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人と吸血鬼の歴史的な1日 『BLACK BLOOD BROTHERS 8 宣戦恋歌』
BLACK BLOOD BROTHERS 8 宣戦恋歌(あざの 耕平)

富士見書房で今、最も上り調子の作家といえば、あざの耕平に違いない。
現代に生きる少年少女が織り成す、薬と悪魔と王国の物語『Dクラッカーズ』は鋭い刃だった。そして続く『BLACK BLOOD BROTHERS』は読者の期待を裏切らず、より巨大なスケールで展開される吸血鬼と人間の物語であり、人類史を書き直す世界観を提示してみせた。
富士見書房が「あざの耕平まつり」と称してキャンペーンを打つのもうなずける。編集部と読者の期待に応え続ける昇り竜の小説は、まさに今が熱い、今が旬なのだ。
新たな舞台、新たな試練、新たな出会い
第3部の幕開けとなるこの巻は、それを確信させるに足る出来。
吸血鬼と人が共存していた都市「特区」は『九龍の血統』の手に落ちた。逃げ延びたミミコとカンパニーのメンバーが息をつく間もなく、反吸血鬼の総本山であるシンガポールにて、新たな試練が彼女たちを待ち受ける。
前巻の手痛い敗北から一転、反攻に向けた準備が進む。
とりわけ、ミミコの成長はめざましい。貧民街で通行人に絡む浮浪児だった少女が、世界中からの注目を一身に集めるようになるとは、誰が予想しただろうか。
彼女に助言を与えるサマンサや、米国に誕生した若き始祖・豪王フォワードなど、新キャラもまだまだ登場し、舞台もシンガポールを中心に、日本、イギリス、シベリアと、世界各地に話が飛び、一気にスケールアップしている。人と吸血鬼の歴史が新しい局面に入りつつあるのだ。
巨大なスケールで書き上げられた、人と吸血鬼の歴史
吸血鬼を書いた小説は、古今東西、無数にあり、数百、数千にのぼるかもしれない。しかしここまで、大胆なスケールでその歴史を描いた作品は珍しい。
吸血鬼(黒き血:Black Blood)は民間伝承とは逆に、人間(赤き血:Red Blood)に自分の血を与えることで仲間を増やす。彼らは大多数の人間には存在を気づかせず、権力者たちとわずかな関わりを持つに留まっていた。
しかし10年前の香港聖戦で、吸血鬼の存在が公式に初めて明らかになった。相手の血を吸うことで仲間を増やす『九龍の血統』が現れたからだ。彼らは他の血族とも、人間とも決して共存できない。あらゆる他者を自分の血統に染めてしまう、唯一の血族。ゆえに世界が彼らを許さなかった。1つの都市を灰燼に帰すほどの壮絶な戦いの果てに、『九龍の血統』は倒され、公式には吸血鬼は地上から完全殲滅された。
むろん嘘だ。
自分たちの存在を隠したい吸血鬼たちと、一般人の動揺を抑えたい権力者たちの思惑が一致したにすぎない。日本の海上都市「特区」では、何も知らない一般人と、正体を隠した吸血鬼が「共存」しており、「カンパニー」という組織が吸血鬼の起こす揉め事を調停していた。
歴史的な問い
しかしその「共存」は、はたして本当に共存と呼べるのか。
大半の人間は吸血鬼の存在を忘れているし、吸血鬼は一般の目から隠蔽されている。「特区」と「カンパニー」は最初から矛盾を抱えこんでいた。
ヒロインの葛城ミミコは、そのカンパニーの調停員の1人。彼女がとある吸血鬼の兄弟と出会った時、歴史は動き出した。この物語はつまるところ、黒き血と赤き血が共存できるか、できないかという歴史的な問いだ。あらゆる他者を自分の血統に染めていく『九龍の血統』は共存できないという考えを体現し、葛城ミミコは共存できるという考えを体現している。
有史以来の人と吸血鬼の関係がいま最大の転機を迎えようとしている。人類と吸血鬼の歴史にとっての最大の聖戦に向けて、物語は加速していく。未読の方は、今読み始めても決して遅くない。ぜひ。
