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無力さと絶望と生きるということ 『薔薇のマリア』
薔薇のマリア2 壊れそうなきみを胸に抱いて(十文字 青)
薔薇のマリア3 荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐
平成のウィザードリィ小説『薔薇のマリア』に続く2巻と3巻。この2冊は話が繋がっているので、いっしょに購入することをお勧めします。
今回は地下迷宮がいっさい出てきません。地下迷宮の上層、リルガミンの街ならぬサンランド無統治王国首都エルデンを舞台に、クラン(侵入者たちの集まり。悪く言えばならず者の集まった組)同士の抗争が物語のメインです。
エルデンでは急成長を続ける史上最悪のクラン「SmC」(加虐的殺戮愛好会)と、第2位の勢力であり正義を守ることを是とする「秩序の番人」の間に緊張感が高まっていました。マリアローズは、秩序の番人に所属する少女ベアトリーチェと出会います。彼女がSmCへの手土産として龍州人のクランに誘拐された事をきっかけに、事態は2大クランの全面対決へと発展。マリアの属する「ZOO」や、マリアに恋するアジアンの「昼飯時」(ランチタイム)も争いの渦中に飛び込んでいきます。巨大な暴力と暴力が激突するなか、マリアとベアトリーチェはどんな生き方を選び取っていくのか。
作者によれば3巻までで一区切りらしく、確かにマリアローズの成長という点で一段階越えた感じがします。これ以上無いほどの無力感と絶望を味わいながら、なお前を向いて生きていく。自分で嫌になるほどのちょっとずつの進歩。わかりやすい答えはどこにもなく、ただ一歩一歩進むだけ。それを描く以外の王道は無いがゆえに、人は物語という形式を生み出して、物語を書き、物語を読むのでしょう。
今回、都市エルデンの様子が描かれ、『薔薇のマリア』の世界がぐっと広がっています。また死者の蘇生シーンのように、この世界の構造について、いくつかのヒントが明かされました。
かつてコンピュータゲームはすべからく仮想世界へのダイブとして、捉えられていました。まだ電脳世界という言葉が死語になっていなかった頃です。SF作家の矢野徹がコンピュータゲームにハマり、『ウィザードリィ日記』という名著を生み出しました。当時のゲームはテキストが少なく、「モンスター配備センター」のようなちょっとした言葉を世界の重要な断片として、誰もが想像をふくらませたのです。
コンピュータゲームはファンタジーであると同時に、SFでもありました。コンピュータゲーム=仮想世界への侵入という構造を、日本のプレイヤーに強烈に意識させ、その後の日本のゲームおよび周辺の物語に強い影響を与えたのは『ウィザードリィ』です。回りまわって『MATRIX』や『.hack』にも影響を与えたはずです。(参考:Wikipedia「ウィザードリィ」)
『薔薇のマリア』もまた、言葉の断片から色々と世界を想像できる、ファンタジーであり、SFである小説です。世界の全貌が明かされる日がくるのか。まあそこはプレイヤーの想像にゆだねられつつ、断片だけが提供されていくような気もしますが、コンピュータゲーム=ウィザードリィの伝統に則って。
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エルデンでは急成長を続ける史上最悪のクラン「SmC」(加虐的殺戮愛好会)と、第2位の勢力であり正義を守ることを是とする「秩序の番人」の間に緊張感が高まっていました。マリアローズは、秩序の番人に所属する少女ベアトリーチェと出会います。彼女がSmCへの手土産として龍州人のクランに誘拐された事をきっかけに、事態は2大クランの全面対決へと発展。マリアの属する「ZOO」や、マリアに恋するアジアンの「昼飯時」(ランチタイム)も争いの渦中に飛び込んでいきます。巨大な暴力と暴力が激突するなか、マリアとベアトリーチェはどんな生き方を選び取っていくのか。
作者によれば3巻までで一区切りらしく、確かにマリアローズの成長という点で一段階越えた感じがします。これ以上無いほどの無力感と絶望を味わいながら、なお前を向いて生きていく。自分で嫌になるほどのちょっとずつの進歩。わかりやすい答えはどこにもなく、ただ一歩一歩進むだけ。それを描く以外の王道は無いがゆえに、人は物語という形式を生み出して、物語を書き、物語を読むのでしょう。
「ごく一部の例外的な天才を除いて、人は一足飛びには進歩できぬ」
髭がマリアローズの頭の中を見透かしたようなことを言った。
もちろん、マリアローズは天才なんかではありえない。だったら、一歩一歩、少しずつ少しずつ進んでゆくしかないのだ。思えば、ZOOに加盟して仲間ができたことだって、マリアローズにとっては進歩だったはずだ。僕は決して止まったままでいるわけじゃない。変わっている。少しずつだけど、ちゃんと変わっている。それが小さな勇気になって、またちょっとだけ進むことができそうな気がする。
「でも、ホントにちょっとだ……」
自分の歩みの遅さに嫌気がさしながらも、少しだけ笑いがこぼれた。
今回、都市エルデンの様子が描かれ、『薔薇のマリア』の世界がぐっと広がっています。また死者の蘇生シーンのように、この世界の構造について、いくつかのヒントが明かされました。
かつてコンピュータゲームはすべからく仮想世界へのダイブとして、捉えられていました。まだ電脳世界という言葉が死語になっていなかった頃です。SF作家の矢野徹がコンピュータゲームにハマり、『ウィザードリィ日記』という名著を生み出しました。当時のゲームはテキストが少なく、「モンスター配備センター」のようなちょっとした言葉を世界の重要な断片として、誰もが想像をふくらませたのです。
コンピュータゲームはファンタジーであると同時に、SFでもありました。コンピュータゲーム=仮想世界への侵入という構造を、日本のプレイヤーに強烈に意識させ、その後の日本のゲームおよび周辺の物語に強い影響を与えたのは『ウィザードリィ』です。回りまわって『MATRIX』や『.hack』にも影響を与えたはずです。(参考:Wikipedia「ウィザードリィ」)
『薔薇のマリア』もまた、言葉の断片から色々と世界を想像できる、ファンタジーであり、SFである小説です。世界の全貌が明かされる日がくるのか。まあそこはプレイヤーの想像にゆだねられつつ、断片だけが提供されていくような気もしますが、コンピュータゲーム=ウィザードリィの伝統に則って。
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