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あなたの精神に最高の「眩暈」を 『紫色のクオリア』

この読後感には参った。
超高速のジェットコースターに乗った後のような、地に足がつかない、おぼつかない感覚がまだ残っている。まだ現実に帰ってきてないんじゃないだろうか。そんな馬鹿げた不安を感じるほど、「眩暈」をおぼえるような極上のSFだった。

この本を読んでしばらくは、現実感が希薄になってしまって、このままでは現実には帰ってこれないかな、という気がして、ネットを見るのもやめて、他の小説や漫画なんかをぱらぱら読みながら、少しずつ心を現実に慣らしていった。

紫色のクオリア (電撃文庫)

それほど高純度で高速なSFだった。
不意打ちを食らったのも事実。うえお久光の新作という点で、多少の警戒の気持ちはあった。しかしこの表紙、あの挿絵、あの紹介文で、この展開は無いだろう。いや、「何かある」という評判は知っていたのだけれども。

うえお久光のラノベ「紫色のクオリア」が大絶賛の嵐
ライトノベル読みの間では、すでに大絶賛が巻き起こっているようで、いや、ほんと、これを読み逃したら後悔すると思う。どこが凄いかを書くと、ネタバレになってしまうため、皆さん、感想に苦労しているように見える。

一方で矛盾したことをいえば、ネタバレごときでは、この凄さは伝わらないとも確信できる。ジェットコースターは乗らなきゃわからないのと一緒だ。これは乗るべき。早く乗るべき。

が、それでは書評にならないので、さしあたり無い部分として、公式の紹介文を引用してみよう。
自分以外の人間が“ロボット”に見えるという紫色の瞳を持った中学生・毬井ゆかり。クラスでは天然系(?)少女としてマスコット的扱いを受けるゆかりだが、しかし彼女の周囲では、確かに奇妙な出来事が起こっている…ような?
(略)
うえお久光の紡ぐ、”少し不思議な日常系ストーリー、登場!!

この小説は、2話+エピローグから構成されている。
第1話は『電撃magazine 11月号増刊』に掲載された100ページほどの短編で、自分以外の人間が”ロボット”に見える少女・毬井ゆかりを彼女の友人・波濤マナブの視点でえがいた物語である。

自分以外の人間がすべてロボットに見えるという設定は、ユーモアでもあるが、同時にひどくグロテスクである。その奇怪さが途中までまったくそう感じられない、いかにもほのぼの日常系として読めてしまうのは、うえお久光の筆力の賜物だろう。

SFはその性質上、未来を描くことが多いが、それはつまりグロテスクを描くという事だ。
未来はグロテスク。20年前から現在を見れば、電車の中で誰もが携帯電話を手にしている我々の生活は、いかにも閉鎖的で、個人主義的で、不気味に思えるかもしれない。連続している時間の流れに身を置いているから違和感を感じないだけで、10年、20年程度でも、切り取って持ってくれば、何気ない生活風景でさえ異様なものに感じられたりする。

優れたSF作品はしばしば、我々が想像と理解のできる、しかし感覚として異様に感じる未来像(別の世界像、宇宙像)を提示してみせる。この小説(第1話)も例外ではない。

しかし第2話では、それ以上の体験が待っている。波濤マナブを主人公にした中編では、優れたSFが備えるもう1つの感覚「眩暈」を、極上のレベルで体験させてくれる。
 警告しよう。
 --ここから、物語は急転する。

ご丁寧に途中でそんな警告まで付いている。
危険な乗り物に注意書きがついて回るように。
読み終わった後の余韻は格別。
自分が透明になっていくような、地に足ついてない心地に陥るはずだ。
あなたの精神に最高の「眩暈」を。
この夏、1冊読むなら、この本以外はあり得ない。


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コメント

久しぶりの投稿になります。
そしてひさびさのDAKINIさんのラノベ書評!
DAKINIさんのお導きでラノベを読み始めた僕としては、これはもう読むしか!

と勢い込んで読了しました。
確かにくらくらする読後感でした。

第一章は文句の付け所がありません
紫のロボ認知、萌え(?)ますね。
しかもその認知があんなことになるとは。

ただ、個人的に(茂〇さんが胡散臭いせいでw)あのネタが出てきて
ちょっと引いてしまったところに、生煮えの物理学用語が出てきて
くらくら感を存分に味わうことができなかったのが残念でした。

谷川流さんの一連の著作ならぜんぜん大丈夫なのに、なぜこちらだと
引っかかるのか…
作者が物理学用語を駆使してこちらを説得にかかるほど、いやそれは
(多分)解釈がおかしいから!となってしまう。
もうちょっと適当なところで煙に巻いてくれたほうが僕にとっては
素直に楽しめるのに、と。

自分がフィクションに求めるリアリティレベルについて考えるきっかけともなり
そういう意味でも面白い読書体験でした。

#一応ネタばれには注意して書いたつもりですが、もし問題があるようでしたら
#掲載不許可でお願いいたします。

夏の推薦図書。
一気に読み切りました!!

特に後半一気に進みましたが、
あまりにスピードが速すぎて、
ちょっとクラクラしちゃいましたけどね。

>T_U さん
作者の科学知識の不足が出た感じですね。

「マナブ」の限界も、科学的な根拠ではなくて、倫理的・哲学的な根拠で説明してましたね。そういう意味では、最後にきちんと「着地」させるエンタメではありました。


>DUO さん
うえお久光は、良くも悪くも、くせ者型の作家ですよね。
作品の出来にムラがあるのがいち読者としては歯がゆいです(笑

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