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超法規的検閲と戦え図書館! 正義の味方にあこがれる乙女の 『図書館戦争』
図書館戦争(有川 浩)

有川浩といえば、自衛隊スキーとして知られる小説家である。デビュー作『塩の街』に始まり、『空の中』『海の底』と続けざまに自衛隊を登場させ続けた。しかも毎回、やたらとカッコいい。たとえば『空の中』は怪獣映画的なSF小説であり、少年がワンダーに触れるファーストコンタクト物であるが、怪獣映画的なのに、自衛隊はただのやられ役=雑魚キャラではない。
有川浩の小説には、自衛隊への愛がみなぎっている。もし彼女がコバルト文庫でデビューしていたなら、日本初の自衛隊内恋愛小説を書き上げていたやもしれぬ。それほどまでに、乙女チックに、純真に、朴訥に、直球に、自衛隊への愛が書き貫かれているのである。
自衛隊というと、僕はつい、大好きな作家である浅田次郎を思い浮かべる。だが有川浩の描く自衛隊は、そういう漢の視点とは違う。彼女の手にかかれば、自衛隊員はまるで弱い乙女を救いに現れる白馬の騎士のようだ。正義の味方と言い換えてもいい。また彼女は、女性隊員を登場させることが多い。安直な理解をすれば、ある種の「分身」なのだろう。安直だ。いや、しかし、その、なんだ、本当にそういう安直な理解で正しいのかもしれない、とも思う。
さて、この『図書館戦争』は珍しく、奇跡的にも、自衛隊が登場しない小説である。しかし騙されてはいけない! この本こそ、有川浩の自衛隊ラブが究極的に結実した乙女チック軍隊小説なのである。
公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として、『メディア良化法』が成立した時代。超法規的検閲に対抗するため、図書館は『図書館法第四章』を成立させた。図書館の自由を掲げ、検閲を退けて、あらゆるメディア作品を自由に収集し、市民に提供する。対立するメディア良化委員会と図書館の抗争は、過激化の一途をたどった。図書館は武装化した警備隊「図書隊」を結成。両法の成立から30年、検閲対図書館の衝突は今なお継続中である……。
なにしろ志望動機からして、乙女チックなのだ。高校三年のとき、検閲の魔の手から、若い図書隊員に助けてもらった。そのかっこよさと凛々しさにしびれて、あこがれて、自分も図書隊に入って、本を守る正義を貫こうと決意したのだ。しかも採用試験の面接で想いを熱く語るのである。あまりの恥ずかしい話に、面接官たちは爆笑したが、結局彼女は採用された。
何ともまっすぐな娘である。新隊員の訓練中にも、鬼教官に目をつけられ、1人だけ集中的にしごかれる毎日。でもめげない。目標は憧れの「王子様」である。むかつく鬼教官なんて知るものか。王子様のような、立派な図書隊員をめざして、一直線。
郁の言動たるや、つくづく熱血少女漫画の世界を地で行っている。これが高校や大学のバレー部なら、いったい何十年前の青春乙女ストーリーだよ、と突っ込みたくなるほどである。それを軍隊でやってしまう所が、さすが有川浩。これだけ熱くて、燃えて、甘くて、こっ恥ずかしい本を書ける作家は、日本広しといえども、この人だけだ。

有川浩といえば、自衛隊スキーとして知られる小説家である。デビュー作『塩の街』に始まり、『空の中』『海の底』と続けざまに自衛隊を登場させ続けた。しかも毎回、やたらとカッコいい。たとえば『空の中』は怪獣映画的なSF小説であり、少年がワンダーに触れるファーストコンタクト物であるが、怪獣映画的なのに、自衛隊はただのやられ役=雑魚キャラではない。
有川浩の小説には、自衛隊への愛がみなぎっている。もし彼女がコバルト文庫でデビューしていたなら、日本初の自衛隊内恋愛小説を書き上げていたやもしれぬ。それほどまでに、乙女チックに、純真に、朴訥に、直球に、自衛隊への愛が書き貫かれているのである。
自衛隊というと、僕はつい、大好きな作家である浅田次郎を思い浮かべる。だが有川浩の描く自衛隊は、そういう漢の視点とは違う。彼女の手にかかれば、自衛隊員はまるで弱い乙女を救いに現れる白馬の騎士のようだ。正義の味方と言い換えてもいい。また彼女は、女性隊員を登場させることが多い。安直な理解をすれば、ある種の「分身」なのだろう。安直だ。いや、しかし、その、なんだ、本当にそういう安直な理解で正しいのかもしれない、とも思う。
さて、この『図書館戦争』は珍しく、奇跡的にも、自衛隊が登場しない小説である。しかし騙されてはいけない! この本こそ、有川浩の自衛隊ラブが究極的に結実した乙女チック軍隊小説なのである。
公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として、『メディア良化法』が成立した時代。超法規的検閲に対抗するため、図書館は『図書館法第四章』を成立させた。図書館の自由を掲げ、検閲を退けて、あらゆるメディア作品を自由に収集し、市民に提供する。対立するメディア良化委員会と図書館の抗争は、過激化の一途をたどった。図書館は武装化した警備隊「図書隊」を結成。両法の成立から30年、検閲対図書館の衝突は今なお継続中である……。
念願の図書館に採用されて、私は今、毎日軍事訓練に励んでいます笠原郁は図書隊の防衛員を志望している、新人女性隊員である。3人の兄に揉まれて育った、元気いっぱい、根性底なし、熱血紅蓮の山ザル娘。でもたまに、驚くほど涙もろい。
なにしろ志望動機からして、乙女チックなのだ。高校三年のとき、検閲の魔の手から、若い図書隊員に助けてもらった。そのかっこよさと凛々しさにしびれて、あこがれて、自分も図書隊に入って、本を守る正義を貫こうと決意したのだ。しかも採用試験の面接で想いを熱く語るのである。あまりの恥ずかしい話に、面接官たちは爆笑したが、結局彼女は採用された。
何ともまっすぐな娘である。新隊員の訓練中にも、鬼教官に目をつけられ、1人だけ集中的にしごかれる毎日。でもめげない。目標は憧れの「王子様」である。むかつく鬼教官なんて知るものか。王子様のような、立派な図書隊員をめざして、一直線。
郁の言動たるや、つくづく熱血少女漫画の世界を地で行っている。これが高校や大学のバレー部なら、いったい何十年前の青春乙女ストーリーだよ、と突っ込みたくなるほどである。それを軍隊でやってしまう所が、さすが有川浩。これだけ熱くて、燃えて、甘くて、こっ恥ずかしい本を書ける作家は、日本広しといえども、この人だけだ。
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手に取る機会を得、人生がかなり楽しくなりました。
『銀盤カレイドスコープ』『狼と香辛料』などなど・・・。
そして今回の『図書館戦争』!トンデモな世界観に大上段な熱さ。
でもやっていることはラブ。
ものすごくつぼにはまりました。
萌えは市場にあふれんばかりにありますけれど、ちゃんとした燃えが
ある物語は案外希少だと常々飢えに苛まれておりましたので、
本当に助かりました。ありがとうございました。
や、ちゃんとした(?)燃え、なんて書きましたけれど、単に僕の嗜好
に当てはまる作品が少ないだけかもしれませんが。
それでも主人公ハーレム状態の萌え小説の類にはどうしてものめりこめない
ものを感じてしまいますので。おっさんくさ、と思わないでもなのですが・・・。
僕がちゃんと燃えを感じるためにはどうもある程度のスケール感というか、
大上段に振りかぶったところが必要なようです。
典型的には小川一水さんの『復活の地』に見られるような。