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クールになりきれない漢のゲーム小説 『ツァラトゥストラへの階段』
ツァラトゥストラへの階段(土橋 真二郎)

あの『扉の外』の土橋真二郎が帰ってきた。
と言ってもたった2ヶ月では待たされた気はしないが。打ち切られた感のある『扉の外』に続いて、これほど早く新刊が出てくるのは、おそらく編集者もこの作家を評価している証拠だろう。やはり埋もれるには惜しい才能。
仕切り直して始まった『ツァラトゥストラへの階段』は、どうやら『扉の外』と同じ世界観のようだ。読んでいればニヤッとする箇所もあるが、『扉の外』を未読でも支障はまったく無い。(でなければ、そもそも仕切り直しの意味が無い)
主人公の福原駿介は気がつくと、見知らぬ場所に拉致され、閉じ込められていた。同じように囚われている11人。それぞれに食料と水、謎のカード、1000万円分の札束と拳銃が与えられる。謎の人形が示す、脱出の条件。それは人間同士の協力と裏切り、理性と欲望の葛藤を生むゲームだった。
集団をいかに制御するかという部分に比重が置かれていた前シリーズと異なり、主人公はゲームのいちプレイヤーで、設定としては『カイジ』に近い。欲望の渦巻くるつぼで、人間の本性がむき出しになるさまを描いている点も同じだ。欲望の上昇/集中/興奮/抑制/暴走/破滅、それら全てが存在している。
でも人間に対するスタンスの取り方は180度違う。
カイジが人間の欲望を真正面から、ケダモノを描くように描ききったのに対して、淡々とかなりクールに描いている。他人に対して距離を置いている。「無関心」「無感動」のようにも見える、冷めた視線。けど、けっして無機的なわけじゃない。感情のきらめきは随所に見られる。ただ、人間描写への熱意がきわめて抑制されている。そう、抑制だ。これを人間描写が薄いと批判するのは間違いだと思う。
数字が動き、数字に翻弄された欲望が人を破滅に突き動かしていく。その中で時折みられる人間模様が貴重に思える。主人公の福原にとっても、おそらく。それを大切にしすぎるのが彼の「甘さ」であり、敗因なのだ。彼は同じ失敗を繰り返す。まあ、しかし、そこが魅力でもあるのだが。彼がゲームを勝ち上がっていくにつれて、どう変化していくのか。それはまだわからない。今はただ、彼をしばらく見守ってみたい。
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