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悪意は保存される 『スプライトシュピーゲル 2』

スプライトシュピーゲル 2冲方 丁

1つの状況を2つの視点で描いたオイレンシュピーゲルとスプライトシュピーゲル。2巻において、2つの小説は同じ事件を2つの方向から描き出す。

かつてウィーンと呼ばれた国際都市ミリオポリス。
外部からの電子的攻撃により、ロシアの原子炉衛星が地上に落とされた。墜落現場から原子炉を奪取したテロリストたちは、核兵器を製造し、ミリオポリスで爆発させようと計画していた。

テログループは総計7つ。テロリストの国際連合と化した敵に対して、各国の捜査組織も連携を取って動き出す。自分たちの国家の企みを胸に秘めて。混乱した政府は軍の出動を要請しようとしていた。非常事態宣言が発令され、軍が動き出すまでに残されたのは36時間。

2組の機械化少女がそれぞれ別個に奮闘しながら、密接にリンクし、ミリオポリス最大の危機に立ち向かう。事件の顛末そのものは『オイレンシュピーゲル2』で描かれているとおりだが、こちらを読むと、事件の主謀者たちの別の側面が明らかになる。

2つのシュピーゲルは、『マルドゥック・スクランブル』と同じく、悪意と少女の物語である。悪意にさらされた時、人はどうやって身を守るのか。いや、本当の悪意からは守れない。一方的に傷つけられる理不尽により、人は悪意に感染する。そして別の人間に悪意をばら撒く。エネルギー保存則のように、悪意は保存される。むしろ人口の増加に伴い、世界を満たす悪意の総量は増えているのかもしれない。

3人の少女の1人、乙(ツバメ)は、日本人テロリスト杜麟太郎に対してこう語っている。
「オレの中にもワニがいるよ」
 小さな声で告げる――無視されるかと思ったら、モリは微笑んだ。
「いつからだい」あっさりと合わせる――まるで自分の中にも住んでいるというように。
「パパとママが真っ二つになって死んだとき」なんで他人に話すんだろう――素朴な疑問/凰や雛以外では初めてのこと。「飛行機。ハイジャックされて落っこちた。オレだけ生きてて、体に機械をくっつけられた」
 ”911ごっこだ”――胸の奥をよぎるワニの声。”政府に撃墜された”
「そんでワニが言うんだ。パパとママが死んだのはテロリストのせいだって。だから、同じようなことをするやつらは、みんな真っ二つにしろって。そうしてれば、そのうち、天国のパパとママに会えるかもしれない」
かつて悪意に感染され、自国の大臣を暗殺した男は、いまだ自分の中で暴れる悪意を制御しきれない少女になにを語り、どういう生き方を見せるのか。その辺りは、ぜひ実際に読んでもらいたいが、ボクが感じるのは悪意は絶対に無くならないということだ。ゆえに、人は悪意との付き合い方をおぼえなければいけないのではないか。

娯楽である以上、小説にはわかりやすい象徴が必要となる。この巻ではさらに新しい悪が登場する。人の心理や印象を操作することに長けた恐るべき人物、カール・クラウス・フォン・シュテルテベッカー元少将。レクター博士やヨハンに似すぎているのは否めないが、今後の暗躍に期待が高まる。

関連
機械化少女たちの2つの物語 『オイレンシュピーゲル』と『スプライトシュピーゲル』
21世紀最大の発明は誰にも終わらせられない戦争 『オイレンシュピーゲル 2』

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