→Amazonで購入
今月の売れ筋
クロスイッチ (→書評) |
俺の妹がこんなに可愛いわけがない (→書評) |
P.S.すりーさん |
英雄伝説空の軌跡セット (予約・超殺到!) |
PSP-3000 ピアノ・ブラック (予約好調) |
白騎士物語 -古の鼓動- (予約好調!) |
Latest Entries
21世紀最大の発明は誰にも終わらせられない戦争 『オイレンシュピーゲル 2』
オイレンシュピーゲル 2(冲方 丁)

かつてウィーンと呼ばれていた、オーストリアの首都ミリオポリス。国際情勢の狭間にあって、さまざまな矛盾を抱えこんだこの都市には、世界各地のテロリストたちが暗躍していた。現実においても、現実の未来においても、架空の物語においても、21世紀は「テロの世紀」だ。
世界を滅ぼしかけた大戦争を2度にわたってくり返した人類は、さらなる進化した戦争を具現化した。世界大戦は多くの「後遺症」を残したが、いちおう終結できた。しかしテロは終わらせることができない。責任を取る国家がすでに消滅しているケースが多いからだ。そう、人類はついに誰にも終わらせられない戦争を発明したのだ。
短編連作という形を取っていた1巻と違い、2巻は1つの大きな事件が展開する。ロシアの原子炉衛星が外部からのハッキングによって、地上に墜落させられた。墜落現場から原子炉を奪取したテロリストたちの目的は、原子炉を使って核兵器を作り、ミリオポリスをふっ飛ばすこと。暗躍する7つのテログループを、涼月、陽炎、夕霧、3人の機械化少女が追いかける。
少女たちが立ち向かうのは、世界に満ちる悪意である。
世にあふれる悪意。無力な少女。身体の喪失。機械化された身体の獲得。戦いの再開。自分の居場所の確立。『マルドゥック・スクランブル』と通底するテーマをライトノベル的に描きなおしたのが、この『オイレンシュピーゲル』である。
正しく言い直そう。少女たちは悪意に立ち向かうのではない。悪意は向こうから一方的にやってくる。不意打ちこそ、予期しない遭遇こそ、悪意の悪意たる由縁であるのだから。
小説の中で描かれる未来の社会には、大人たちの不合理が充満している。しかしそれだけでは、いささか抽象的すぎる。ライトノベルという娯楽小説には、もう少しわかりやすい具現形が必要となる。
世界中のテロリストに武器を与え、戦う動機を与える幽霊企業プリンチップ社。「世界中の人間に戦う理由を与える」と自称し、テロを扇動する演出家リヒャルト・トラクル。トラクルおじさんは素質のある若者に接触して、優しく言葉をかけ、必要な時に必要な力=武器を与えてあげる親切な中年男。まさしく悪意そのもの。
対になる2つの小説、『オイレンシュピーゲル』と『スプライトシュピーゲル』。色気のある機械化少女3人と、かわいい機械化少女3人。悪意はどちらの小説にも出現している。悪意の手はどこまでも長く、その懐は広大なのだ。2組の少女たちが、悪意の象徴トラクルおじさんを追い詰めるのはいつか来るのだろうか。それはわからないが、この作品において、不条理に対峙する人間の生きざまが美しく、はかなく、健気に、女性らしく、書かれているのは間違いない。

かつてウィーンと呼ばれていた、オーストリアの首都ミリオポリス。国際情勢の狭間にあって、さまざまな矛盾を抱えこんだこの都市には、世界各地のテロリストたちが暗躍していた。現実においても、現実の未来においても、架空の物語においても、21世紀は「テロの世紀」だ。
世界を滅ぼしかけた大戦争を2度にわたってくり返した人類は、さらなる進化した戦争を具現化した。世界大戦は多くの「後遺症」を残したが、いちおう終結できた。しかしテロは終わらせることができない。責任を取る国家がすでに消滅しているケースが多いからだ。そう、人類はついに誰にも終わらせられない戦争を発明したのだ。
短編連作という形を取っていた1巻と違い、2巻は1つの大きな事件が展開する。ロシアの原子炉衛星が外部からのハッキングによって、地上に墜落させられた。墜落現場から原子炉を奪取したテロリストたちの目的は、原子炉を使って核兵器を作り、ミリオポリスをふっ飛ばすこと。暗躍する7つのテログループを、涼月、陽炎、夕霧、3人の機械化少女が追いかける。
少女たちが立ち向かうのは、世界に満ちる悪意である。
世にあふれる悪意。無力な少女。身体の喪失。機械化された身体の獲得。戦いの再開。自分の居場所の確立。『マルドゥック・スクランブル』と通底するテーマをライトノベル的に描きなおしたのが、この『オイレンシュピーゲル』である。
正しく言い直そう。少女たちは悪意に立ち向かうのではない。悪意は向こうから一方的にやってくる。不意打ちこそ、予期しない遭遇こそ、悪意の悪意たる由縁であるのだから。
小説の中で描かれる未来の社会には、大人たちの不合理が充満している。しかしそれだけでは、いささか抽象的すぎる。ライトノベルという娯楽小説には、もう少しわかりやすい具現形が必要となる。
世界中のテロリストに武器を与え、戦う動機を与える幽霊企業プリンチップ社。「世界中の人間に戦う理由を与える」と自称し、テロを扇動する演出家リヒャルト・トラクル。トラクルおじさんは素質のある若者に接触して、優しく言葉をかけ、必要な時に必要な力=武器を与えてあげる親切な中年男。まさしく悪意そのもの。
対になる2つの小説、『オイレンシュピーゲル』と『スプライトシュピーゲル』。色気のある機械化少女3人と、かわいい機械化少女3人。悪意はどちらの小説にも出現している。悪意の手はどこまでも長く、その懐は広大なのだ。2組の少女たちが、悪意の象徴トラクルおじさんを追い詰めるのはいつか来るのだろうか。それはわからないが、この作品において、不条理に対峙する人間の生きざまが美しく、はかなく、健気に、女性らしく、書かれているのは間違いない。
鉄拳――流れるような動作。
ごつっという音/顔面に熱・衝撃――火花が散った/積み重なった札束の中に倒れこんだ。
跳ね起きてやり返そうとしない自分――図星を突かれた者の弱み。
「現実感覚だ。おまえは今、それを失いかけた」ユーリー――涼月を殴りつけた左拳。「その痛みだけが、お前に実感可能な範囲だ。翻弄された心をその範囲に押しとどめて自律しろ」
「二度ほど使った品で良ければ一時間ほど潜り込んで休んでいろ。くれぐれも自分が見たものを理解しようとするな。それは四十八時間ほど後で仲間と一緒になってからにしろ。さもなければ史上初のカミカゼ攻撃を食らって半狂乱になった第二次大戦時の米兵みたいになるぞ」
それは実に、何も言い返す必要がないくらい、まさに的を射た助言だった。
「了解」敬礼――鋭角的に。「思考停止します」
「必死にやれ」
タグ:オイレンシュピーゲル 冲方丁
コメント
コメントの投稿
トラックバック
http://gamenokasabuta.blog86.fc2.com/tb.php/211-c1343277





























