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欲望の博覧会にようこそ 『官能小説用語表現辞典』
官能小説用語表現辞典(永田 守弘 )
(→文庫版)
官能小説を書こう!
という赤文字の帯がつけられた本である。世の中に官能小説を読んでいる人がどれだけいるかは知らないが、書きたくなるほど好きな人はそこまで多くはいないだろう。1万人……もいるはずがなく、数千人がいいところだ。
今やエロ小説を書こうと思っている人間よりも、エロゲーを作ろうと志している人間の方がずっと多いはずだ。しかしこの本の本当の読者は、官能小説を書こうとしている少数の人間ではない。
話がそれるが、エロゲーというのは不思議なジャンルで、「エロくないエロゲー」という自己否定的な作品がこれほど圧倒的な比率を占めているエロメディアは他にない。年間売上トップ10の大半は、エロくない作品であり、売上金額でもエロくない作品の方が大きいかもしれない。
官能小説はそういう自己矛盾を抱えこんでいない。エロくないエロ小説が無いとは言わないが、まず無いといっても嘘にはならない。しかしそれは同時につまらないことでもある。あまりにも『型』が完成しすぎているのだ。
僕はここ数年、とりわけ二次元ドリームノベルズをこよなく愛しているが、そのオチは通称「二次元エンド」と呼ばれるほど、身も蓋も無く強引である。官能小説のストーリーなんて価値ゼロだとは言わないが、さして価値が無いのは確かだ。
ではどこに価値があるか。それはシチュエーションへの欲望であり、飽くなきフェティシズムである。あえて誤解を招く表現をするなら、変態が変態のために書き、変態がそれを読んでいるにすぎない。官能小説は大抵、文章が上手くない。しかし、では文章力巧みな作家が、エロい小説を書いたとして、いったい何になるのか? そんなもの、ちっともエロくない。一銭の値打ちも無いのだ。
何故なら、エロとは欲望であり、官能小説家は自らの欲望で小説を書くからだ。読者は本を通して、作者の欲望に共感し、同感する。そのために練られた言葉こそが、欲望語こそが、エロ小説の文章である。エロ小説の文章は、一般的には必ずしも上手くないが、当然だ。もはや普通の日本語とは、言語が違うのだから。
欲望を表す言語として成立し、最小で数十人、広がって数百人、数千人、せいぜい数万人に理解されるだけの言葉。異様なしつこさで事物を描いてみせ、妙になまめかしく音にこだわり、回りくどい喩えを延々とくり返す。
その異質な言語を収集したのがこの本である。それはまさしく、他人の欲望の収集に他ならない。欲望の博覧会と言ってもいいだろう。決して、決して、官能小説家志望のための一冊ではない。なぜなら真に官能小説家をめざすなら、まず自分の欲望を語らなければならず、自身の内なる言葉をしゅぴっ、しゅぴゅるるるっと放出しなければならないからだ。
むしろ官能小説なんてろくに読んだこともない人間にこそ、お薦めしたい。怖いもの見たさ結構だし、冷やかし結構。好奇心万歳だ。奇妙な品々が並ぶ展示会に、ふと足を踏み入れる気持ちで、手にとっていただきたい。
(→文庫版)官能小説を書こう!
