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ゲーム業界人の感覚で、勝手に補足しときますと。

率直にいって、欲しい結果を求めてアンケートを取って分析しているような印象も受けるのですが、最初の記事に比べて書き方が注意深くなっている点は好印象ですね。

なにしろ、最初の記事では「日本国内における据え置きゲーム機&ネット家電としては異例のネット接続率になっている」と、PS3やXBOX360の接続率を無視した認識を恥ずかしげもなく露呈しておられましたから。2番目の記事では「ハイスペックPCのような性格のゲームマシンと違って」と、留保つきの評価をおこなっています。

これがゲーム業界人のブログであれば、色々と突っ込みたいところです。が、デジタル家電の人=ゲーム業界の門外漢のブログでは、「明確な嘘」が書いてなければ、それだけで十分立派だと思います。自分の所属とは異なる業界について、嘘の無い記事を書くのは、それだけ難しいことです。

ちなみにネット上のアンケートによる接続率調査がどれぐらい当てになるかというと、例えば下記のWatch読者へのアンケートとgooリサーチを比べただけでも、全然結果が異なっています。
Impress Watch Opinion
Watch読者とgooリサーチでかなりの違いがあらわれたのは、家庭用ゲーム機をオンライン状態で使っているかどうかだ。とくに「プレイステーション 3」では常時接続が約65%、「Wii」では約55%、「Xbox 360」では約64%だ。そしてこの3機種については、まったく接続せずに使っている人はかなりの少数派だった。一方gooリサーチでは常時接続で使っている人が、「プレイステーション 3」で6%弱、「Wii」で24%弱、「Xbox 360」で約14%だった。
アンケートで出てきた数値は、かなりいい加減なものでしょう。wa-renさんもその辺りのバイアスは織り込んだ上で、「実質は接続率約15%といったところだろう」と推測されています。その数値は普通のデジタル家電と比べれば、すさまじく高いらしいです。なるほど。

ただ、ゲーム業界の人間として、勝手に補足させていただくなら、次世代ゲーム機の感覚からいえば、15%という接続率は「非常に低い」です。(もっともその数値はwa-renさんが推測したもので、根拠が薄いのですが)

各社が数字を公表していない以上、正確な比較は当然できません。ただ、XBOX360の接続率については、タレコミを複数いただいていて、まぁ伝聞レベルの話をここで明かそうとは思いませんが、次世代ゲーム機であれば「過半数」は取らなければ、高いという形容詞は使えないでしょうね。というか、低いと言われかねません。

というのは、ゲーム会社にとってはネット接続率が100%に近いプラットフォームが2つあるからです。もちろん「PC」と「携帯電話」です。ソフトメーカーはオンラインゲームを据置ゲーム機に供給する必要性は、必ずしも無いのです。例えば、コーエーの松原氏は1年前と打って変わり、コンシューマーでのオンライン展開に消極的な姿勢に転じました。(Game Watch「コーエー執行役員 松原健二氏特別インタビュー(前編)」

プラットフォームホルダーにとって、ゲームが動く生活必需品との競争は避けがたいため、おのずとデジタル家電とは異なる水準が求められるのです。デジタル家電の世界の感覚はwa-renさんの記事に書かれてますから、ボクはゲームの世界の感覚を書かせていただきました。次世代ゲーム機メーカー3社が接続率の上昇をめざして、それぞれのやり方で切磋琢磨することを期待します。

補足
ちなみにこの「ネット接続率」の話題を取り上げている理由は、実売集計と違って第3者機関による集計が行われておらず、各社が数字を公表していないため、影響力のあるブログの(根拠の薄い)推測があたかも真実であるかのように広がる危険性があるからです。再三、各社が数字を発表してないから、本当の所はわからない、と書いているのはそのためです。根拠の薄い所に、仮説、仮説が積み重ねられ、実態と異なるイメージが広がってしまうのは、ゲーム業界にとって大きなマイナスだと考えます。
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悪漢小説の書き手が送る 『世界の中心、針山さん』

世界の中心、針山さん成田 良悟

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世界の中心、針山さん 2

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奇人変人悪人超人大集合!!
斧男という都市伝説、ヤクザに拾われた魔法少女、突如として悪を討つ使命に目覚めた光の勇者、数奇な運命に導かれた彼らは、どういうわけか、所沢に住むごくごく平凡で人の好い針山さんの周りに集まってしまうのでした。(1巻)

タクシー強盗の都市伝説、悪の組織に改造され続けて最強になってしまった戦闘員、善悪の見境のつかない死霊術士と殺し屋、正義の味方の変身ヒーロー、彼らもまた、奇妙な運命にひかれるままに、針山さん一家の周りに集まってくるのでした。(2巻)

■個性的な悪党ばかりがそろっている

成田良悟ほど悪党を書くのが大好きなライトノベル作家は他にいないでしょう。作品には、実に多数の悪党、悪漢が登場します。顔を背けたくなるような外道もいれば、ただただ奔放に生きる悪漢もいれば、自由人としての小悪党もいれば、いつのまにか正義からこぼれ落ちてしまった悪党もいますし、大人には残酷なのに子供にだけは優しい悪者もいます。

彼らは実に個性的で、奔放で、魅力的です。どの作品も、ひとクセも、ふたクセもある連中が集まった、面白い悪漢小説に仕上がっているのです。というのは、どれだけ多数の悪が書かれようとも、嫌悪感を抱かせるようなヤツはほとんど出てこないからです。

本当の下種、外道は当然その報いを受けるのです。悪の美学というと、やや語弊がありますが、悪党にもやっていいこと、悪いことはあるのですね。この世に正義を体現する存在はいませんが、下種な輩に一発ガツンとお見舞いする、気持ちのいい悪党はどこかにいるものです。

■悪党にも悪党なりの筋の通し方がある

成田作品に登場する子供はしばしば、身の丈を越えた力をもった結果、ねじくれた生き方をしています。中には、善と悪の区別をもたずに、ひたすら残酷な仕打ちを続けていた子供もいます。

しかし彼ら、無知ゆえの無邪気ゆえの悪は、大抵はもっと力のある「大人の悪党」と出会って、ガツンとやられたり、優しくされたりするうちに、自分の過ちに気づくのですね。とてつもなく恐ろしい目に遭うことも多々ありますが、そういう子供が無慈悲になんの意味も無く、物語から抹消されたりはしないのです。

悪党なりに生き様があり、論理があり、美学があります。悪を悪と理解しない悪党はかっこよくないのです。だから成田作品には、じつにかっこいい悪党が多いのですね。

■成田良悟ワールドの最初の一冊として

代表作はアニメ化が発表された『バッカーノ』シリーズですが、まだ完結していません。シリーズが長いので、取っつきやすくはないでしょう。そういう点では、作者が色々なギミックを好き放題に取り入れている、この連作短編『世界の中心、針山さん』は入りやすいと思います。

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タグ:成田良悟  世界の中心、針山さん  

怒涛の新章突入! 人が人に残すもの『薔薇のマリア』

薔薇のマリア 5 SEASIDE BLOODEDGE十文字 青
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新しい巻を開くたびに新しい物を見せてくれますね。今までとは打って変わった、大変ユニークな構成です。舞台はサンランド無統治王国の首都エルデンを離れて、海の街ジェードリ。街には”何か”が起きつつありました。いくつもの視点を通して、その”何か”は不気味に進行していきます。

■多数の視点で語られる物語

街を牛耳るマフィア、街外れの館に住む貴族風の謎の男、狂信的な宗教騎士団、虐殺された神殿の生き残り僧主、暗黒大陸出身の少女と白い王、売春婦と孤児達の一家。……じつに多数、20人弱の人間の視点で事件が語られるため、街に生きる一人一人の異なる思惑、さまざまな人生、たくさんの想いがぶつかり合い、混じり合う様子が立体的に浮かび上がります。
この巻の冒頭から終わりまでに、どれだけ視点が変化していくか、列挙してみましょう。
  1.  ルカ
  2.  マリアローズ
  3.  リク
  4.  ルカ
  5.  アルファ
  6.  カルロ
  7.  パオロ
  8.  ジョルジュ
  9.  チーロ・パンカロ
  10.  マリアローズ
  11.  ニーノ・パンカロ
  12.  ハーヴェイ
  13.  ロム・フォウ
  14.  ステラ
  15.  ローラ
  16.  ヘンリー
  17.  ウーゴ・パンカロ
  18.  ラッチャ
  19.  エンツォ・パンカロ
  20.  イビツ
  21.  チーロ・パンカロ
  22.  ニーノ・パンカロ
  23.  ウーゴ・パンカロ
  24.  ルカ
  25.  カルロ
  26.  ニーノ・パンカロ
  27.  チーロ・パンカロ
  28.  リク
  29.  マリアローズ

