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大人のドラマが読みたいあなたに 『ドラグネット・ミラージュ』

ドラグネット・ミラージュ賀東 招二
ドラグネット・ミラージュ 2 10万ドルの恋人

本当に書きたいものを書いた作品

今回はちょっと文体を変えてみる。
プロとして長く続けるには、好きなことで飯を食えて、それが自分に向いているという2つの幸運が必要。でもそうやってプロを続けていても、プロには好きなものを書けないというジレンマがつきまとう。

大抵の場合、自分が本当に書きたいものと、仕事で書いているものと、売れているものには大なり小なり隔たりがある。小説でも、ゲームでもそう。自分と周囲を省みてもそう思う。自分の会社を見回して、この3つが完全に一致しているように見える人はほとんどいない。この、なかなか一致しない、ままならないものを、一致させるべく努力を継続し、試行錯誤するのが人生における戦略なんだろう。(最近の梅田望夫さんの記事とも関係するかな?)

賀東招二という作家の代表作は『フルメタルパニック』。本物の戦場で生き残ってきた傭兵の少年が日本の高校にやってきて、とある女子生徒を護衛する話。いかにもライトノベルっぽい無茶な設定だ。随所にミリタリーマニアな嗜好や、ハードアクションへの愛着が見られるものの、若者向けのライトノベルとして、かなり抑制されている。

しかし売れている作品を書き続けていると、それなりに溜まるものがあるんだろう。もっと尖がったものを書きたくなる。そうして、思う存分、趣味に走ったのがこの『ドラグネット・ミラージュ』。

1巻では「原案:賀東招二、著者:きぬたさとし」となっていたけど、正体バレバレ。素直に開き直って、2巻では「著者:賀東招二」となっている。『フルメタルパニック』を完結させるまで他のシリーズを書かないと公約してたせいだが、そこまでして書きたかったのか! ならば期待するなという方が無理というものだ。


大人のドラマが好きなあなたに

西太平洋上に未知の超空間ゲートが出現した。妖精や魔物のすむ異世界「レト・セマーニ」につながり、そこには地球と同じように人間が住んでいた。両世界の人類は何度か争いを起こしながらも、平和的な交流を模索している。

舞台となるサンテレサ市は、超空間ゲートを目の前にした玄関港である。200万人を越える両世界の移民が居住し、日々異なる文化の衝突が起こっている。セマーニの魔法の品々と地球の兵器や薬物が裏取引され、これまで無かった形の犯罪も生まれている。サンテレサ市警察は、世界で最も新しい都市の治安をおびやかす特殊な犯罪に立ち向かっている。

主人公は敏腕刑事のケイ・マトバ。4年間組んでいた相棒が殺された「妖精」がらみの事件を追っているが、同じく妖精を追ってきた異世界の騎士との共同捜査を命じられる。相手はなんと若い少女騎士ティラナ。二人の第一印象は最悪だった。

よくわからない騎士としての誇りをもち、猪突猛進で、何かにつけすぐに剣を振り回すティラナが、マトバには足手まといに思えて仕方ない。一方、ティラナも礼儀しらずのマトバが気に入らないし、妖精をペットとしか思ってない警察の姿勢にも不満を抱く。

相棒の死。考え方や文化の合わない無鉄砲な若者とのペア。なかなか進展しない捜査。対立する二人。お互いの意外な面を知る機会。意外な視点の提示。見えてくる糸口。……海外刑事ドラマのような展開が続く。

しかし典型だからといって、飽きることはない。異世界と地球の人間が混じったサンテレサ市の状況は、現代都市には見られないハードなリアリティが満ちている。人々はしたたかで、悪賢く、過去にこだわり、変化に溺れ、憎悪を抱きつづけ、愛嬌があり、ユーモアをもち、しぶとく生きている。

何より作者の愛情が全編にわたって満ち満ちていて、本当に楽しんで書いているな、と伝わってくる。それは小説にとっても、読者にとっても幸福なことだ。

海外刑事ドラマが好きな人には間違いなく薦められる。才能をもった少年少女が強運や閃きで困難を克服する、清く正しいライトノベルに飽きた人にも、強くプッシュしよう。ゲームでいえば、小島秀夫氏の『ポリスノーツ』や『メタルギア』が好きな人にもぜひ読んでほしい!

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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:賀東招二  ゼータ文庫  ドラグネット・ミラージュ  

コメント

このシリーズは海外ドラマが好きな人にはけっこうツボにくるんじゃないでしょうか。海外ハードボイルド小説なんかにはちょっと手を出せない、といった方にもまずはここからお勧めしてもいいかも。

や、それにしても自分でもちょっとマイナーかな?とか思っているゼータ文庫なので(実際発刊数もまだそれほどではないし)、こうして同じ本を読んでいる方を見つけるとちょっとうれしくなったり。
私はファンタジー…というかライトノベルにもこういうハードボイルド物がもうちょっと増えてもいいんじゃないか思っているんですが。(ライトノベル初期の頃にはポツポツとあった気もするんですが…川崎康宏さんの「銃と魔法」とか)

なんだか最近の学園異能力物(面白いものもきちんとあるのですが)ばっかりっていうのも、ちょっと食傷気味になってきてるんですよね。
で、そういう時にこういうものを読むと、変な言い方ですが心がスッキリするというかなんだかなごむんですよ。

ちなみに私が一番気に入ったのは2巻の巻末おまけのオーディオコメンタリー(笑。
いやもうメチャクチャ雰囲気でてますって、あそこ。

> 最近の学園異能力物ばっかり
電撃はちょっと偏ってきてる印象はありますよね。
ゼータ文庫は割りと質が高いですよね。硬派なイメージは確立してると思いました。
スーパーダッシュの『黄色い花の紅』、GA文庫の『シャギードッグ』もなかなか。

> 2巻の巻末おまけのオーディオコメンタリー(笑。
ボクも作者の遊びが毎回楽しみです(笑

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