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クソッタレな世界で生き残れ 『オイレンシュピーゲル 3』『スプライトシュピーゲル 3』

オイレンシュピーゲル 3冲方 丁
スプライトシュピーゲル 3

 希望があるから生きるんじゃない。
 生きていることが最後の希望なんだ。
クソッタレな世の中の悪意に傷つけられた少女たちが足掻いて、足掻いて、生きている。
2つの物語のどちらから読んでもいいが、どちらも読んだ方がいい。

『オイレン』はやや大人風味。『マルドゥック・スクランブル』を好んだ読者がそのまま入っていけるほろ苦い味わい。涼月、陽炎、夕霧の3人が対等に描かれている。
クソったれな現実と戦うし、恋だってする。無垢な幸福に嫉妬しながら、それを守りたいと思う気持ち。自分よりずっと大人の男のタフな渋さにときめく気持ち。身体の奥のほうでつながる気持ち。未成熟な感情もあれば、ハッキリ言葉にできる想いもある。

とりわけ恋愛感情を強く意識しているのは陽炎。ミハエル中隊長の渋い立ち振る舞いは男でも惚れかける程だが、借りてきた猫のようにおとなしくなる陽炎も微笑ましい。同じスナイパーとして認められたい、弱い所を見せたくないという気持ちが、彼女の技量を押し上げているのも、健気でいいじゃない。
 歳の差がなんだ。
 突如として湧いた果敢にして獰猛なる心の叫び――深紅の牝ドーベルマンの気高き咆哮。
 神に誓う/天使に祈る/情熱という名の悪魔を崇める――果てしない距離感を全力で飛び越える決意。

一方、『スプライト』はライトノベル的なスパイスが濃い。
小隊長の鳳(アゲハ)がお姉さん役で、年下の乙(ツバメ)と雛(ヒビナ)を引っ張っているという関係。取り巻く現実の残酷さは『オイレン』の3人に負けず劣らずだが、2人がまだ子供なことや、鳳がやや優等生的な性格なため、『オイレン』のような斜に構えた感じは無い。また子供に頼らざるを得ない大人の側の歯がゆさも、丁寧に描かれている。主人公たちの属するMSSは、ポジションの特殊性や、空戦能力をもつ特甲児童を擁することもあり、「正義の味方」感が強い。

たとえるなら『オイレンシュピーゲル』が「A.D.POLICE」で、『スプライトシュピーゲル』が「バブルガム・クライシス」という感じだろうか。80年代末期から90年代始めにかけてのOVAブームを知らないと、ピンとこない例かもしれないが。

3巻において、物語は特甲児童の秘密に一歩も二歩も深入りしていく。なぜか消えている初出撃の記憶。はじめて人を殺したはずなのに、その時なにが起きたか、彼女たちは誰一人おぼえていない。しかも過去の記録は厳重機密として扱われ、彼女たちは誰一人アクセスできない。なんという理不尽。

過去を探ることは、知らなければよかった秘密を暴くことにつながる。その怖れを抱きながらも、不安が彼女たちを駆り立てる。死んだはずの特甲児童、レベル3と呼ばれる最強装備、送り主不明のぬいぐるみ、砂漠における戦闘の概念を一変させた怪物=軍の特甲児童の出現。謎が謎を呼び、2つの物語は深く絡み合っていく。

続く4巻は共に書き下ろし長編のようだが、今から両方を楽しみだ。今年もっとも熱い小説、ぜひ同時並行に読んでほしい。


関連
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