主人公であるマリアローズたちが登場するのはたった3回で、それも馬車でジェードリに向かうまでの様子を描くだけ。なんとこの巻ではエピソードは終結せず、マリアローズたち一行がジェードリに到着した時点で次の巻に続くのです。
(6巻からは再びマリアローズたちを中心に物語が進みます)

この巻はファンの間で賛否両論が分かれています。『薔薇のマリア』を買ったはずなのにそうじゃない小説が書かれているのですから、当惑するのは当然です。

■人が人に残す、幸福の原形

しかしこの構成には大きな意義があると思います。おそらく作者は「街そのものと街に生きる人々」を描こうと思ったのでしょう。マリアローズたちはこの街の住人ではないため、あえて彼らの登場を減らすのも当然の選択です。とはいえ、シリーズを通して語られているテーマそのものは共通しています。

『薔薇のマリア』は、孤独な人間(特殊な事情をもった者や、普通の人間ではない者)が絶望の中でなんとか生きていく、仲間を見つけて、支えあって生きていく物語です。

この巻では、孤児たちを拾って育てている売春婦ローラの一家、そしてマフィアのパンカロ・ファミリー、2つの擬似家族が登場します。擬似家族的な集団は、モリー・アサイラム(孤児院であり病院)や、ZOO(マリアたちのクラン)など、これまでも描かれてきましたが、「親」の存在がより明確になっているのが特徴です。もちろん「父親」はエンツォ・パンカロ、「母親」はローラです。

たぶん作者が最も描きたかったのは、擬似家族の絆と、彼らに対する最大の試練でしょう。その試練がなんなのかは、実際に読んでみてください。個人的には、『薔薇のマリア』の中でも屈指の出来だと思いますし、最も心打たれました。ジェードリ編は6巻でも終わってないのですが、作者が最終的に2つの擬似家族にどんな結末を与えるのか、非常に楽しみです。作家の力量が問われるところでしょう。
「幸福の原形、か」
「貴様も言っただろう。人は、血以外のものも後世に残すことができるからこそ、人だ。幸福の概念もその一種だ。幸福は血では伝えられぬ。親が子に――必ずしも親子である必要はないが、人が人に幸福の原形を植えつけることで、次第に輪郭が整い、はっきりと感じられるようになる」
「私の子らには、それを持たん者が多い」
「幸福の影踏みだな」
「どういう意味だ」
「哀れな糞餓鬼どもは、それが幸福だと思い追い求める。なんとしても手に入れようと思う。だが、ふれるたびに、するりと逃げてしまう。手ざわりがない。それは幸福そのものではなく、幸福の影にすぎないからだ」
「それでも、彼らは影を踏みつづけるだろう」
「そうだ。貴様の影を踏む」


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凶悪ドラッグVSニート! ニート探偵が難事件を解決!! 『神様のメモ帳』

神様のメモ帳杉井光
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『火目の巫女』の杉井光の新作。えーっと、『火目の巫女』まさか打ち切りじゃないですよね? よね? と心配になりつつも、今回は『神様のメモ帳』の書評を書かなければ。

世界初……かどうかは知りませんが、おそらく世界初でしょう、今決めました、俺が。独断と偏見で。電撃文庫初のニート探偵小説が地上に降臨!! ニート探偵アリスは、ドクターペッパーを水のようにがぶ飲みし、電脳部屋にこもってハッキング技術を駆使してあらゆる情報にアクセスする、熊のぬいぐるみを抱いた引きこもり美少女です。

「神様が創世七日目に休んだのはドクターペッパーを飲んでいたからだよ。ドクターペッパーがなければ今頃一週間は十二日くらいだったにちがいない」とのたまうアリスは、今日も哀れな高校生「僕」こと藤島鳴海を助手として、こき使います。年上の高校生相手でもお構いなしです。

おらぁ、言われる前にドクターペッパーを冷蔵庫から持ってこないかぁ、ボケ、お前は本当に何の役にも立たないごく潰しだな、生きてるのが不思議なくらい馬鹿だな。……と口に出しては言いませんが、たぶん彼女ならそれぐらいのことを考えているかもしれません。読者であるボクの勝手なゆがんだ妄想ですが。

かわいそうな「僕」の唯一のなぐさめは園芸部です。他人を拒絶するオーラを放出している、引っ込み思案の彼に積極的に話しかけてくる奇特な少女が世の中にはいたのです。その名は篠崎彩夏。彼女は園芸部に「僕」を誘ってくれます。なんと心優しい少女、しかも美少女!

しかしそういう女の子に限って、不幸属性がついて回るのです。彼女の兄貴は筋金入りのニートです。大学に通わず、家にも帰らず、ネットで買った合法ドラッグをキめています。ま、彼のクズっぷりはかなり極まってるので、ぜひあなたの目で直に読んでみてください。

不幸な女の子が幸せになる……なんて話は、ニート探偵の関わる物語にはふさわしくありません。リアリティねーんだよ。というわけで、街を騒がす凶悪ドラッグ事件に彼女と「僕」は思いきり巻き込まれていきます。

そして「僕」はひきこもりの探偵アリスと、仲間のニート3人衆――ルックスの良さを活かして、ヒモ生活を続けているヒロ。盗撮盗聴の名人にして、ただのミリタリーオタの少佐。パチスロの天才で、警察にも顔がきくテツ。彼らの力を借りて、凶悪ドラッグをばらまく連中を探し始めます。
エンジェルVSニート軍団!?

それにしても、どうして編集者はこの本のタイトルを「最強ニート伝説アリス」とか、「ニート探偵アリスの絶望事件簿」と名づけなかったのでしょうか。不思議でなりません。この本がどういう小説か知りたい人は、まず「あとがき」を先に読むといいでしょう。作者自らの見事な説明が記されています。きっと正しい理解が生まれるでしょう。
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ごめんなさい。
嘘は書いてませんが、印象を思いきりねじ曲げてるので、読んでみるときっとまったく異なる印象を抱くと思います。

この小説はとある少年が絶望を知って、それでも生きていこうとする物語です。その絶望とは何か、それはぜひ読んでいただきたいのですが、その一端はこういう事です。
「あのさあ。人間の脳味噌ん中には報酬系神経系ってのがあるんだよ。A10神経系ってやつ。美味い飯を食ったりとか人から誉めてもらったりとか欲しいものを買ったりとかすると、伝達物質が合成されてシグナルが伝わって俺らは幸せを感じるわけ。逆にさあ、統失とか鬱なんかだとドパミン機能が低下しててさあ。要するに、いくら頑張って幸せなことしても脳味噌んなかでちゃんとモノが合成されないと幸せ感じないわけ。だから、俺らはA10神経系を刺激するために生きてるんだよ、わかる?」

「だったらさあ。薬でいいじゃん。ダイレクトで、わかりやすいだろ。そのままヒットするんだから。べつに頑張って仕事して金稼いだり女見つけて結婚したりする必要ないんだよ。薬で結果が同じなんだからさあ。同じどころじゃないよな、つらい部分ないし時間もかかんないもんな。薬はパーフェクトだよ」
生きてることに意味なんて無い。その真実を悟ってどうするのか。それはもしかすると、現代を生きる多くの人間の出発点なのかもしれません。ボクら読者も、おそらくそこから始めなければならないのです。

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タグ:杉井光  ニート探偵  神様のメモ帳  

小説家は小説をどう読むのか? 『小説の読み書き』

小説の読み書き佐藤 正午
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この本は企画を思いついた編集者のアイデアの勝利でしょう。
プロの小説家は他人の書いた小説をどう読むのか? ただの読者とは違う、小説家の読み方、書き方とは? 小説家でない多くの本読みにとって、これはもう、好奇心がわきます。この本の存在を知ってすぐにアマゾンで注文しました。真っ先に読みました。

