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26ページの人生 『眠り姫』

眠り姫貴子潤一郎

3年前の小説を紹介しよう。
富士見ファンタジア長編小説大賞を受賞した貴子潤一郎の初短編集『眠り姫』。

濃縮小説の手法で書かれた表題作の『眠り姫』を筆頭に、様々なジャンルの良質な短編小説がぎっしり詰まっている。ホラー的な味わいのある『汝、信心深き者なれば』、青春時代のちょっとしたイタズラ心と恋をつづった『さよなら、アーカイブ』、人類文明が襲ってきた水に呑みこまれた後の世界を描いたSF『水たちがあばれる』、連作短編のハードボイルド『探偵真木』3作品。

ジャンルもテーマも主人公も異なる小説をこれだけ並べながら、どれも完成度は高い。さすがは大賞受賞作家、文章力は高く、技術も巧み。しかし富士見ファンタジアには不思議なジンクスがあって、大賞作家は何故か売れない。それはこの人も例外ではないのだけど、小説が巧くても売れないとは、ライトノベルはつくづく厳しい世界だと思う。

売れた作品は良い作品だが、良い作品が売れるとは限らない。しかし良い作品を掘り起こして薦めるのは書評をかく喜びである。とりわけ表題作の『眠り姫』はぜひ読んでほしい。

この作品、テクニックの面でも目を引く。SF作家J・G・バラードが発明した「濃縮小説(コンデンスド・ノベル)」という手法で書かれ、重要な場面を切り取って描写することで、長い物語を圧縮して見せている。この手法、作者があとがきで語っているとおり、すさまじいペースでエピソードを消費する。

総量はわずか26ページだが、13節で構成されており、高密度にエピソードが詰め込まれている。普通の短編と比べても、倍近い密度。『眠り姫』は、作者の受賞長編『12月のベロニカ』と同じテーマで書かれており、長編1冊が書けるアイデアを26ページに詰め込んでいるわけだ。

短い小説にふさわしく、内容を1文でまとめよう。
授業中によく眠ってしまうため、クラスメイトから「眠り姫」と呼ばれるようになった女の子・麻美と、恋人の修司の「人生」を書きつづったもの。たった26ページに2人の「人生」が濃縮されている。普通のラブストーリーがその一番美しい時期のみを描くのに対し、人生の終章まで描くところに残酷さと美しさがある。

このウェルメイドな物語には1冊分の値打ちがあるが、これで7分の1冊なのだ。他の短編もみな良く出来ていて、恐ろしくお買い得である。良質な短編小説は1冊で、数冊の小説を読んだ気にさせてくれるが、この本も例外ではない。

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コメント

初めて

初めて書き込みます。任天堂やゲーム業界に関する話題を
追ってたどり着いたこのサイトで、まさか自分の愛読書を見かけるとはw
いいですよね。貴子さんの作品は。短編も長編もどちらも好きです。
最近ご無沙汰ですが、早く最新刊が読みたいですね。

>ardwen さん

はじめまして。
煉獄のエスクードもいい所で止まってますよね(笑

続きも読みたいですが、Style-Fなんかで一般小説風な作品を書いても面白いかもしれませんよね。

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