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作ることを仕事にする地獄 『アニメがお仕事!』

この物語はフィクションです。
アニメーションのHow-to漫画では決してありません。
この注意書きの「決して」がとても重い。この漫画は商業作品を作る上での葛藤を、真っ正直に描いている。真っ正直にというのは、酸いも甘いも両方しっかり冷静に描くという事だ。

やわらかい絵柄とは対照的に、シリアスな現実を暴き出しているが、かといって業界暴露話にありがちな、愚痴的な視点・冷めた視点には陥っていない。作り上げることの達成感も丹念に描いている。丹念? 冷静であり、執拗である。鬼気迫る執念さえ感じることがある。ビビる。4巻最後の志村の台詞「女 怖ぇ」は読者の呟きでもあるのだ。

好きな物を仕事にするな、とよく言われる。好きなもので食っていくには、嫌な一面も突きつけられる。とりわけ集団で作品を作っていれば、思い通りにいかない事が99%だったりもする。アニメでもゲームでも変わりはない。

しかもそれで飯を食う以上、どこにも逃げ場は無い。消費する側なら、嫌なものから目を逸らす事もできるし、ネットで適当に叩く事もできる。だがプロであれば、逃げれば、ただのニートである。

しかしユーザーからの批判などは可愛いものだ。
本当に恐ろしいのは、自意識とプライドと実力の葛藤である。働いて2、3年もすれば、なっていたはずの自分と現在の自分の隔たりをイヤでも感じ始める。業界で生き残ってるかどうかは、折り合いをつけられるかどうかに掛かっていると言ってもいい。

現実はフィクションではないから、きれいに折り合いをつけられない。折り目はどこかしら歪むし、視界は偏るし、妙なプライドも出てくるものだ。「ゲームへの愛」という鎧で心を守ることもあるし、家族を食わせなければならないという義務感に支えられることもある。

この作品では、主人公もその罠にかかる。
人間的に気に入らない人間が自分より実力が高い、なんて事はザラにある。下積みをしていると、今やってることが将来の目標につながっているとも思えない。焦る。焦れば、さらに焦る。焦ってドツボにハマって動けなくなる。描かなければ、でも描けない。何も描けない自分にウンザリする。でも描こうとする。けど描けない。1度ハマれば、その堂々巡りは無間地獄にも似ている。

「好き」という気持ちがあればあるほど、より深い地獄に突き落とされる。奈落の底で苦しみぬいた末(アニメータを辞めて)解脱する人は多いだろう。這い上がる人にしても、きっかけは人それぞれだ。

しかし這い上がっても、また別の地獄が待っている。
ではどうして、作ることで飯を食っていこうとするのか? 情熱ぅ? アニメへの愛? ゲームへの愛? ブログなどを見ると、たまにそうした事が書かれていることもある。しかし所詮、虚構にすぎない。自分のプライドと心を守るための「鎧」にすぎないのだ。

石田敦子は間違いなく、そんな男のみっともない鎧に完璧に気づいている。その冷静な視線が怖い。女って怖ぇ。ただ、それを引っぺがしに掛かるほど残酷ではない。優しさ……なのか? けれどもその鎧さえ脱がしてしまえば、さすがに読者が付いてこられないだろう。娯楽性は喪失し、カタルシスも何もない。そのしたたかな計算があるのではないか。女って怖ぇ。

アニメがお仕事! 石田 敦子
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テーマ:マンガ - ジャンル:アニメ・コミック

タグ:石田敦子  アニメがお仕事!  

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