小説家の佐藤正午が、川端康成、志賀直哉、森鴎外、永井荷風、夏目漱石といった大家の作品を読んで感想文を書いていきます。やはりただの読者とは視点が違います。普通の書評や感想文は、書いてある内容や筋書き、主題を語ることに主眼を置いていますが、文体にやたらとこだわっています。まぁ文体を重視した書評も世の中にはありますが、「自分だったらどう書くか」という視点をもてるのは、やはり小説家だけでしょう。

三島由紀夫は耳が良くて、音にこだわって書く。太宰治は読点を打ちまくる、つまりここで息継ぎしなさい、と作者が細かく指図する。逆に中勘助は読点を全然打たず、素のままの文体で『銀の匙』を書いた。井伏鱒二はきれいにまっすぐに書かずにあえてねじ曲がるぐらいにカーブをかけて書く。文体に、細部に、とてもこだわって読んでいるのです。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。
(略)
 わざわざ隠喩を用いるくらいだから、川端康成の頭の中には、夜の底と書く以前にたとえば地面や、あたり一面や、見渡すかぎりや、野も畑もや、他にもいま僕には思いつけないフレーズが様々浮かんでいたはずだということである。その様々あった中から、川端康成は夜の底という表現を一つ選んで、そして原稿用紙に書いた。なぜか?
 なぜならそれが書くことの実態だからだ。
 雪国、と書くとき、作家はすでに他の様々な候補、たとえば新潟県や越後や湯沢温泉の中から「雪国」を選び取っている。夜の底、と書いたとき、すでに川端康成の頭の中では、地面と書くのはよくない、あたり一面と書くのもよくない、という取捨選択の作業が終わっている。地面と書くのはよくない、と頭の中で一瞬でも考えることは、考えてその表現を捨てることは、それはいったん地面と書いたものを別の表現に書き直すことと同じである。地面と書いては捨て、あたり一面と書いては捨て、最終的に夜の底と書く。それが書くことの実態だ。そう考えると「書く」ということはとどのつまり「書き直す」と同義語になる。とどのつまりと言うよりもむしろ、そもそも、第一義的に、二つは同じものになる。
この本を読んで、やはり作り手視点の読みは面白いな、と思いましたね。文芸評論家の視点とは明らかに違うからです。けれどもそれは別に、作り手の視点が特権的に正しいという事ではありません。

作り手が鋭い読み手たりえるのは、2つ理由があります。1つは創作に関する知識と経験を持っているからです。もう1つは作り手が「同じ悩み」を共有し得るからです。同じ悩みを持った人であれば、その作品の示した「解」の価値をより強く理解できます。もちろん逆に、同じ悩みを抱いたことがなければ、「解」の価値は理解できないでしょう。

つまり、作り手視点の読みは、その人が「執着」している箇所が如実にわかるのです。ある作品の批評でありながら、結局、自分がどういう部分を重視しているかという、自己言及になるのです。

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タグ:佐藤正午  小説の読み書き  

次世代機すべてが「たかがゲーム機」を忘れないといいですね。

そもそもネット接続率は不明なんだけど……

キャズムを超えろ!:【アンケート実施中】人はどういった目的でWiiをネットに繋ぐのか? or なぜ繋がないのか?
うーん……。
そもそもWiiのネット接続率って具体的な数字はどこにも公表されてないですよね。だからネット接続率が高いっていうのは、wa-renさんの想像に過ぎません。ネットで盛り上がっているように(wa-renさんには)見えることとネット接続率が高いことはイコールではありません。

むしろボクには盛り上がってる層が偏ってるように見えます。はてな界隈の一部のブログや、わぱのつれづれ日記さん、デジモノに埋もれる日々さん、[mi]みたいもんさんといった、Wii発売前から好意的なブログが取り上げてるだけでしょう。あと妙にデジタル家電の人は高評価ですね。

ところでこういった方々は、今でも毎日お天気チャンネルで天気を確認し、ニュースチャンネルでニュースを読んでいるのでしょうか? それとも(ゲーム機としては)物珍しいチャンネルが登場した直後にレビュー記事をブログに載せただけで、今は使っていないのでしょうか? 気になりますね。

日本のゲーム系サイトでいえば、ニコニコ動画のアイマスの方がよっぽど盛り上がっているように見えました(まっ、これも層は偏ってますが)。しかしだからといって、『アイマス』が大ヒットしてるなんて書く人はいないわけです。


『Wiiスポーツ』を家族でやりたいからWiiを買ってるんでしょ

最近では、Wiiのネット利用率が現時点ではまだそんなに多くないんじゃないの? というような見解の方が目につきます。
わぱのつれづれ日記:裏話満載の「お天気チャンネル」インタビュー
あと、投票チャンネルも関わっているらしく、「最初のワールドアンケートが50万票」というコメントも出ていますね。Wiiの場合は全世界ですでに500万台ぐらい売れていることを考えると、比率的には10%程度。PS3は本体販売約150万台の時に30万回ダウンロードと発表していたので(参考)、それに対すると比率的には圧倒的に少ないです。ただ、50万という絶対的な数字自体は多いわけで、これを少ないと見るか、多いと見るか、意見が分かれそうなところです。
また以前、WiiのブラウザでYouTubeを観られるのが話題になっていましたね。実際、Wii対応のサイトがいくつも出てきましたが、実アクセス数は不明でした。1つ参考になる数字があります。
Wii-Tubeのアクセス傾向 - Wiiからのアクセスはこんな感じです。
デジモノさんのWii-Tubeの利用者を見ると、500人を越えた程度。率直にいって少ない印象です。

WiiチャンネルはWiiの魅力の1つでしょう。けれども現時点での市場の動向を見ていると、Wiiの購入者の大半はWiiチャンネルを中心とした、WiiのネットサービスのためにWiiを買ったわけじゃないと思います。

日本における『Wiiスポーツ』の高い装着率、リモコン(『はじめてのWii』)の高い装着率、さらに非常に高いタイレシオ(ハード1台あたりのソフト売上本数)を考えれば、Wiiユーザーの大半は家族でゲームを遊ぶためにWiiを買ったということがハッキリわかります。

1人用ゲームよりも多人数ゲームという市場特性は、むしろ毎日Wiiを起動している光景ではなく、週末や年末年始に起動するものの、ふつうの平日は起動していない光景を想像させます。Wiiチャンネルはどちらかというと、Wiiのゲームソフトで不足している「毎日起動させる」欲求を補完する役割を果たそうとしているように思えます。しかしそう簡単ではありません。


Wiiチャンネルのジレンマ

Wiiのユーザーは、ゲーマーやITリテラシーの高い層と、ライトユーザーやITリテラシーの低い層の2つに分かれますが、ソフト売上から判断するに、ライトユーザーが多いと思われます。

(はてな人力質問)任天堂のゲーム機Wii、ネット接続をしていますか?
前述のwa-renさんが人力検索はてなで行った質問への回答結果が出ています。はてなユーザーはITリテラシーが高いイメージがありますが、250人中154人が繋げていません。

その理由も「面倒くさい」が筆頭です。一方、繋げている人の理由はなんと「特に理由はないが接続機能があったから繋いだ」がトップ。Wiiチャンネルは繋げる理由としては極めて低いようです。Wiiチャンネルは、PCに慣れている人たちにはほとんど魅力を感じてもらえていないことがわかります。任天堂ファンを除けば、物珍しさでさわっている人が大半でしょう。

一方、ライトユーザーはどうかといえば、無線LANルータとの接続など、Wiiは敷居が高いです。天気予報やニュースには魅力がありますが、他のメディアでも見られるので、面倒さを乗り越えるだけのパワーがあるかどうかはちょっと疑わしい。

DSのWiFiコネクションは『どうぶつの森』と『マリオカート』のようにDSでしか楽しめないキラーコンテンツがユーザーを引き寄せました。そこまでのパワーが今のWiiチャンネルにあるのでしょうか? また、他にバーチャルコンソールがあるとは言っても、そのためにWiiを買った人が多いとも思えません。

ヘビーなネットユーザーには、Wiiのネットサービスが物足りないのは確かで、むしろPCでネットを見ていないような層を取り込めるかどうかがポイントでしょう。けれどもそのために越えなければいけない敷居は、決して低くはないのです。それなりに時間がかかると見るべきでしょう。


次世代ゲーム機の中でどれほど優劣があるのか?

