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美少女ゲーム的ヤンデレからの脱却 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 善意の指針は悪意』
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 善意の指針は悪意(入間人間)

世間はいつのまにやらヤンデレブーム。
『ヤンデレ大全』なんて本まで出版されるご時世である。しかし以前も書いたが、ライトノベルにおいてはヤンデレは意外と少ないのである(少なくとも知名度は低い)。
例えば、はてなダイアリー「ヤンデレとは」を参照しても、ライトノベルの実例は1つも挙げられていないし、Wikipediaでも同様である。おもにPC系美少女ゲームやそのアニメ版で活躍することが多い。
そこに燦然と輝く1人の少女が降臨した、誰あろう、まーちゃんである。この『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』シリーズは、問答無用のヤンデレ小説であり、従来のライトノベルのヤンデレ水準をはるかにぶっちぎっている。
まーちゃんの源流を探る
まーちゃんは、『School Days』の言葉や『SHUFFLE!』の楓といった有名なヤンデレとは、かなり異なっている。その系譜をたどるなら、おそらく西尾維新の戯言シリーズの玖渚友(特に「死線の蒼」モード)に遡る。実際、この小説は戯言シリーズの影響が色濃く感じられる。
主人公の名前が「いーちゃん」と「みーくん」。主人公が自称戯言遣いで、片や自称嘘つき。両作品とも主人公の嘘つき1人称で物語が書かれている。主人公の男女2人が過去の因縁に縛られている点や、少女が主人公になついている理由がインプリンティング的である点など、共通項は枚挙に暇が無い。
まーちゃんの先例として挙げられるのが『電波的な彼女』のヒロイン堕花雨だが、このシリーズも西尾維新の戯言シリーズの影響を強く受けている(世界観を共有する別作品『紅』では影響が非常に濃く表れる)。
ライトノベル系ヤンデレと美少女ゲーム系ヤンデレの違い
先にも述べたが、西尾維新の影響を受けたライトノベル系のヤンデレは、美少女ゲームの流れをくむヤンデレとは明確に異なる。
まず美少女ゲームのヤンデレを見てみよう。『SHUFFLE!』の楓にしろ、『School Days』の言葉にしろ、ヤンデレ化した原因は主人公の男の優柔不断な態度を取ったせいで、三角関係がもつれたからだ。美少女ゲームという形式においては、主人公の男はその世界の色々な事象の「原因」「発端」となる事が多いが、ここでも例外ではない。
一方、ライトノベルのヤンデレはどうか。戯言シリーズの玖渚友、『電波的な彼女』の堕花雨、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』のまーちゃん、いずれもヤンデレ化した理由は、主人公の男のせいではない。闇を抱えるようになった要因は、幼少期の過酷な体験にある(堕花雨については、理由はやや不明だが)。
主人公の男を盲目的なまでに愛するようになったのも、過酷な幼少期に出会ったからだ。美少女ゲームにおいて、主人公の男とヤンデレヒロインがある種、加害者と被害者の関係と言えるのに対し、ライトノベルにおいて2人は世界の理不尽に対する共通の被害者となっている。
ヤンデレタイプを分ける、主人公の男への感情移入の有無
『School Days』は一人称のノベルゲームではなく、アニメに近く、主人公の誠に感情移入するより、ヤツの行動に突っ込む作品である。実際ニコニコ動画でアニメ版『School Days』を見れば、殺殺殺殺殺殺殺……氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね……のオンパレードである。『SHUFFULE!』も、楓がヤンデレ化したのはアニメ版であって、ゲーム版ではない。
共通するのは、視聴者が主人公の男に感情移入していない、という点だ。つまり主人公の男が少女をヤンデレ化させた元凶であっても、視聴者は非難すべき相手として、客観的に見ることができる。
一方、戯言シリーズや『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』は、主人公の男の一人称で物語が進むため、感情移入の度合いが深い。主人公はヤンデレの元凶であってはならない。むしろ世の理不尽によって心を壊された少女と共に生きることを決意した英雄であるべきなのだ。
さて最後になって、この本の内容にまったく触れてないことに気がついた。1巻ほどのインパクトは正直無いが、舞台の裏側を嫌な感じで暴く「みーくん」の解答編は今回も健在。入院した先の病院でも、みーくんとまーちゃんは行方不明事件と暴行事件に巻き込まれる。この2人、他人の悪意をひきよせる回路でも内蔵してるんじゃなかろうか? しかしまーちゃんを悪意から守るのは、みーくんの役割である。2人はそうして共に生きていくのだろう。これからも。
関連
嘘つきとヤンデレの恋愛(?) 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸』

世間はいつのまにやらヤンデレブーム。
『ヤンデレ大全』なんて本まで出版されるご時世である。しかし以前も書いたが、ライトノベルにおいてはヤンデレは意外と少ないのである(少なくとも知名度は低い)。
