Latest Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

笑えて、泣ける、いい話。 『空とタマ』

空とタマ鈴木 大輔

7回目の家出を実行した空は、以前から目をつけていた無人の廃倉庫に足を踏み入れた。しかし倉庫には、すでに謎の先客がいた。ふざけたことに人気アーティストの名前を騙り、空の煙草にも文句をつけてきた。ちょっとした意地の張り合いがエスカレートして、2階に陣取るそいつとの間で、居場所を取り合う攻防戦が始まった!

去年出た本だけど、2006年の「いい話ナンバーワン」だったかもしれない。泣ける。最初はコメディのような攻防戦が続く。力押しでは敵わないと悟った空は、知恵を絞ってあの手この手で罠にかけようとするが、タマは手ごわい相手で、そのたびに1枚上を行かれてしまう……。やんちゃな攻防戦が楽しいうえ、だんだん相手の正体がわかってくる面白さもある。しかしそれだけでは終わらない。
「……だったら、」体育座り、顔ヒザはさみのまま、タマがぼそぼそと言う。「あんたがあたしよりツイてないなら、言うこと聞いてあげる」
「はあ? んだそりゃ」
 わけわからん。ていうか聞いてあげるって、なんでそんなエラソーなんだよ。
「そりゃなんだ? どういう意味?」
「だからッ! あんたがあたしより不幸なら言うこと聞いてあげる、って言ったの! わかれバカ」
 わかんねえって。どこがどうなったらそんな理屈になるんだ?
 ったくよー。これだから女ってのはよー。なんでこいつら、開き直るとこんなムチャクチャ言い出すんだ。
攻防戦がひと段落する後半から、物語はもう1つの顔を見せ始める。空とタマの家出してきた事情が明らかになっていく。とんでもなく不幸な目に遭った人間は、世界で一番不幸になったと思い込むもの。こんなに不幸なんだから、好きにしたっていいじゃないか、とムシャクシャした気分になるのも仕方ない。

世の中を恨みたくなるのも無理はない。不幸自慢は不毛だって? んなことわかってても、止まらない時はある。けれども怒りにまかせて突付いてみたら、意外な話が飛び出てくるから、人の巡り合わせはわからない。

泣かすはずの相手に泣かされていたり、八つ当たりしていた相手を励ましていることもある。作中の人物だけじゃない。読者も引き込まれて、いつのまにか泣いている、なんて事がある。コメディと思って読んでいたら、笑って、泣ける、いい話だったんだな、と。

この作者、『ご愁傷さま二ノ宮くん』という『まぶらほ』のクローンみたいな萌え小説を書いているのだけど、こういう物も書けるんだなあとビックリ。『二ノ宮くん』でも感じたけど、短い文をリズム良くつないで、登場人物の頭の中で激しく思考が流れていく部分を書くのが上手い。『二ノ宮くん』が売れている間は仕方ないと思うけど、たまにはこういう良質な青春小説を書いてほしい、と思える作家ですね。

スポンサーサイト

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:空とタマ  鈴木大輔  

コメント

コメントの投稿

メールアドレスおよび名前の無い投稿はすべて掲載不許可となります。また明らかに偽のアドレスの場合も不許可です。

管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

2017-08

  • «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • »

検索



カテゴリー

月別アーカイブ

最近の記事

最近のコメント

連絡先

RSSフィード

忍者カウンター

 

 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。