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ケータイには無い、本を所有する感覚 『DS文学全集』
DS文学全集(任天堂)

★収録作品リスト
夏には『一度は読んでおきたい日本文学100選』と『DS図書館』が発売され、読書の秋には『DS文学全集』。DSで文学を読むソフトはひとまず出尽くした感がある。
それにしても、この『文学全集』は反則に近いお得感。
他社のソフトより1000円安く、ボリュームも同等以上。WiFi通信で追加の作品をダウンロードできるほか、ダ・ヴィンチと組んで、現役の著名作家6人に書き下ろしてもらった新作小説も配信される。
何気にタッチジェネレーションのタイトルで、2800円の価格設定はひさしぶり。ロイヤリティーを払う必要の無いハードメーカーだからできる価格設定という批判を免れない気がするが、そこにメーカーの「本気」度を感じられるのも確か。
スライド操作でページをめくる操作感は、開発者インタビューの中で強調しているだけあって、なるほど気持ちいい。最近iPod touchを持ち歩いているボクは、こちらも指でページをめくっている。
他のソフトとの比較
『一度は読んでおきたい日本文学100選』と同じく、フォントの大きさの変更ができ、たいへん読みやすい。あらすじも付いているが、分量が多すぎて、あらすじというより短縮版になっているのがちょっと残念。『日本文学100選』のように「冒頭のあらすじ」でも付いてると、より気が利いていたと思う。
「文学を読む」ゲームはどれも、青空文庫を利用しているようで、収録作品の重複が多い。表にまとめてみたので、購入の際には参考にしてほしい。
『DS文学全集』『日本文学100選』『DS図書館』の収録作品リストの比較
『DS文学全集』を基本に、重複作品を黄色くマーキングした。
『DS文学全集』と『日本文学100選』はどちらも日本文学に絞っているため、48作品も重複している。そのかわり、『日本文学100選』は石川啄木と与謝野晶子を収録している。とはいえ、買うならどちらか1冊にした方が無駄が少ないかもしれない。『DS図書館』は世界の文学作品までカバーしていて、重複は24冊と少ない。2冊目を買うならこちらがお薦めか。
『DS文学全集』でユニークなのは、読者のレビューを集計して、ランキングをつける機能。レビューでは、10点満点の評価に加え、「痛快」「切ない」などの10種類のキーワードから感想を1つ選ぶ。全国にいる他の読者がどの作品を評価しているかがわかるのは面白い試み。
試み自体は高く評価したい。
つながってる感じは薄い
だが残念なことに、上手くいっているようには感じられなかった。他の読者とつながっているような感じ、読者同士の連帯感のようなものが、ほとんど感じられなかったからだ。例えば、本を読んだ人数などの表示が無く、実際にどれだけの人間が参加しているかがちっとも伝わってこない。
実は、このソフトに限らず、『投票チャンネル』などの任天堂のネットサービスは参加人数がユーザー側にちっとも見えない場合がほとんどだ。そうする利点は確かにある。参加者が100人でも、1000人でも、1万人でも、バレないからだ。コミュニティの人数が少なくて寂れていても、そう見えない。けれども裏を返せば、盛り上がっていても、その熱気が伝わりづらい設計。共有感の演出にかけては比類ない、ニコニコ動画の対極と言える。
Webサービスでは通常、参加人数こそパワーであり、戦闘力に対するスカウターのごとく、堂々と晒していることが多い。ところがゲーム機のネットサービスは、顔の見えない人同士のつながりを可視化する、という点に関して、あまり上手くない。
参加人数や総ポイント数の表示は最低ほしい。
また欲をいえば、感想もキーワード選択式ではなく、自由入力が望ましい。あるいは、自分の好きな部分を1箇所引用することができ、みんなが好きな場面を抽出するという機能も、あればうれしい。あくまで実験的な機能だろうが、読者同士がつながる感覚はまだまだ不十分。
電子書籍の可能性
今や電子書籍のメジャープラットフォームはケータイである。書籍配信サイトは数百あり、数十億円規模の市場に成長し、「魔法のiらんど」のようにユーザー自身がコンテンツを生み出すエコシステムも育っている。趨勢はすでに決している。
ケータイでの読み書きに関して、ボクは今の10代には到底及ばない。それでも小説をどのプラットフォームで読むかといえば、やはりケータイ。たまには、DSで文学を読むのもいいが、日常持ち歩くのはケータイで、パッと開きやすいのもケータイ。
どちらかというと、DSにはケータイの不足を補うような成長をしてほしい。1つはケータイでの文章の読み書きに慣れていない、中高年層に浸透してほしい。もう1つは、所有感。ケータイはつながってる感はすごいが、一方で自分の物を持ち歩いている感は薄い。月額課金制が多く、仕組み的に「所有」できないことも多い。
本棚を丸ごと持ち歩く感覚、みっちり詰まっている感覚は、ケータイでは味わいにくい。携帯デバイスでの電子書籍は、これからますます競争が激化するだろうが、対ケータイでポイントになるのはこの所有感だと思う。
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夏の読書はDSで!『一度は読んでおきたい日本文学100選』

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それにしても、この『文学全集』は反則に近いお得感。
