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良質きわまる少年冒険譚 『冬の巨人』

冬の巨人古橋秀之

古橋秀之といえば、あまたいるライトノベル作家の中でも屈指の筆力をもつ作家である。惜しむらくは、決して売れっ子作家ではない、という1点。ライトノベルでは必ずしも、筆力の高さと売上が一致しない。

しかし古橋秀之の作品がどれもこれも面白いのは疑いようもない。かっこいいアクション物が多いが、一方で『シスマゲドン』のような実験的なパロディ作品も書ける。懐も幅も広い。そして今作においては、一般に通じる作品を仕上げる実力を証明してのけた。

人間の住む都市を背負って、終わりのない冬の大地を休むことなく歩き続ける巨人”ミール”。人々にとって”世界”は巨人の背中の上に限られたものだった。都市の外市街に住む貧しい少年オーリャは、神学院教授のディエーニンの助手として、地上と空から、巨人の背の上の”世界”の在り方を目の当たりにし、光り輝く少女と出会う。
世界の外からの来訪者は、年老いた都市とその住人にとって、いったいどんな意味をもつのか。一千年もの歳月、世界を支え続けてきた巨人はどこへ向かうのか。

都市を丸ごと背負う巨人という舞台設定は、なんとも空想的であり、仮に映像化したなら、一般にも訴求するダイナミックな光景になるのは間違いない。
世界は現実の縮図として、良くできている。人工の温室”天球”の中に住む内市民と”天球”の外で働く外市民。巨人の体に井戸を掘って侵食し、体熱をくみ上げる事で、人間の生活圏の温度を確保しているという構図。一千年の間に、疲弊している巨人。

世界に果てがあるからこそ、その果てを目指して「冒険」が生まれる。冒険は新しい発見と変化を世界にもたらし、大人たちの律する社会に大きな波を起こす。まさしく少年が冒険する物語の王道をまっすぐに書ききっている。

229ページと手軽に読める分量なのもいい。
あえて欠点を言えば、コンパクトにまとまっているがゆえに、『天空の城ラピュタ』や『未来少年コナン』ほどのボリューム感を期待すると、少し当てがはずれることだ。敵との立ち回りや追いかけっこといった、アクション要素も無い。

また世界の謎については、完全に解き明かされるわけではなく、想像の余地が少なからず残されている。消化不良になる怖れは無いが、少年の想像力や大人のゆとりはほしいところだ。子供に読ませるウェルメイドな冒険譚であり、少女も映像美に魅力を感じる情景豊かなファンタジー小説であり、大人が短い時間に楽しめるファンタジーでもある。ライトノベルという枠組みにとらわれず、オタク限定ではなく一般向け、中高生限定ではなく全年齢に、どこまでも幅広く読まれてほしい。

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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:古橋秀之  冬の巨人  

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