結局ユーザーはWiiのゲームを遊ぶためにWiiを買うわけです。にもかかわらず、オンライン対応したゲームがたったの2本で、そのうち対戦が可能なのは『ポケモンバトルレボリューション』1本というのが現状です。しかもDS版だけでもWiFi通信が可能なことを考えると、訴求力は弱いでしょう。

また、接続「台数」はともかく、接続「率」でいえば、XBOX360が非常に高そうです。これは多くのゲーム系サイトの共通認識だと思います。あれはネットに繋がないと、肝心のゲームがあまり楽しくありませんからね。また『まいにちいっしょ』や『グランツーリスモHDコンセプト』など、PS3専用ソフトを無料で配布しているPS3も「率」は高そうです。

実際の所は、各社が数字を公表してない以上、わかりません。想像にすぎないわけです。ただしwa-renさんが仮定したような、Wiiが「日本国内における据え置きゲーム機としては異例のネット接続率」を達成したという根拠はどこにもありません。印象としてはどれも大差ないような気がするんですけどね。


次世代ゲーム機=本末転倒な機械にならないといいですね

というか「接続率」なんて数字よりも気になるのは、ゲーム以外の機能が積極的にネットを活用しているのに、ネットを活用しているゲームがほとんど無いことです。Wiiってゲーム機でしたよね?

本末転倒。PS2が売れた理由の1つがDVDプレイヤー需要でしたが、それに味を占めたソニーはますます非ゲーム機部分に投資を行い、ブルーレイの普及や、大型テレビの普及や、並列コンピューティングや、色々な夢を乗せることに熱心になり、その結果PS3はゲーム機として魅力に乏しい機械になってしまいました。

DSが売れた理由の1つが『脳トレ』のヒットですが、任天堂はWiiにおいても、非ゲームであるWiiチャンネルを積極的に推進しました。その結果Wiiは、少なくとも現段階では、オンラインゲーム機として魅力に乏しい機械になってしまいました。Wii版の『スマブラ』はWiFi対戦に対応しているそうなので、もちろんこれから、オンライン対応ゲームは増えていくと思います。「オンライン天気予報もいいけど、早くオンラインゲームを遊ばせてよ」というのがユーザーの本音でしょう。

ゲーム以外の機能がゲーム機の販売を引き上げる。その傾向は感じますが、結局ユーザーは、ゲームのためにゲーム機を買っているんです。その根本を忘れた時、ユーザーとの乖離は始まっているのです。

PS3の出足は鈍く、その失敗を笑っている人も多いでしょう。
しかしなぁ、人は容易につまづく。まして人の集団はさらに容易につまづく。同じ過ちは他の企業でも容易に起きるのでしょう。あれから学べる教訓は、たかがゲーム機。あえて「たかがゲーム機」と書きましょう。その「たかがゲーム機」さえ満足させられないほど、ゲーム以外の部分に夢中になった時、同じ失敗はくり返されるのです。

次世代機がそろったけど、据置ゲーム機はどれも衰退しました……なんて未来にならないように、XBOX360、PS3、Wiiには頑張ってほしいですね。

テーマ:ゲーム - ジャンル:ゲーム

ゲームソフトを売っているわけで、ペットボトル入りの汗を売っているわけじゃないよね。

■汗を売っているわけじゃないのは前提で

どうもなあ……。
周期的にネットで持ち上がる話なんですが、またぞろゲーム開発者の「汗をかいた量」の話が出てるみたいですね。すぐに反応するのはあえて避けたんですが、それなりに年季の長い人が書いてたりするんで、若い人が変な影響受けないといいな~と思って、ボクも別の意見を書いてみます。

人によって意見は異なるのかもしれませんが、まず大前提として、ペットボトルに汗をつめて「これが僕らの情熱です、徹夜の結晶です、ゲームへの愛です」と言って売るわけにはいかないんですよね。

汗を聖水として売りつけるのは宗教だけで十分です。しかし下手すると、作品は聖遺物ですとか言い出しちゃう。えっと……あなたがやってるのは娯楽で、宗教じゃなかったよね、みたいな。

自分自身および周囲の経験から言うと、残酷な話だけど、徹夜、泊まりの回数とゲームの面白さにはほとんど相関関係はないし、まして売上にはまったく関係はありません。都市伝説というか、要は過酷な現場で弱った心が見せる幻影です。砂漠のような過酷な環境でこそ、過激な宗教が育ちやすいのと同じです。

まぁモチベーションの問題があって、「宗教」ぐらいまでいくとヤバいけど、「スポ魂」「根性論」までなら、それなりに有用なこともあります。


■時間のかけ方

身近な所でいうと、ここ数年で最も評価され、最も売れたゲームは、追い込みの時期にキツくなるのは仕方ないとしても、比較的まともな運営をしていたように思います。それよりはるかに険しい目にあったプロジェクトの成果物が、そのぶん面白いわけでも売れているわけでもありません。

ゲーム制作で時間をかけるのは、遊びのトライ&エラーと、作りこみと、スケジュールの失敗の穴埋めですが、3番目は論外として、面白さに関係するのって、最初の項目だけです。ただ、これって、本当の末期になってやるものじゃないし、末期になってやらなければいけない場合は、そもそも「敗戦」状態に近くって、「基本的には面白くないんだけど、この部分だけは良く出来てるね」状態になりがちです。

2番目の「作りこみ」は時間をかければかけただけ、良くなっていくのは確かなんですが、作り手の一方的な愛情の発露になりがちで、実はあまり面白さに貢献してない事もしばしば。磨き上げの効果ってゼロじゃないんですが、大して面白くない物は磨き上げられた「大して面白くない物」になるだけです。

ただ、大作なんかだと、作りこみの総量で勝負するってこともあるわけです。でも、それが面白さか? っていうと、そういうもんじゃないですよね。

ボクがもっとも尊敬するゲーム制作者は、かいた汗の量を神聖視するような人物ではないし、労力と面白さを混同するような真似はしてませんね。作り手の苦労なんてお客さんには関係ないという大前提を、プロなら忘れてはいけません。

努力は無意味じゃないけど、それだけで評価されるのって、義務教育まで。小学校のお遊戯じゃないんだから。つまらん宗教にすがらなくてもいい結果に持っていくのが企画や各パートのリーダーの仕事なんであって、「これは聖水である!」と叫び出すのは、責任の果たし方が違うと思うんですよね。


■改善しようとしてる会社と改善しようとしてない会社

さてその一方で、制作環境を改善しようとしている会社もあります。多数派だと信じたいところですが。
Nao_uの日記:伝えられない冗長性
自分がこの仕事を始めた頃から考えると、最近の仕事はずっと楽になってきている。マスターアップ前に毎晩徹夜で朝までバグ取りをするような事もなくなったし、何日も連続の泊まりで家に帰れない、なんて事ももう何年も経験していない。昔聞いた話では、先輩の入社時点ではさらに非人間的な環境であったらしい。
ボクも実感としてはNao_uさんに同意。多大な残業や徹夜といった状況は当然あるものの、数年前に比べると、致命的な事態を避けようとする努力がなされるようになり、管理の行き届かない状態であり得ない負荷が誰か1人に集中することは少なくなったと思いますし、理不尽な辞め方をする人は減ったように感じています。

まぁゼロにはならないんですが。運営が良くなったらそのぶん仕事は増え続けますからね。ようやく「殺すけど、勝手に死なないでね」から「生かさず殺さず」の状態になったといいますか(笑

統計が無いので、業界全体の傾向はわかりません。反省すべきを反省する会社と、そうでない会社の差はかなり開いているのかもしれません。そもそも環境を改善しようとカケラも思ってない現場もあるみたいですし。自分達がしてきた苦労は、若いやつもやるべきだ、それが愛だと信じ込んでいるベテランが居座ってる会社は大変です。ま、末路は見えてるから、好きにしたらいいと思うんだけど。