他社のソフトより1000円安く、ボリュームも同等以上。WiFi通信で追加の作品をダウンロードできるほか、ダ・ヴィンチと組んで、現役の著名作家6人に書き下ろしてもらった新作小説も配信される。
何気にタッチジェネレーションのタイトルで、2800円の価格設定はひさしぶり。ロイヤリティーを払う必要の無いハードメーカーだからできる価格設定という批判を免れない気がするが、そこにメーカーの「本気」度を感じられるのも確か。
スライド操作でページをめくる操作感は、開発者インタビューの中で強調しているだけあって、なるほど気持ちいい。最近iPod touchを持ち歩いているボクは、こちらも指でページをめくっている。
『一度は読んでおきたい日本文学100選』と同じく、フォントの大きさの変更ができ、たいへん読みやすい。あらすじも付いているが、分量が多すぎて、あらすじというより短縮版になっているのがちょっと残念。『日本文学100選』のように「冒頭のあらすじ」でも付いてると、より気が利いていたと思う。
「文学を読む」ゲームはどれも、青空文庫を利用しているようで、収録作品の重複が多い。表にまとめてみたので、購入の際には参考にしてほしい。
『DS文学全集』『日本文学100選』『DS図書館』の収録作品リストの比較
『DS文学全集』を基本に、重複作品を黄色くマーキングした。
『DS文学全集』と『日本文学100選』はどちらも日本文学に絞っているため、48作品も重複している。そのかわり、『日本文学100選』は石川啄木と与謝野晶子を収録している。とはいえ、買うならどちらか1冊にした方が無駄が少ないかもしれない。『DS図書館』は世界の文学作品までカバーしていて、重複は24冊と少ない。2冊目を買うならこちらがお薦めか。
『DS文学全集』でユニークなのは、読者のレビューを集計して、ランキングをつける機能。レビューでは、10点満点の評価に加え、「痛快」「切ない」などの10種類のキーワードから感想を1つ選ぶ。全国にいる他の読者がどの作品を評価しているかがわかるのは面白い試み。
試み自体は高く評価したい。
だが残念なことに、上手くいっているようには感じられなかった。他の読者とつながっているような感じ、読者同士の連帯感のようなものが、ほとんど感じられなかったからだ。例えば、本を読んだ人数などの表示が無く、実際にどれだけの人間が参加しているかがちっとも伝わってこない。
実は、このソフトに限らず、『投票チャンネル』などの任天堂のネットサービスは参加人数がユーザー側にちっとも見えない場合がほとんどだ。そうする利点は確かにある。参加者が100人でも、1000人でも、1万人でも、バレないからだ。コミュニティの人数が少なくて寂れていても、そう見えない。けれども裏を返せば、盛り上がっていても、その熱気が伝わりづらい設計。共有感の演出にかけては比類ない、ニコニコ動画の対極と言える。
Webサービスでは通常、参加人数こそパワーであり、戦闘力に対するスカウターのごとく、堂々と晒していることが多い。ところがゲーム機のネットサービスは、顔の見えない人同士のつながりを可視化する、という点に関して、あまり上手くない。
参加人数や総ポイント数の表示は最低ほしい。
また欲をいえば、感想もキーワード選択式ではなく、自由入力が望ましい。あるいは、自分の好きな部分を1箇所引用することができ、みんなが好きな場面を抽出するという機能も、あればうれしい。あくまで実験的な機能だろうが、読者同士がつながる感覚はまだまだ不十分。
今や電子書籍のメジャープラットフォームはケータイである。書籍配信サイトは数百あり、数十億円規模の市場に成長し、「魔法のiらんど」のようにユーザー自身がコンテンツを生み出すエコシステムも育っている。趨勢はすでに決している。
ケータイでの読み書きに関して、ボクは今の10代には到底及ばない。それでも小説をどのプラットフォームで読むかといえば、やはりケータイ。たまには、DSで文学を読むのもいいが、日常持ち歩くのはケータイで、パッと開きやすいのもケータイ。
どちらかというと、DSにはケータイの不足を補うような成長をしてほしい。1つはケータイでの文章の読み書きに慣れていない、中高年層に浸透してほしい。もう1つは、所有感。ケータイはつながってる感はすごいが、一方で自分の物を持ち歩いている感は薄い。月額課金制が多く、仕組み的に「所有」できないことも多い。
本棚を丸ごと持ち歩く感覚、みっちり詰まっている感覚は、ケータイでは味わいにくい。携帯デバイスでの電子書籍は、これからますます競争が激化するだろうが、対ケータイでポイントになるのはこの所有感だと思う。
関連
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コメント
>いっちーさん
電車で立って読むとなると、片手でしっかり持てて操作できるデバイスでないと厳しいですね。たしかに。
> http://gifbunko.com
知りませんでした。ありがとうございます。
今度使ってみます。
電車で立って読むとなると、片手でしっかり持てて操作できるデバイスでないと厳しいですね。たしかに。
> http://gifbunko.com
知りませんでした。ありがとうございます。
今度使ってみます。
最近、携帯でここ読んでいます。
携帯でたて読みできるのは満員電車でもgoo!
VGA液晶だと綺麗です。
http://gifbunko.com
DS文学全集は家でゆっくりと愛用していますw
まだ15冊ほど未読なのではやくコンプリートしたいです・・(エンディングがあるのかなぁ?)w