という赤文字の帯がつけられた本である。世の中に官能小説を読んでいる人がどれだけいるかは知らないが、書きたくなるほど好きな人はそこまで多くはいないだろう。1万人……もいるはずがなく、数千人がいいところだ。
今やエロ小説を書こうと思っている人間よりも、エロゲーを作ろうと志している人間の方がずっと多いはずだ。しかしこの本の本当の読者は、官能小説を書こうとしている少数の人間ではない。
話がそれるが、エロゲーというのは不思議なジャンルで、「エロくないエロゲー」という自己否定的な作品がこれほど圧倒的な比率を占めているエロメディアは他にない。年間売上トップ10の大半は、エロくない作品であり、売上金額でもエロくない作品の方が大きいかもしれない。
官能小説はそういう自己矛盾を抱えこんでいない。エロくないエロ小説が無いとは言わないが、まず無いといっても嘘にはならない。しかしそれは同時につまらないことでもある。あまりにも『型』が完成しすぎているのだ。
僕はここ数年、とりわけ二次元ドリームノベルズをこよなく愛しているが、そのオチは通称「二次元エンド」と呼ばれるほど、身も蓋も無く強引である。官能小説のストーリーなんて価値ゼロだとは言わないが、さして価値が無いのは確かだ。
ではどこに価値があるか。それはシチュエーションへの欲望であり、飽くなきフェティシズムである。あえて誤解を招く表現をするなら、変態が変態のために書き、変態がそれを読んでいるにすぎない。官能小説は大抵、文章が上手くない。しかし、では文章力巧みな作家が、エロい小説を書いたとして、いったい何になるのか? そんなもの、ちっともエロくない。一銭の値打ちも無いのだ。
何故なら、エロとは欲望であり、官能小説家は自らの欲望で小説を書くからだ。読者は本を通して、作者の欲望に共感し、同感する。そのために練られた言葉こそが、欲望語こそが、エロ小説の文章である。エロ小説の文章は、一般的には必ずしも上手くないが、当然だ。もはや普通の日本語とは、言語が違うのだから。
欲望を表す言語として成立し、最小で数十人、広がって数百人、数千人、せいぜい数万人に理解されるだけの言葉。異様なしつこさで事物を描いてみせ、妙になまめかしく音にこだわり、回りくどい喩えを延々とくり返す。
その異質な言語を収集したのがこの本である。それはまさしく、他人の欲望の収集に他ならない。欲望の博覧会と言ってもいいだろう。決して、決して、官能小説家志望のための一冊ではない。なぜなら真に官能小説家をめざすなら、まず自分の欲望を語らなければならず、自身の内なる言葉をしゅぴっ、しゅぴゅるるるっと放出しなければならないからだ。
むしろ官能小説なんてろくに読んだこともない人間にこそ、お薦めしたい。怖いもの見たさ結構だし、冷やかし結構。好奇心万歳だ。奇妙な品々が並ぶ展示会に、ふと足を踏み入れる気持ちで、手にとっていただきたい。
コメント
え
>名作という評価を受けているエロゲにおいて
エロゲーは歴史を振り返ると、エロの比重が少ない作品が増していく不思議な歴史をたどってますね。『同級生』の頃にはすでに、エロゲーの脱エロ化は見えつつあって、その後のPC-Engine末期〜PS1時代前半の「ギャルゲー」ブーム=エロゲーのコンシューマー移植の本格化があり、さらにPS1時代後半の「ToHeart」の登場で、「エロ→萌え」路線が決定づけられました。
名作には確かに、エロの少ない物が非常に多いですね。
例外は『ランス』『臭作』ぐらいでしょうか。まぁ陵辱ゲームプレイヤーとしては、エロゲプレイヤー一般からは名作扱いされない作品も、「名作」として推したい気持ちはありますが。
エロゲーは歴史を振り返ると、エロの比重が少ない作品が増していく不思議な歴史をたどってますね。『同級生』の頃にはすでに、エロゲーの脱エロ化は見えつつあって、その後のPC-Engine末期〜PS1時代前半の「ギャルゲー」ブーム=エロゲーのコンシューマー移植の本格化があり、さらにPS1時代後半の「ToHeart」の登場で、「エロ→萌え」路線が決定づけられました。
名作には確かに、エロの少ない物が非常に多いですね。
例外は『ランス』『臭作』ぐらいでしょうか。まぁ陵辱ゲームプレイヤーとしては、エロゲプレイヤー一般からは名作扱いされない作品も、「名作」として推したい気持ちはありますが。
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そんな面白くい矛盾には気がつきませんでした。名作という評価を受けているエロゲにおいてエロは対象外な気がします。つまりエロはおまけ程度であり、エロがあるゲームとの認識。私たちが求めているものはエロではなく、一体何なんでしょう。