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凡人の幸せと超人の幸せ 『とらドラ・スピンオフ! 幸福の桜色トルネード』

とらドラ・スピンオフ! 幸福の桜色トルネード竹宮ゆゆこ

『とらドラ』シリーズの外伝だが、本編を知らなくても読めるので、気にせず買って読んでほしい。登場人物は一部かぶっているが、特に問題は無い。電撃hpに掲載された3編と書き下ろし1編が収録されている。ボクは全部読んでいたが、今回読み返してみて、あらためて面白いと感じた。超人と凡人の、対照的な狩野姉妹が。

名前に反して生まれつき不幸体質の幸太は、入学早々、盲腸で入院し、最初の1ヶ月を棒に振った。授業についていくのは大変だったし、退院してみれば、クラスメイトはそれぞれグループを作っていて馴染めない。ホントに不幸なやつだ。

そんなアンハッピー野郎がさらに大きな地雷を踏みつけた。
偶然出会ったスーパーおバカっ娘の狩野さくらに勉強を教えなければならなくなったのだ。全教科追試を無事クリアさせなければ、とんでもない罰が待っている……。何故ならその娘は、スポーツも勉強も万能で、人望も器量もあふれる生徒会長、我らが兄貴・狩野すみれの妹だったから。すみれに脅迫され、不幸男は仕方なくさくらに勉強を教え始める。

しかし相手は、全教科追試という快挙を成し遂げた天然おバカ娘である。生半可な事ではなかった。放課後の生徒会室で、「うぅん……う、んん……」「ああ……あ、あぁ……っ……そこっ! そこは……っ!」「そ、そこはだめ、だぁぁ……あーっ! か、狩野、さん……っ!」「だめなのぉ!? いやっ、いやあ! 富家くん、ここっ! ここぉぉーっ! ……はぁんっ!」とムンムン勉強し、追試前日には狩野家にお泊りで勉強する。しかしなかなかはかどらない。

なにしろ、学力の差がとんでもない。すみれや幸太と同じ学校に入れたのが奇跡のようなもの。本来、もっと身の丈にあった学校に行くべきなのだ。しかしさくらには、どうしてもすみれと同じ学校に通いたい理由があった。その気持ちを知った幸太は、本当に心の底から、さくらを救ってやりたくなる。

そうやって勉強を教え、教えられた2人がどうなるか、なーんてことは古今東西、たった1つに決まっている。幸福の桜色トルネードが吹き荒れるのだ。

幸太とさくら、2人の関係は微笑ましい。傍で見ていて突っ込みたくなるぐらい、ヤキモキさせられることもあるが、お互い、身の丈にあった恋愛をしている。不幸体質の男と天然ドジっ娘、行く道は果てしなくデコボコかもしれないけど、ずっと一緒に歩いていけそうな組み合わせじゃないか。

一方、姉のすみれは対照的だ。すみれは超人的な頭脳と圧倒的なカリスマ性を備えた、完璧超人のラオウの超サイヤ人なのだ。妹のさくらいわく、
「ここまで出来が違うってことはね、大人になってから、ものすごく遠く、完全に、道が分かたれるってことなんだよ。あそこまで出来る人は、こんな狭い日本になんか留まってないよ。どんどん外国に行くだろうし、世界もどんどん広がるだろうし、……そうすることを求められるだろうし、凡人の私からは何万キロも、何百万キロも離れたところで、『みんなの狩野すみれ』になるんだよ。……そのために、ああいう人は、生まれてくるんだよ」
すみれは人並みの恋は叶わないし、すみれに恋した男も同じことになる。frontierへ向かって突き進んでいくすみれと、彼女への想いを表に出せない北村。その行く末は『スピンオフ』の中では語られないが、読まずともわかることではあるのだ。あまりに突出した人間は、望むと望まざるとに関わらず、周囲の人間を次々と置き去りにしていく。自分で口にした言葉のとおり、「運命のままに」。

凡人の幸せと超人の幸せ。
どちらが良い、とはいえない。人は凡人になることも、超人になることも、自分では選択できないのだから。

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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

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