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若造にはオススメできない 『孤独のグルメ』

孤独のグルメ(原作・久住 昌之、作画・谷口ジロー)

一般に会社勤めの人間の何が困るかといえば、毎日の飯である。皆さんも悩んではいないだろうか。近所の弁当屋、コンビニ弁当、定食屋、出前、社員食堂、自炊弁当。狭い選択肢の中から、選ばなければならない。

たまに違うものを食いたくなると、時間をかけて会社から離れた所に行くこともあるが、貴重な昼休みに毎日遠出するのも大変である。手間をかけたくないが、同じような飯では気が滅入る。

出張でもあれば、見知らぬ店にふっと入りたくなる。しかし初めての店に足を踏み入れるには、ちょっとした勇気が要るものだ。当たりかはずれか、自分を勘を信じて選ぶ運試しである。そして普段と異なる雰囲気の中に入っていく時は、ちょっとした緊張感がつきまとう。この本はそういう緊張感を知っている、大人だけが楽しめるグルメ漫画である。若造にはオススメできない。

この漫画には高級料亭やレストランは出てこない。主人公の井之頭五郎は、どこにでもあるような街角の定食屋やラーメン屋で食べる。ふと訪れた店は店主というヌシがいて、「いつもの常連客」でごった返している。店ごとに独特の雰囲気ができている。そこに入る。常連客が店の住人であるとするなら、五郎のような一見の客こそまさに真の客である。

この本の主題は味ではない。『美味しんぼ』のように「食」文化などという、ご大層な看板も掲げない。描かれているのは、店主と常連客と料理で構成される「食堂」という場である。

始めから終わりまで五郎はひたすら呟き続け、モノローグで考え続ける。細やかに描かれた、食堂で食べる人々の様子と相まって、この漫画独特の雰囲気を作り上げている。
「ぶた肉いためとライスください」
「はい」
 俺はできるだけ物おじせずハッキリという。注文を聞き返されるのはやっかいだ。
「あとおしんこ」
「おしんこ、何?」
「何があるんですか?」
「えーとナスとキュウリとハクサイと……」
「ナスください」
 こういう店のおしんこってのはきっと自家製なんだろうな。
「ハ~イ。ぶた肉いためとライス」
「あ……あとスイマセン、とん汁ひとつ」
 注文をしてしまうと少し気が楽になり、店内を見回すゆとりがでてきた。
 しかし……みんな帽子を被っているのはなぜだろう?
 でもある種の美意識が感じられる……。
 うーん……ぶた肉ととん汁でぶたがダブってしまった。なるほど……この店はとん汁とライスで十分なんだな。
「ウン。うまい」
 このおしんこは正解だった。浸かりぐあいもちょうど良い。ぶたづくしの中ですっごく爽やかな存在だ。
 まるで小学校の土曜日に家で食べるお昼のようだ。
 なんだかあったかくていい店じゃないか。
 しかし結局この店の中で食う客ってのは、ほとんど飯より酒の客なんだな。
 ああ、くそっ、腹が減ってきた。まだ飯食ってないんだよ、俺。じゃあ、コンビニ行ってきます。

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テーマ:感想 - ジャンル:アニメ・コミック

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