(年季を積んできてリーダー的な業務につくと、他の人が上げてきた結果をチェックしたり、会議が増えたり、事務的な書類を書かなければならず、自分の仕事に集中できるのは他のスタッフが帰った後や休んでいる日。という事はあります。それはまた別の問題ですね)


■若いやつほど早く帰す

この手の改善は千里の道も一歩から、堅実にコツコツ改善していくほかありません。例えば、本来当たり前なんですが、経験の浅い若い人間は、ベテランが「早く家に帰れ」と帰すべきです。というのは、若い時ほど、力の入れ方がわからないから、自分の限界を把握せずに自滅しちゃうことがあるんです。

自分のペースがわからないから、「あともう少し……」と不必要に粘るのです。また与えられたチャンスを重く感じて、「今晩じゅうに問題点の改善案を……」と一人残って悩んだりするんです。

スポーツでも武道でも、おそらく大抵の事に通じる話なんですが、熟練してくると、無意識に力の入れ方が身についてくるんですね。熟練すればするほど、無駄な力が入らなくなるものなんです。

それは、仕様変更やプロジェクト管理のタイミングの巧みさだったり、集中の仕方だったり、脳みそのモードの切り替え方だったり、短い睡眠時間での体力の回復法だったり、ストレスのいなし方だったり、……色々あります。
若い人は体力はありますが、そういう身のこなし方が身についてませんから、限界を超えすぎちゃうことがあります。だから上の人間がストップを掛けなきゃいけないんです。

その一方で、人間というのは限界の80%ぐらいの仕事をしていると、そのうち限界自体が下がってきてしまう生き物です。逆に、限界を少し越えたぐらい、120%ぐらいの仕事をしていると、限界値そのものが伸びていくんです。

負荷の掛け方はとても重要です。実際には人によるわけで、その人がどれぐらいタフかを見極める必要があります。個人的には、肉体的な負荷よりも、責任をあたえて精神的な負荷を掛ける方が良いと思っています。

■種を蒔く

時折、ネット上で猛烈な愚痴が吐かれているのを目撃することがあり、より凄惨さを極めていく現場もあるのでしょう。しかし断言できませんが、そういう現場はおそらく人を育てる、種を蒔くという事を怠ってきたんじゃないか、と思います。

ボクは今の会社に入る前に、3社ほど別の会社の現場に入ったり、深く出入りした経験があります。そうした過去の経験を振り返り、さらに他社の人から聞いた話を総合すると、どんどん酷くなっていく現場は、自分達のやってきた苦労をそのまま下に押しつける古参兵が居座っているケースが多いです。

また、仮に有能な人物がいたとしても、「周りには無能が多い」とか「他人に任せるより自分がやった方が早いし、質が高いし、安心する」といって孤軍奮闘するタイプである事が多いようです。結果的にいつまでも人が育たず、楽できない状況がずっと続き、現場はますます凄惨な状態になっていく……。

人に任せる、育てるというのは、回りまわって自分が楽になるためにやることです。人が、組織が、そういう意識をもてるかどうか。みんなで幸せになろうよ。……と思うんですがねえ。


■補足:魔境は悟りじゃない

まぁ人によると思うんですが、机の前で何時間うなっていても、良い案なんて浮かびません。ゲーム制作者ではありませんが、押井守氏がいい事を言ってます。人は移動中に画期的なアイデアを思いつく、と。

脳みそがちょっと別のモードになった時に、それまで出なかったものがスッと出てくることがあります。帰ろうと思って電車に乗ってる時、風呂に入った時、帰ってすぐに布団の中に入って今にも眠りにつく瞬間、ふっと出てくるんです。携帯電話にメモっておいたり、メモ帳に書きつけて寝るわけです。

たぶん緊張状態にあった脳が緊張から解放されることで、溜めておいたものが出てくるんでしょう。もちろん、前段階の緊張状態があって、初めて成り立つんですが。

3年前にちょっと酷いプロジェクトがあって、そこでボクが冗談交じりに言っていたのが「魔境」という言葉です。元々は禅の用語なんですが、物を食べず、眠らずに座禅を組んでいると、幻覚が見え始めることがあるんです。そういう時は、警策で修行者を叩いて、意識を元に戻すんです。こんなもの(幻覚)を悟りの境地だと錯覚して、それに執着すると、修行がそこで止まってしまいます。

「勝境なりといえども魔境なり」。夜遅く、明け方まで考えて、改善案をひねり出すのは、最終仕様(悟り)に至る段階の中の進歩(勝境)といえますが、まだ危険な段階(魔境)なんです。確かに夜残って考えていると、良いと思えるアイデアが出ることはありますが、同時にそれは罠なんですね。

人間、追い詰められれば、そこから脱したいと思うから、何かひねり出すんです。ところがそれは、辛い状況から脱したい(答えの無い問題を考え続けるのがイヤだ)から湧いてきたもので、じつは大したことなかったりするわけです。ところが脳がハイになってたり、疲れたりしてるから、いかにも素晴らしいアイデアだと思い込んでしまうんです。でも本当の最終仕様はその先にあるんです。

まぁ「禅」とか言うと、うさん臭いんですが(笑 冗談半分なので。追い詰められてもそれぐらいの余裕は持ちましょう、ということです。

シミュレーションRPGの発売タイトル増加は、ジャンルとして枯れてきたせい?

■シミュレーションRPGの発売本数が大幅増!?

忍之閻魔帳さんがたびたび指摘しておられるように、昨年末から今年にかけて、シミュレーションRPGのタイトル数が非常に多いです。有名タイトルの発売が偶然かぶったというだけではなく、新規タイトルが明らかに増加しています。率直に言って、これは不可解な現象です。

SRPGの分野で近年、大ヒット作は特に見当たらないからです。大ヒットが出たあと、多数のソフトメーカーが群がってくるのはゲーム業界でよく見られるパターンですが、今回のケースはそうではなさそうです。
いくつかの特徴を見てみましょう。
  • 発売ハードを見ると、PS2が5本、PSPが3本、DSが2本、WiiとXBOX360とPS3がそれぞれ1本ずつの計13本。どのハードでも発売されていて、特定のハードでのみ起きている現象ではなさそう。
  • シリーズ物や移植作は多いが、『ジャンヌ・ダルク』『ドラゴンシャドウスペル』『ソウルクレイドル』『エルヴァンディアストーリー』といった新作も多い。
  • フライトプラン、レベルファイブといった定評ある開発スタジオの健闘が目立つ。
  • 圧倒的に剣と魔法の西洋風ファンタジーが目立つ。海外での発売も視野に入れれば、当然といえば当然か。
何となく感じるのは、全体として変わり映えしないという事です。もちろん個別のタイトルにはそれぞれファンがついていて、そのシリーズ独自の特徴を把握しているのでしょうが、かなりのコアゲーマーでなければ、区別がつかないと思います。

■どうしてタイトル数が増えてきたのか?

率直にいって、これほど大量のタイトルを許容する市場キャパシティは無く、共食いになるのは目に見えています。まさにレッドオーシャン、真っ赤っ赤の世界です。では、にもかかわらず、どうしてこれほど大量に開発されているのでしょうか?

