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覚悟はOK? 準備はOK? 濃厚で、ハードで、サディスティック 『円環少女』

円環少女 1 バベル再臨長谷 敏司

「あたし、背の高い人がそうやってはいつくばるとこ見るの、大スキだわ。はぁっ、もう、そういう目はもっとスキ!」
 嗜虐的なよろこびに目をうるませる小学生の前で、脂汗をたらした男が、顔を床から引きはがそうと両手両足の筋力を振り絞る。しっかり接着されたようにホコリまみれの床にへばりついて離れない下唇が、びろんと長く伸びていた。
「う、あ、ぅ鴉木メイゼルの、嗜虐的変態性を名付け、『S』と定義する」
 ぼとぼととよだれの糸を垂らしながら、犬のように四つんばいにさせられた男が、メイゼルの性的嗜好を魔術でくくろうとする。サディストという定義は説得力満点だ。
 少女は、小さな手のひらをふくらんでない胸に当て、自信たっぷりに言いはなつ。
「変態呼ばわりしないで! あたしは、強い相手やきれいな子の泣き顔を見たい気持ちが、人よりちょっとはげしいだけなんだから!」

(強調は引用者による)
覚悟をもって読み始めていただきたい。
冒頭からそんなふうに書くと、腰が引けてしまう方もいるかもしれない。敷居はほんのちょっと高いが、間違いなく面白い小説である。

魔法についての設定が異常に濃密で、設定好きにはたまらない。次々と襲ってくる過酷な出来事。ハードな物語が好きな人間にはたまらない。ヒロインの少女、円環大系の魔術師メイゼルの性格は素敵にサディスティック。ひそやかなマゾヒズムを刺激されたい人間にはたまらない。

数千の魔法世界の中で最も忌み嫌われているのが人類の住む地球。地獄と呼ばれ、人類は悪鬼とののしられる。何故なら、数千の世界の中で唯一、この地球だけが神から見放された世界であり、人類だけが魔法現象を消滅させる力を持っているからだ。魔法の存在を感知することもなく、信じてもいない、無知な悪鬼どもの世界に堕とされる事は、魔法使いにとって屈辱であり、死よりも重い刑罰だった。

その地獄に、1人の少女が堕とされた。鴉木メイゼル。彼女が罪をあがなうには、悪鬼たる人間に行使され、地獄で敵対する魔導師100人を倒さなければならない。しかし魔法世界と地球の、数千年の歴史でただの1人も成し遂げた者はいない。刻印魔導師は便利な走狗として使い潰され、地獄の底で惨めな死を迎えるのだ。

こうした設定だけで十分ユニークだが、登場する魔法大系はどれも個性的で、濃厚な設定が用意されている。魔法使いどうしの戦いは激烈。そこにさらに人類=悪鬼の能力「魔法消去」が加わり、バトルはより複雑に、激しく、熱くなる。

魔導師公館の専任係官である悪鬼、武原仁は年端もいかない少女を死地に駆り出している良心の呵責に苦しみながら、彼女とパートナーを組んでいる。60年ぶりに復活した失われた魔法大系をめぐって、魔導師公館、神聖騎士団、染血公主ジェルヴェーヌの三者が激突するなか、仁とメイゼルはいつか来る明日に死ぬために、今日を生き残ることができるのか。

文章はお世辞にも読みやすいとは言えまい。新しい概念は本のいたる所にあふれ、それらを誠実に紡げば紡ぐほど、交錯する人々の気持ちを文章に乗せれば乗せるほど、文章は独特の角度をもって、幾度も折れ曲がるのだ。情念は必ずや言語化される、これはそういう言葉の織り成す、もう一つの世界なのだから。

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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:長谷敏司  円環少女  

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