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美しく赤く、三代の女たちの物語 『赤朽葉家の伝説』

赤朽葉家の伝説桜庭一樹
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本の紹介エントリーの50本目。
美しく、赤い世界に生きた三代の女たちの物語です。

山の中に住み、たまに人里に下りてくる”辺境の人”に置き捨てられた一人の幼児が、村の若夫婦に拾われます。彼女の名は万葉。ただ一人、里に残された万葉は、未来の光景を見る”千里眼”を生まれ持っていました。貧乏な家庭に育った、男っ気のない大女でしたが、やがて、たたら場をもとに製鉄業を起こした赤朽葉家に請われて、嫁入りします。いまだ迷信と神話が支配する時代だからでしょうか、彼女の千里眼がこの旧家の将来の危機を救うことになるのです。(第一部 最後の神話の時代)

”千里眼奥様”と呼ばれるようになった万葉は三人の子どもを生みます。長女の毛鞠は猛々しい女であり、今で言うスケバンになり、”製鉄天使”を率いて、中国地方の統一に動き出します。神話の時代はとうの昔に終わっていても、伝説が生きていた時代です。少年少女の青春において、暴力が派手に花を飾った最後の時代でもありました。彼女は若い時代を思うがままに過ごし、波乱万丈に生き果てます。(第二部 巨と虚の時代)

そして現代を生きる瞳子は母や祖母と比べると、驚くほど平凡に生きています。神話も終わり、伝説もない。程ほどの恋をして、現在はニート。祖母の万葉が残した謎を追いかけて、赤朽葉家の歴史をもう一度たどり直します。(第三部 殺人者)
 万葉は、それなら、仕方ない、と思った。自分を抱き続けているのは男ではなく、家そのものの力であるようにも感じられた。この騒ぎのなにがよいのかはわからず、痛みと不安は消えぬままだったが、しかし、いまの自分はこのおおきな赤い家に包まれている、ここは山の奥深くであると思うと、次第に、不思議と心が落ち着いた。(祖母、万葉)

「言わせておけばいいさ。おじさん、わたしたちがあの子を好きだったら、それでいい。人の噂は七十五日だ。だけど、好きは永遠なのサ」(母、毛鞠)

 ようやくたどりついた、現代。語り手であるわたし、赤朽葉瞳子自身には、語るべき新しい物語はなにもない。ほんとうに、なにひとつ、ない。
 わたしは万葉の、不肖の孫娘なのである。あぁもう。死んでお詫びしたいところだが、でも生きていたいです。(わたし、瞳子)
思春期の少女、特に閉塞状態にある少女の友情を描くのが巧みな桜庭一樹の最高傑作。そう呼ぶにふさわしい、重厚であざやかで美しい小説です。この本を読むと、桜庭一樹という一人の作家が今、小説家として脂が乗り切っていることがはっきりわかります。現在の彼女なら、最高傑作を越える最高傑作を、次々と生み出せるんじゃないか。そんな贅沢な錯覚をしてしまいかねないほどです。

それにしても『GOSICK』の作者と同一人物とはちょっと思えません(ライトノベルは書き続けるらしいので、ヴィクトリカファンは安心して!)。

この小説は思春期の少女にスポットを当てていて、戦後から平成に至るまで、若者の青春のあり方が変わっていく様子を描写しています。こんなにも変わるのだなあとも思うし、全然変わらないなあと感じる部分もあります。

昭和生まれのボクにとって一番衝撃だったのは、もはや昭和はファンタジーの領分になりつつあるということです(『ひぐらしのなく頃に』でもそれは感じたんですけどね。昭和50年代はまだ伝奇的リアリティが生き残っている時代なんだ、という)。

ボクは70年代半ばに生まれたので、毛鞠と瞳子の間の世代です。毛鞠の青春時代、ヤンキーやスケバンの時代の残り香を嗅いでいますし、バブル期の狂乱騒ぎも知っています。また瞳子の抱える閉塞感や、ニート世代の英雄的リアリティの徹底的な欠如も肌でわかります。万葉の時代はボクにとってはやはり神話として、受け止める以外ありません。

老人から中年、若者まで、読者の年齢におうじて共感できる世代が見つかると思います。自分が生きたかつての青春が、あの匂いが、この小説のどこかにあるはずです。鮮やかにあの時代が蘇ってきます。

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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:桜庭一樹  赤朽葉家の伝説  

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