関連
覚悟を 『BLACK BLOOD BROTHERS 7 王牙再臨』

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現代に生きる少年少女が織り成す、薬と悪魔と王国の物語『Dクラッカーズ』は鋭い刃だった。そして続く『BLACK BLOOD BROTHERS』は読者の期待を裏切らず、より巨大なスケールで展開される吸血鬼と人間の物語であり、人類史を書き直す世界観を提示してみせた。
富士見書房が「あざの耕平まつり」と称してキャンペーンを打つのもうなずける。編集部と読者の期待に応え続ける昇り竜の小説は、まさに今が熱い、今が旬なのだ。
第3部の幕開けとなるこの巻は、それを確信させるに足る出来。
吸血鬼と人が共存していた都市「特区」は『九龍の血統』の手に落ちた。逃げ延びたミミコとカンパニーのメンバーが息をつく間もなく、反吸血鬼の総本山であるシンガポールにて、新たな試練が彼女たちを待ち受ける。
前巻の手痛い敗北から一転、反攻に向けた準備が進む。
とりわけ、ミミコの成長はめざましい。貧民街で通行人に絡む浮浪児だった少女が、世界中からの注目を一身に集めるようになるとは、誰が予想しただろうか。
彼女に助言を与えるサマンサや、米国に誕生した若き始祖・豪王フォワードなど、新キャラもまだまだ登場し、舞台もシンガポールを中心に、日本、イギリス、シベリアと、世界各地に話が飛び、一気にスケールアップしている。人と吸血鬼の歴史が新しい局面に入りつつあるのだ。
吸血鬼を書いた小説は、古今東西、無数にあり、数百、数千にのぼるかもしれない。しかしここまで、大胆なスケールでその歴史を描いた作品は珍しい。
吸血鬼(黒き血:Black Blood)は民間伝承とは逆に、人間(赤き血:Red Blood)に自分の血を与えることで仲間を増やす。彼らは大多数の人間には存在を気づかせず、権力者たちとわずかな関わりを持つに留まっていた。
しかし10年前の香港聖戦で、吸血鬼の存在が公式に初めて明らかになった。相手の血を吸うことで仲間を増やす『九龍の血統』が現れたからだ。彼らは他の血族とも、人間とも決して共存できない。あらゆる他者を自分の血統に染めてしまう、唯一の血族。ゆえに世界が彼らを許さなかった。1つの都市を灰燼に帰すほどの壮絶な戦いの果てに、『九龍の血統』は倒され、公式には吸血鬼は地上から完全殲滅された。
むろん嘘だ。
自分たちの存在を隠したい吸血鬼たちと、一般人の動揺を抑えたい権力者たちの思惑が一致したにすぎない。日本の海上都市「特区」では、何も知らない一般人と、正体を隠した吸血鬼が「共存」しており、「カンパニー」という組織が吸血鬼の起こす揉め事を調停していた。
しかしその「共存」は、はたして本当に共存と呼べるのか。
大半の人間は吸血鬼の存在を忘れているし、吸血鬼は一般の目から隠蔽されている。「特区」と「カンパニー」は最初から矛盾を抱えこんでいた。
ヒロインの葛城ミミコは、そのカンパニーの調停員の1人。彼女がとある吸血鬼の兄弟と出会った時、歴史は動き出した。この物語はつまるところ、黒き血と赤き血が共存できるか、できないかという歴史的な問いだ。あらゆる他者を自分の血統に染めていく『九龍の血統』は共存できないという考えを体現し、葛城ミミコは共存できるという考えを体現している。
有史以来の人と吸血鬼の関係がいま最大の転機を迎えようとしている。人類と吸血鬼の歴史にとっての最大の聖戦に向けて、物語は加速していく。未読の方は、今読み始めても決して遅くない。ぜひ。
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