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美しいファンタジーの皮をかぶった悪漢小説 『ダークエルフの口づけ』

ダークエルフの口づけ川人忠明

美人のエルフにして、名高い冒険者グループのただ1人の生き残り、貿易商ギルドの重要施設<ロス・ペラス沈黙の紳士>会館の保安主任を務めるベラ。会館の夜会を訪れる多くの貴婦人よりも美しく、精霊魔術と剣の優れた使い手であり、館主の信頼も厚い。まさに才色兼備の女性である。しかし彼女の正体は、ダークエルフの里から送り込まれた密偵だった。

主人公が肌の色を変えて、正体を隠している悪党という点で、すでに普通のファンタジー小説とは異質の作品だが、本当に悪人ばかりの物語である。善人と言えるのは、子供の頃にベラに命を救われたアマデオと、公爵家の末っ娘エビータぐらい。

あとの登場人物は、微笑みながら隠したナイフでグッサリ刺すような、にこにこ笑顔でお茶に毒を盛るような、ろくでなしの悪党ぞろい。主人公のベラはいつも冷静沈着で、顔色ひとつ変えずに人を殺すクールビューティー。百顔のラミアはその名の通り、類まれなる変装術の使い手で、盗賊ギルドの幹部のくせに堂々と貴族の夜会に紛れ込む。ネタバレになるので書けないが、暗殺者に、暗黒神官に、ダークエルフと、闇の眷属は欠かさない。

誰が誰を騙してるかわからない状況で、物語は進行する。サスペンス好きにはお薦めできるが、ファンタジー好きには微妙かも。1巻を読んで、こんなものかと思ったら、それは甘い。2巻、3巻と続くにしたがって、物語の陰謀度は飛躍的に上がっていくのだ。

イメージとしては『MGS3』のエンディング後に近い。「実はxxxxは△☆▽◎だったんだ」と思ったら、「実は△☆▽◎と思ったら、◎☆△▽だったんだ」と思ったら、「実は……」と疑心暗鬼の無限連鎖に突き落とされることは間違いない。

謎が謎を、陰謀が陰謀を呼び、最終巻となる4巻は混沌の王国ファンドリアにおける大陰謀が展開するはず。腹黒い悪漢たちの誰が最後に笑うのか。しかし深い闇に包まれたベラの、気まぐれともいえるささやかな気持ちが実るといいな、と思う。
「これは忠告よ、ベラ。あの坊やは、信じてはいけないものを信じているけれど、そのことにまったく気づいていないわ。まるで財宝があるという悪魔の言葉を信じて、意気揚々と竜の巣に乗り込んでいく無知で、無邪気な、冒険者のようにね。これが喜劇なら、きっとひどくデキの悪い喜劇よ。冒険者が信じている悪魔は暗黒の妖精族で、それもとびきりの美女なんだから。裏切られるのは目に見えているわね」
 と、ラミアは肩をすくめた。
「どうやら、その喜劇のなかでは、わたしは冒険者をそそのかす悪魔の役回りを演じなくてはならないようです」
「たとえ冒険者が竜の息吹で焼き殺されても、観客にとっては喜劇のままでしょうね。でも、冒険者をそそのかした悪魔にとってはどうかしら?」
「そのつもりでそそのかしたのなら、悪魔は満足するのではないですか?」
「もちろん、そうね。でも、そのつもりじゃなかったのなら、きっと後悔するわ。そう思わない?」


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