まず、ゲームデザインのフォーマットがほぼ固まっていて、コストを抑えて制作できるジャンルです。マップ等の表示は3Dでも、中身は2Dで、SFC以来とくに大きな進歩があるわけではありません。映像表現もRPGに比べれば、かなり低く抑えられます。(バランス調整が命なジャンルなので、そこにコストはかかります)

その結果、XBOX360やPS3のような次世代機でも、開発コストの増加を抑えやすいのです(それでも増加はしてるはずですが)。またハードの性能に依存する部分が少ないので、新ハードの初期段階にタイトルを投入できます。オタク色が非常に強く、大きく売れることはありませんが、ファンを掴むと数が読みやすいのも確かでしょう。

ストーリー表現を重視したゲームを作ろうとした時、RPGは敷居(水準)が高くなってしまいました。3Dのアクションアドベンチャーも、求められる技術水準が非常に高いです。シミュレーションRPGは、そこそこの規模の開発スタジオでも開発可能で、ある程度の数が見込めるジャンルなのですね。

簡単にまとめれば、シミュレーションRPGはジャンルとして枯れてきたといえます。同人ゲーム市場でも、ノベル、格闘、シューティング、落ち物パズル、テーブル、クイズに加えて、シミュレーションRPGの発売本数が増えている印象があります(バランス調整が重要なため、同人で名作が生まれるのは時間がかかるかもしれませんが)。

■レッドオーシャンを越えて

しかしこのままレッドオーシャンを続けていては、未来は暗いでしょう。シミュレーションRPGのマーケットに、新しいユーザーを呼び込む努力が必要です。また、新しいジャンルを開拓する努力も必要です。例えば、キャラクターやストーリーを表現でき、遊びとして比較的近い性質をもったジャンルがすでに存在しています。

ずばり、国盗り型シミュレーションゲームです。

発熱地帯 「まぁこの冬の一番の楽しみは『戦国ランス』なわけだが」
ジャンルの解説は↑の記事をお読みいただくとして、コンシューマーではこのジャンルはほとんど開拓されていませんから、競争相手が少ないというメリットがあります。またキャラクターに愛着を持たせるという特徴は共通ですし、ゲームの内容が異なるとはいえ、パラメータの調整が重要な点は同じですから、戦闘型SRPGの制作者のスキルを大いに活かせるはずです。

アリスソフトが『鬼畜王ランス』『大悪司』『大番長』『戦国ランス』といった名作を発売しています。PC系美少女ゲームという点で食わず嫌いするのは、非常にもったいないです。チャンスロスです。
ボクは予知能力者ではないから、ここに金鉱が埋まっていると約束はできません。けれども『鬼畜王ランス』は配布フリー宣言が出されているので、無料で手に入れられますし、『大悪司 廉価版』は3000円以下で購入できます。クリアしなくても、半日程度遊ぶだけで、どういうゲームかは把握できるはずです。それだけ、たったそれだけの手間を割いて、リサーチするのはさほど大きなリスクではないと思います。まずは少し遊んでみてはいかがでしょう?

強く、強く、強く、強く、オススメします。
そんなに勧めるなら、なんでお前が自分で作ろうとしないんだ? と思われるかもしれません。率直にいえば、SRPGも、国盗りSLGも、ボクの「作りたいジャンル」ではないのです。またボクは、多数のパラメータを細かく調整する仕事があまり得意ではないんですね。

ただ、目の前で起きている「不均衡」がとてももったいなくて、見過ごされている「可能性」が掘り起こされるのを純粋に見てみたい。そういう好奇心から、こういう記事を書いているのです。

うたわれるもの 散りゆく者への子守唄
 (アクアプラス。戦闘部分はフライトプラン)[2006/10/26] PS2

 

ジャンヌ・ダルク
 (SCE。開発はレベルファイブ)[2006/11/22] PSP

 
Riviera ~約束の地リヴィエラ~
 (スティング)[2006/11/22] PSP

 
魔界戦記ディスガイア PORTABLE
 (日本一ソフトウェア)[2006/11/30] PSP

 
サモンナイト4
 (バンプレスト。開発はフライトプラン)[2006/11/30] PS2

 
ドラゴンシャドウスペル
 (フライトプラン)[2007/01/18] PS2

 
ルミナスアーク
 (マーベラスインタラクティブ )[2007/02/08] DS

 
ディアーリオ リバースムーン レジェンド
 (アイデアファクトリー)[2007/02/08] XBOX360

 
SOUL CRADLE(ソウルクレイドル)
 (日本一ソフトウェア)[2007/02/15] PS2

 
ファイアーエムブレム 暁の女神
 (任天堂)[2007/02/22] Wii


聖剣伝説 HEROES of MANA
 (スクウェアエニックス)[2007/03/08] DS

 
ミスト オブ カオス
 (アイデアファクトリー)[2007/03/22] PS3

 

エルヴァンディアストーリー
 (スパイク)[2007/04/26] PS2

相手を「伝わる状態」にするのが肝要 『技術の伝え方』

最近、ゲーム開発者のブログの中で、マネージメントや教育についての論考が増えてきています。というのは、国内のゲーム市場が再び拡大に転じて、ゲーム会社の収益が拡大しているからです。

好景気になれば、若い人間にチャンスを与えて、チャレンジングな試みをおこなう余裕ができます(逆に、不景気な時代には、経営がどうしても保守的になるので、若い人間にチャンスを与えるのが難しいのです)。

事実「キーマンが語るゲームの今!」で、スクウェアエニックスの和田社長も、コーエーの小松社長も、2人とも若手の育成、チャンスの拡大、開発の幅を広げることを方針として掲げています。
さて、それに関連して、今日は『技術の伝え方』(畑村洋太郎)の書評を書きます。

技術の伝え方(畑村洋太郎)

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失敗学のすすめ

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■どういう人にオススメか?
失敗学の畑村洋太郎が書いた、組織における技術の継承のしかたの本です。ゲーム会社に限ったことではありませんが、技術やノウハウの継承が大きな課題になりつつあります。文書化できていること、文書化しにくいこと、そもそも文書化できないこと、色々ありますが、技術を受け継いでいくのは難しい。

会社の中である程度年季を積めば、否が応でも先輩になり後輩を指導していくことになるし、中堅になれば具体的にプロジェクトを運営することになるし、さらにマネージャーの階段を上っていくなら多くの人間の成長を促す立場になります。

そういう事を意識し始めたお年頃の中堅社員から、マネージャーにまで広くオススメできる内容です。あとがきを含めて189ページとかなり薄いため、本を読むのが苦手な人でも大丈夫。厚くないとありがたみが感じられないという人は、まずこの本でエッセンスを読み取ってから、関連書籍に手を伸ばすのもいいでしょう。

■伝える方法ではなく、伝わる状態を
無論、本一冊読んだだけで、知識の継承がうまくいくわけではありません。そもそもこの本は伝える側の安易な「伝えたつもり」を注意しているのですから。
技術というのは本来「伝える」ものではなく「伝わる」ものなのです。結果として相手の頭の中に伝えたい内容を出来させないと意味がないし、そうでなくては伝えたことにはなりません。この時に伝える側が最も力を注ぐべきことは、伝える側の立場で考えた「伝える方法」を充実させることではありません。本当に大切なのは、伝える相手の立場で考えた「伝わる状態」をいかにつくるかなのです。
「伝わる状態」の第一歩は、相手が受け入れる素地を作ることです。それはボク自身の経験(伝えられる側としても、伝える側としても)から言っても納得できます。

人間、最初からあーだこーだ言ったところで、本当にはなかなか身につきません。特に、大人になってまでゲームを作ろうなんて人間は、鼻っ柱もそれなりに強いものです。見込みのある人間ほど、上司や先輩に対して内心「俺はこいつより上手くやれる」と思っているものです。

まずやらせてみて、それで壁にぶつかって悩んだり、失敗して脳みそが反省モードに切り替わった時に口をはさむのが一番効果的です。人間、失敗を自覚した瞬間が一番素直で、最も成長する時です。自分の方から伝えたいと押しつけても、なかなか受けつけてもらえませんから、相手の方から知りたいとやってくる状態にするんですね。

■まかせるガマン強さ
せっかちな性格のボクが日頃から自戒しなければならないのは、結果の評価ですね。口を挟みすぎるのは良くありません。まぁ近頃は、ちょっとはガマン強くなった気がしますが……なかなか難しいところです。

放置しすぎて、大怪我してもらっても困るので、つくづく見極めが大切です。また、はずしてはいけない所と単に自分の好みの所は冷静に分けて考える必要があります。一番難しいのは、その中間のグレーの部分です。とりあえず、自分のクローンを量産してもしょうがない、という意識を、頭の片隅に置いておくべきでしょう。

あくまで個人的な経験にすぎませんが、自分の得意/不得意をしっかり把握して、足りない所を補うように仕事を振った方がうまくいくように思います。自分ではできない事をやれる、思いつかない発想ができるのが他人の個性です。「この人は俺には絶対できないことをやれるんだな」と思っていると、許容しやすくなります。少なくとも、許容しやすくなる気がしますね。

(参考:あるプロジェクトマネージャーの視点「第23回 最近、あなたは職場で人を褒めましたか?」

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ジブリにアニメ化してもらいたいような、まっすぐな物語 『ミミズクと夜の王』

