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妄想を加速せよ 『カオスヘッド ノア』

大評判で売れ続けている『シュタインズゲート』と同じ科学シリーズの第1弾「妄想科学アドベンチャー」。『シュタインズゲート』がSF的な考察が濃密で、中盤以降の急展開で熱く盛り上がっていくドラマチックな作品とするなら、ホラーとミステリーのスパイスがたっぷり効いた妄想サスペンスで、全体的に陰的で、狂的な雰囲気に仕上がっている。
主人公の西條拓巳は、父親の経営するビルの屋上にあるコンテナを自室として半ば引きこもっているオタク少年。美少女ヒロインの星来のフィギュアを愛でながら、オンラインゲームでは最強の騎士ナイトハルトを操り、学校には卒業できる最低単位のために週2.5日しか通っていない。クラスメイトとの会話もほとんど無い。
渋谷において「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれる連続猟奇事件が発生する中、拓巳はネットのチャットで「将軍」と名乗る人物が提示したURLを踏んで、次の事件を示す猟奇画像を目にすることになる。翌日には、「将軍」の発言のとおりに事件の現場に遭遇する。事件に関係のある少女たちが拓巳の前に現れ始めて、少しずつ事件に巻き込まれていく。
死に様はどれもエグい。
エロではなく、バイオレンス(猟奇性表現)でCEROのZ指定になっただけあり、残酷表現はコンシューマーのノベルゲームとしては、まったく遠慮が無い。
若者5人のビルからの投身自殺、胎児を腹に埋め込まれていた男性、無数の十字架型の刃物で壁に貼り付けられていた男性、緑色に変色した状態でトイレで発見された男性、脳をえぐりだされたまま衰弱死した男性、上半身と下半身がパズルのように入れ替えられていた3人のDQN男性、自分の右手を食べていた女性など、事件のたびに猟奇的な死体が次々と出てくる。
ネット上の匿名掲示板@ちゃんねるでは、事件を面白がった書き込みが盛り上がり、ネタ画像が続々と作られ、渋谷の街では死体と共に見つかった『その目だれの目?』というダイイングメッセージが流行語になり、「その目だれの目?」Tシャツを着た若者が増えていく。
事件が、街が、人々が少しずつ狂気を増していき、拓巳の周囲は妄想と現実の境界が狂っていく。世界が妄想に侵食されていく過程はのめりこむような面白さがあり、プレイヤーは気がつけばやめどきを失っているはずだ。
妄想と現実、虚と実が混交する果てに、プレイヤーがたどり着く真実(結末)は、単純なハッピーエンドとは言いがたい。より良いラストを迎える上では、周回プレイが前提となる。Xbox360版で追加された個別ルートを経て、すべてのエンドを回収して、ようやく最後の『blue sky』に到達できる。
1つ大きな欠点を挙げるなら、複数回の周回プレイが必要な割りに、個別ルートをプレイするまでの手間がかなり面倒な事だ。個別ルートのフラグを立てるのが1章~3章で、実際に分岐するのが7~9章。そのくせ、既読スキップが非常に遅く、小1時間の個別ルートを遊ぶのに、1時間近い既読スキップが必要になる。精神的な疲労度はなかなかのものだ。
『シュタインズゲート』に比べると、好みが分かれるとは思うし、システムを含めて荒削りの部分もあるが、妄想トリガーでの分岐や、「妄想科学」な世界観など、本作独自の魅力も十分。『シュタインズゲート』に満足した人には本作のプレイもオススメしたい。ただしシステム面の重さだけは、かなり覚悟しておいてほしい。
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