例えば、はてなダイアリー「ヤンデレとは」を参照しても、ライトノベルの実例は1つも挙げられていないし、Wikipediaでも同様である。おもにPC系美少女ゲームやそのアニメ版で活躍することが多い。
そこに燦然と輝く1人の少女が降臨した、誰あろう、まーちゃんである。この『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』シリーズは、問答無用のヤンデレ小説であり、従来のライトノベルのヤンデレ水準をはるかにぶっちぎっている。
まーちゃんは、『School Days』の言葉や『SHUFFLE!』の楓といった有名なヤンデレとは、かなり異なっている。その系譜をたどるなら、おそらく西尾維新の戯言シリーズの玖渚友(特に「死線の蒼」モード)に遡る。実際、この小説は戯言シリーズの影響が色濃く感じられる。
主人公の名前が「いーちゃん」と「みーくん」。主人公が自称戯言遣いで、片や自称嘘つき。両作品とも主人公の嘘つき1人称で物語が書かれている。主人公の男女2人が過去の因縁に縛られている点や、少女が主人公になついている理由がインプリンティング的である点など、共通項は枚挙に暇が無い。
まーちゃんの先例として挙げられるのが『電波的な彼女』のヒロイン堕花雨だが、このシリーズも西尾維新の戯言シリーズの影響を強く受けている(世界観を共有する別作品『紅』では影響が非常に濃く表れる)。
先にも述べたが、西尾維新の影響を受けたライトノベル系のヤンデレは、美少女ゲームの流れをくむヤンデレとは明確に異なる。
まず美少女ゲームのヤンデレを見てみよう。『SHUFFLE!』の楓にしろ、『School Days』の言葉にしろ、ヤンデレ化した原因は主人公の男の優柔不断な態度を取ったせいで、三角関係がもつれたからだ。美少女ゲームという形式においては、主人公の男はその世界の色々な事象の「原因」「発端」となる事が多いが、ここでも例外ではない。
一方、ライトノベルのヤンデレはどうか。戯言シリーズの玖渚友、『電波的な彼女』の堕花雨、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』のまーちゃん、いずれもヤンデレ化した理由は、主人公の男のせいではない。闇を抱えるようになった要因は、幼少期の過酷な体験にある(堕花雨については、理由はやや不明だが)。
主人公の男を盲目的なまでに愛するようになったのも、過酷な幼少期に出会ったからだ。美少女ゲームにおいて、主人公の男とヤンデレヒロインがある種、加害者と被害者の関係と言えるのに対し、ライトノベルにおいて2人は世界の理不尽に対する共通の被害者となっている。
『School Days』は一人称のノベルゲームではなく、アニメに近く、主人公の誠に感情移入するより、ヤツの行動に突っ込む作品である。実際ニコニコ動画でアニメ版『School Days』を見れば、殺殺殺殺殺殺殺……氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね……のオンパレードである。『SHUFFULE!』も、楓がヤンデレ化したのはアニメ版であって、ゲーム版ではない。
共通するのは、視聴者が主人公の男に感情移入していない、という点だ。つまり主人公の男が少女をヤンデレ化させた元凶であっても、視聴者は非難すべき相手として、客観的に見ることができる。
一方、戯言シリーズや『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』は、主人公の男の一人称で物語が進むため、感情移入の度合いが深い。主人公はヤンデレの元凶であってはならない。むしろ世の理不尽によって心を壊された少女と共に生きることを決意した英雄であるべきなのだ。
さて最後になって、この本の内容にまったく触れてないことに気がついた。1巻ほどのインパクトは正直無いが、舞台の裏側を嫌な感じで暴く「みーくん」の解答編は今回も健在。入院した先の病院でも、みーくんとまーちゃんは行方不明事件と暴行事件に巻き込まれる。この2人、他人の悪意をひきよせる回路でも内蔵してるんじゃなかろうか? しかしまーちゃんを悪意から守るのは、みーくんの役割である。2人はそうして共に生きていくのだろう。これからも。
関連
嘘つきとヤンデレの恋愛(?) 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸』
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コメント
>文学少女の新刊
実はまだ読んでません(買って手元にあります)が、伏線から読み取る限り、確かにあの娘はかなりのヤンデレっぽい感じですね。ライトノベルにも本格的にヤンデレブーム到来ですかねえ。
実はまだ読んでません(買って手元にあります)が、伏線から読み取る限り、確かにあの娘はかなりのヤンデレっぽい感じですね。ライトノベルにも本格的にヤンデレブーム到来ですかねえ。
C†Cの支倉曜子タイプですな。>トラウマ型ヤンデレ
過去のトラウマで黒い面が出るってのは、らきすたのあきら様も近い所があるようなw
過去のトラウマで黒い面が出るってのは、らきすたのあきら様も近い所があるようなw
多分、既にチェックされてると思いますが
文学少女の最新刊が思いのほかストレートなヤンデレネタですね。
遠からず(?)出るであろうタザリア王国物語の新刊もあることですし
ブームはくる・・・のか?