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機械化少女たちの2つの物語 『オイレンシュピーゲル』と『スプライトシュピーゲル』

オイレンシュピーゲル冲方 丁

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スプライトシュピーゲル(冲方 丁)

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親に、社会に、大きな悪意に殺されかけた少女が機械の身体を得て、自分を取り戻していく物語。表紙はお気楽なライトノベルに見えるかもしれませんが、『マルドゥック・スクランブル』と同じような方向性の小説です。

超少子高齢化による人材不足を解決するため、児童福祉法の改定により、十一歳以上の児童に労働の権利を与え、肉体に障害をもつ児童を無償で機械化する政策が発表されました。そして最優秀の機械化児童には<特殊転送式強襲機甲義肢>――通称<特甲>を与え、増大する凶悪犯罪やテロに対抗させ始めたのです。

2つの小説は共に、特甲児童たちの物語をつづっています。『スプライトシュピーゲル』では羽をもった3人の特甲少女、鳳(アゲハ)、乙(ツバメ)、雛(ヒビナ)が描かれ、『オイレンシュピーゲル』では黒犬(涼月)、赤犬(陽炎)、白犬(夕霧)と呼ばれる3人の特甲少女が描かれます。近しい場所で、お互いを知ることなく戦い続ける2つの少女たち。2つの物語はいずれ交わっていくのでしょう。
「あの子のあれが意志なもんですか」
 マリア――溜め息まじり/立ちこめる紫煙。
「この街で生き延びるための本能よ。あの子はね、七歳のときに両親から逃げて、家から二キロ先の病院まで腐った手足で這って行ったの」
親によって、社会によって、悪意によって、傷けられ、存在を否定された少女たちが生き残って、しなやかに強くなっていきます。過去の傷に怯え、震え、お互いに肩を寄せ合って。

少年ではなく、少女こそが生き残るために足掻く者として描かれる。少女は社会からの無意識の迫害や重圧を受け得る。そういうリアリティがいまだ、生き残っているのでしょう。少年という存在にはその種のリアリティはありません。勝手に内向的に生きて、ナイーブな自分の殻を後生大事に守るだけです。社会からの迫害も重圧も軽微で、父権との葛藤もなく、いまや社会における生き残り戦を戦う主人公として、リアリティを持ちにくくなっています。

『マルドゥック・スクランブル』と似た部分はありますが、ライトノベルとしては2つのシュピーゲルの方がよくまとまっています。ただ「まとまっている」というのは、破綻が無いということで、ある種の激しさが欠落していることなのかもしれません。いい悪いではなく。

小説としてまとまっているこの2作品には、したがってきちんと敵も用意されています。世界中のテロリストに武器を供給する組織の人間リヒャルト・トラクル。様々な人間に戦争をする理由を提供する男。子どもたちは、この悪意の体現者と対峙していくのです。

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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:冲方丁  オイレンシュピーゲル  スプライトシュピーゲル  

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