ミミズクと夜の王紅玉いづき
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ジブリにアニメ化してもらいたいような、まっすぐな物語でした。
ど真ん中に投げてきて、そのまま心を貫通された感じ。半身浴しながら3日ぐらいかけて読もうと思ってたら、ダメ、この引力に逆らえない……風呂から上がって、そのまま読みふけって最後まで読み終えてしまいました。

こういう紹介の仕方は安っぽいから好きではないのですが、泣ける本を求めている人にはぜひ読んでほしいです。ケータイ小説にありがちな、友達との不和、男とのすれ違い、レイプ、妊娠、ドラッグ、不治の病といった泣かせギミックは存在しません。また、戦う少女、肉体改造、魔術、周囲の人間の死、非日常からの来訪者といったライトノベル的なギミックも存在しません。

これは、ミミズクというちょっと変わった女の子が夜の王に出会う、ただそれだけのおとぎ話です。おとぎ話というのは、世界中のどこであっても、誰もが楽しめる物語の形式です。舞台となる王国や世界についての詳細な設定は語られません。これが現代の小説でなく、ヨーロッパに昔からあるおとぎ話だと言っても、けっこう騙せそうな気がします。ライトノベルらしからぬ表紙の絵は、編集者の英断ですね。できれば、ハードカバーで出してほしかった気もしますが。
「あたしミミズク違ったのー。あたしぃ、村で、奴隷しててー、奴隷する前覚えちゃいないんだけどー、そん時名前ミミズだったの。クソとか、悪魔とか呼ばれたりもしたけどねー、ミミズって名前でー、ミミズって知ってるー? 泥食べんだよーだからあんたも食べなさいって泥投げられるんだけど、そんなん、食べられるわけないよぅ。
だからあたし、ミミズにクをつけて、ミミズクって自分のこと呼ばれてると思うことにしたんだよー。っていってもミミズとか食べるわけじゃないんだよー?」
「…………愚かな。
”苦”だけを付け足したか。ミミズだけの方がまだ、ましであったかも知れぬものを」
「んー、クって苦しむの苦ー? えぇーでもだってー、可愛いと幸せだし。苦しんでも、幸せのがよくなぁーイ?」

(注:地の文を省略)
ミミズクという少女は何も知りません。無知は不幸なのかもしれませんが、彼女は無邪気であり、ある意味無垢で、そして無謀でもあるのでしょう。彼女が人間なら皆が恐れる夜の王と出会ったのも、たまたまです。

彼女は彼を好きになったのか。いえ、どちらかというと、懐いたという表現がふさわしいでしょう。他の人間から「家畜」扱いされ、「人間なんて言わないで。あたしミミズク、ミミズクだよー!」と叫ぶ彼女は確かに、人間として与えられるべきものが与えられていなかったのです。

夜の王と一緒に森に住むようになり、彼女は何かを得るのです。しかしその生活も長くは続きません。彼女は優しい人々に森から「救出」されてしまいます。そうしてようやく彼女は、他の人間から与えられるべきものを与えられるのですが、やがて一人の女の子として、自主的に自分の運命を選択します。そう、これは、獣にされた少女が人になり、愛を知るに至るおとぎ話なのです。

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最近の気になるゲーム(2月19日)

この記事の位置づけについては、第1回や、この記事の末尾に書いている通りです。

■PS3への失望がコアゲーマーを携帯機にみちびく 『モンスターハンターポータブル2nd』

日本国内のPSPソフトの中で最も売れたソフトの続編がついに登場! 間違いなく、PSPでいま一番期待されているソフトでしょう。

マルガの湖畔さんの以下の記事が思い出されます。
マルガの湖畔 DIARY 1/30「従来型ゲームユーザーよどこへ行く~従来の枠組みは崩壊したのか?~」
ゲーマーにとっての大本命だったPS3が2006年のE3の価格発表を境に失望を招き、PS2のコアユーザーが「難民化」しているという指摘です。この層はゲームに時間を割く人たちなので、必ずしもWiiの路線に賛同しているわけではありません。Wiiも購入するかもしれませんが、ライトユーザーと違って、彼らの欲求はおそらくWiiだけでは満足しきれないでしょう。

ボクは昨年末、以前のブログで「コアゲーマーは次世代機を様子見している」と書きました。値段の高さやソフト不足によって、すんなりとPS3を選べなかったこの層がどこへ向かうのかはなかなか興味深い問題です。マルガの湖畔さんが指摘しているとおり、この層の一部はPSPやXBOX360に流れたのでしょう。PSPが昨年末に少し復調した事や、XBOX360がほんのちょっとだけ持ち直した事も説明がつきます。

PS世代のゲーマーの取り込みという点では、PSPがかなり有利です。なんだかんだで累計500万台に達し、『メタルギアソリッド ポータブルオプス』も30万本弱のヒットでした。メタルギアの場合は客層の問題から、おそらくDSで出してもここまで売れなかったと思います。客層は狭いものの、きっちり狙っていけば、なんとか回していけるかもしれません。

一方、ファミコン世代のゲーマーの囲い込みでは、DSが有利です。ウィザードリィ世代を刺激する『世界中の迷宮』の人気の高さはその証明といえます。マニア向けのタイトルも増加しているため、PS2難民の取り込みも進みそうです。


■あの同人ゲームがついにコンシューマーに! 『ひぐらしのなく頃に祭』

異例の売上をほこる同人ゲームが満を持してコンシューマーに上陸!! 原作はいわゆるエロゲーではありませんが、過激な暴力表現をふくんでいるため、CEROレーティングで「17歳以上対象」となってしまいました。まぁ「惨劇」を描いた作品ですから、致し方ないのでしょうね。

選択肢が無いノベルゲームだった原作は「これは本当にゲームと呼んでいいのか!?」と物議を醸しましたが、PS2版ではなんと選択肢があります。また、問題編4編と解答編4編のうち、最後の「祭囃し編」のかわりにPS2版オリジナルの「澪尽し編」が入っています。完結編が変わるという大胆な改変!!

PS2版は改変点が非常にたくさんなので、じつを言うと、けっこう不安です。まぁとにかく信じて待ちます。PS2版の改変点は公式ページの「オリジナル要素」にまとめられていますので、原作経験者の方は一度確認しておくといいでしょう。

原作未経験の方でも、ファミ通で何度も掲載されているので、名前ぐらいはご存知かと思います。PS2版から入るもよし、同人版の第1話『鬼隠し編』が丸ごと体験版として公開されているので、それをプレイするのも良いでしょう。

プレイ時間は7~8時間程度。前半のオタクっぽさがイヤな人はメッセージを飛ばしぎみに遊んでもいいと思います。都会から田舎に引っ越してきた少年が受け入れられて、楽しい日々を満喫する前半。そしてふとした事から日常が崩壊を始める後半。ぜひとも後半までプレイを続けてください。また音の使い方が巧いのも特徴で、こわいシーンでのBGMの切り替えの演出など、ノベルゲームにおけるサウンド演出の重要性を再認識させられます。


■セガの本領発揮! 世界的バカゲーが日本侵略開始 『デストロイ・オール・ヒューマンズ!』

まずはセガの公式サイトを見てくれ、話はそれからだっ!
バカゲーを作らせれば日本一どころか世界一のセガが採算度外視、常識度外視でローカライズをおこなう世界的バカゲーがついに日本を侵略開始!?

2005年のE3に出展され、ゲーム業界関係者のひそかな注目を集めていたソフトですが、まさかホントにローカライズするとは……!? 

