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苦いワナビー小説 『地を駆ける虹』

地を駆ける虹七位 連一

痛い。痛すぎる。
ライトノベルは中高生を中心に読まれる小説で、中には痛い小説も存在する。ここでいう「痛さ」は、いわゆる「痛いヤツ」というのと同じ意味。主人公が痛い。でもそれって若いヤツの特権かもしれない。中高年にもなって痛いヤツなんて、端から小説の登場人物になる資格は無いんだからさ。

この痛みは挫折を伴う。
痛みを避ける知恵をつけることを大人になる、というのなら、痛みをこらえて前へ進む力は若さなんだろう。

主人公は英雄に憧れている少年ネイブ。
『エレメント』という特殊能力はそれを可能にする。少なくとも若者に夢を見せる力がある。しかしネイブだけが仲間内でただ一人、能力を開花させていない。はっきりいって、ただのお荷物状態。
「お、おれだって、やる気ぐらい――」
「やる気がある奴はすでになにかやっている。お前はなにかしたのか」
「! おっ…………おれは……」
「努力はお前らを生かす。怠惰はお前らを死なせる。お前はどちら寄りだ?」
「…………っ」
 返す言葉が見つからなかった。ネイブは下を向いて押し黙った。
 ――くそ、おれだって、いつか、いつかはエレメントを手に入れて――
 ……いつか?
 いつかって……いつだろう?
かといって他の仲間に比べて努力家なわけでもない。無根拠に自分もやればできると思っているだけ。イヤなことは酒を飲んで紛らわす。両親を失い、二人だけで暮らす妹には、自分が活躍していると大嘘をつく。そして最大の嘘は自分についている。いつかすごい英雄になる。なれる。俺にも力があれば。きっと。

はかない希望。
そうやって自己欺瞞を続けていられれば、ある意味、幸せなのかもしれない。しかし現実がそうであるように、物語もまた残酷。現実から目を逸らそうとしても、無理やり首根っこを掴まえられて、直視させられる。

彼は自分の怠惰の清算を求められる。
あまりにひどい。怠惰は罪だが、ここまでの罪悪なのだろうか。嘘は悪だが、これほどの罰が必要なのか。

挫折。
この本の味はとても苦々しい。
結末において、甘さはみじんもなく、希望はゼロにほぼ等しい。

主人公のネイブのみっともなさ、情けなさは超一級。彼を蔑み、唾棄し、嘲笑するのはたやすい。嫌悪して本を閉じるのもまた良し。しかし生まれてから、身に余る望みを抱いた事が1度も無い人はいるだろうか? 多くの人は、その願いを叶えることなく、現実に着地する術をおぼえる。だが中には、着地できずに、墜落する人間もいる。むろん無様である。滑稽である。

それも、人。
挫折するのも、人。
無様で滑稽でみっともないのも、人。
人生には取り返しのつかない苦みも存在するのだから。

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