
個人的には奈須きのこ作品のなかでもかなり好みの作品
劇場版はまだ見てないんですが、DVDが出たら見る予定です。

ゲームの新作を凄く楽しみにしてるんですが一体いつでるのやら・・

>Ni.O さん
トガってる部分がある作品なので、僕も大好きです。

> ゲームの新作
そろそろ発表ぐらいして欲しいですよね・・・・。

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