XBOX360『フルオート』公式サイトも非常にいい感じにバカってました。最近のセガのはっちゃけローカライズは神の領域というほかありません。あんまり売れてないのが残念ですが、継続的にネタにされ続けるのは難しいし、それが売上に結びつきにくいのですよね。

ニコニコ動画をにぎわす『アイマス』にしても、初週販売数で『DOA』や『Gears of War』を下回っています。また話題は続いていても、2月5日~2月11日の週間販売ではトップ50にさえ入っていません。せいぜい3万本程度しか売れてないのに、ニコニコ動画の閲覧者90万って……。ゲーム買うより、動画を観てる方が楽しいんですよね。

ゲームのメリットとして、ランキング上位のプレイヤー育てたアイドルがステージ上で歌っているのを閲覧できます。当然大画面テレビで、HD画質で! 『トロステ』もそうですが、遊ばなくても楽しいゲームが増えてきてますね。

しかしこのランキング、要はゲームが上手い人のランキングであって、コスチュームセンスがおかしいとか、そういう視聴者にとっての面白さのランキングではないんですよね。そこがすごく残念。ゲームと動画投稿サイトがWin-Winの関係を築くのはなかなか大変なようです。


★ご注意
「気になるゲーム」はボクが気になっているゲームを紹介する記事です。発売済みのソフトも、これから発売予定のソフトも両方あり、プレイしたもの、未プレイのものもあります。

以前からゲームの紹介をしてほしいという要望は聞いていたんですが、結構な本数が出てくるなか、最後まで遊んでレビューするのは現実的に難しいです。

無論、ゲームで飯を食っている人間として、発売されるゲームをチェックしています。しかし必ずしも、自分が好きなゲームや面白い作品をプレイするわけではありません。むしろ失敗作から課題を見つけることもあります。気になっていても時間が取れなくて遊べないソフトもあります。

恋愛はいつもデスマーチ。ハッカーと腐女子の織り成すラブストーリー 『声で魅せてよベイビー』

「本の紹介」カテゴリーもいよいよ30エントリーを達成。快調、快調~! 今のままなら年内100エントリーは十分可能なペースですね。

いや、まあ、たぶん春頃からはペースが落ちるかもしれませんが……忙しさ自慢はみっともないので(どんなゲームでも忙しくなきゃ作れないのは当たり前。素人じゃあるまいし、そんなことを誇るか?)、なるべく影響を受けないように安定更新を続けたいものです。


声で魅せてよベイビー木本 雅彦

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第8回えんため大賞の佳作受賞作です。
この時期はライトノベルの新人賞をくぐり抜けてきた、新人作品が出版され、本読みにとっては新しい出会いが待っています。一年で最もワクワクする時期! この本もその1冊です。
「良く聞け」
「なによ」
「地軸の傾きをθとする」
「はあ?」
「いや、間違えた歳差運動の角運動量ベクトルをωとする」
「数学とか、私分からないから」
「違う。回転する二人の人間」
「難しいこと分からないって。私、最後の台本チェックするんだから邪魔しないでね」
 間違えた。なんか、とてつもなく間違えた。俺のセンスではわりと良いところから話題を振ったつもりだったんだが、こいつはどうもアンチパターンだったらしい。
とまあ、こんな感じのセンスの、ハッカーな男の子と、声優志望で専門学校に通う女の子の恋愛を描いた青春小説です。男の子のセンスのずれ方もすごいけど、女の子の腐女子トークだって、男の子の側には通じません。二人とも不器用で、ちょっとすれ違いながらも、少しずつ前へ進んでいきます。

孤高な生き方を愛していた高校生ハッカーの広野が恋愛に真剣に向かい合っていく様子は、かなり読ませるものがあります。熱い。彼は真剣です。普通の恋愛の仕方をすべきか、それとも自分らしい付き合い方をすべきか、悩む。本当に悩む。真剣に悩む。声優志望の沙奈歌との距離の取り方にも悩んで、悩んで、悩みます。

恋愛小説は真剣に悩む小説なんだなあ、と再確認させられました。悩んで悩んで溜めた分だけ、動き出してから一気に噴出するカタルシス!! こうじゃなければね、若い恋愛小説は。不器用でいいんだ、真剣なんだから、変身ヒーローになれなくても、彼女を受け止めてやる、手を握り合った二人の中心に未来はある、そこが世界の中心なんだ。それぐらい夢見てもバチは当たらない!!

タグ:声で魅せてよベイビー  木本雅彦  ファミ通文庫  

この機にどうぞ もう一度オススメします 『夜明け前より瑠璃色な』

アマゾンでゲームのバーゲンセールをやっているようなので、この機にやり逃していたゲームを買って遊んでみるのもいいのではないでしょうか。

夜明け前より瑠璃色な(ARIA)

PC版と同じく10万本売れたPS2版『うたわれるもの』(アクアプラス)と比べると、思ったほど売れなかったなという感じでしたね。クオリティは非常に高いので、メディア展開の差がそのまま出てしまったかもしれません。

『うたわれるもの』はテレビアニメの評判がなかなか良く、ボクもYouTubeで全話観てますし、さらに『うたわれるものラジオ』が効きました。
Wikipedia「うたわれるものラジオ」
その人気振りの一端として、配信開始とともにアクセスが殺到して配信サーバーの障害が多発し、音泉側が急遽サーバーの増強を行ったり、第10回(2006 年9月8日)には、投稿メールが週1,000通を超えたと発表した話などがある。それは番組自体に留まらず、出演したゲストのブログのアクセス数が数万単位で急増するなどの波及効果まで見られる。
一方、『夜明け前より瑠璃色な』は、テレビアニメがキャベツで悪名を轟かせ、メディアミックスが裏目ってましたからね。内容は申し分ないので、今回のバーゲンをきっかけに購入して遊んでみることをオススメします。以前の紹介記事を掲載しておきますね。
PC版を遊んだ人にもオススメできる完成度 『夜明け前より瑠璃色な』

タグ:夜明け前より瑠璃色な  オーガスト  べっかんこう  

おおらかさが育てる、ジャンルの3段階の成長

日本のゲーム業界は飛躍し、実用ソフトの市場がさらに拡大!

去年は日本国内のゲーム市場が大幅に拡大して、市場規模が過去最高額を記録しました。今年もソフトメーカー各社の意欲的なタイトルが多数リリースされ、好景気はしばらく続くでしょう。

ベネッセ、ガンホー、学研、小学館……DS向けソフト参入相次ぐ
そんな中、実用ゲームの市場がますます拡大しています。始めは単純に『脳トレ』クローンなソフトが多かったものの、漢字、マナー、いやし、芸術センス、家計簿、女性の魅力など、徐々に扱うテーマが広がってきています。もはや実用ゲームは巨大なジャンルに成長したといえます。

ジャンルの成長する3段階

1つのジャンルが生まれて成長する流れは、「キャッチアップ」「バリエーション」「チャレンジ」の3段階あります。

1.キャッチアップ
ヒットソフトに非常によく似たソフトが短期間に市場に出回る段階です。ヒットソフトそっくりのソフトや、ヒットソフトの良い部分を分析しきれてない、勘所を外したソフトが大半です。

2005年~2006年前半は『脳トレ』クローンが多く、既存のゲームに無理やり脳を鍛える要素を入れたゲームがいくつも登場しました。

2.バリエーション
ニ匹目のドジョウが出回り、市場に似たような作品が増えてくると、単純な模倣では市場で通用しなくなります。商品ごとに「差別化」とユーザー層の違いが明確にされていき、消費者に選択の幅が提供される段階です。

例えば、『お料理ナビ』に対して、高級志向の『まるごと帝国ホテル』や、コミック原作を取り入れた『美味しんぼDS』が登場すると、ユーザーにとっては選択肢が広がりますし、2本目、3本目のレシピソフトの購買意欲につながります。もしソフトが1、2種類しか市場に存在しなければ、物珍しさで売れるだけで、ユーザーは定着しないでしょう。

3.チャレンジ
大きなテーマ、大まかなユーザ一層は共通なものの、色々なタイプのソフトが登場してくる段階です。そうした試行錯誤の中から次のヒットが生まれることで、ジャンルはさらに拡大し、寿命を伸ばしていきます。

実際、女性向けという幅広いテーマが見えてきた中で、色々なソフトがリリースされています。タイトーの『私のハッピーマナーブック』、バンダイナムコの『どこでもラクラク! DS家計簿』『anan監修 女ヂカラ緊急アップ! DS (仮)』などですね。

これは何も『脳トレ』に限った話ではなく、ゲームの歴史をひも解けば、「ジャンル」はこのようにして成長していきました。逆にこういう流れを作れないゲームは、ジャンルを生み出せないか、生み出せても小さな物になってしまうのです。


似たようなソフトが出てくることが単純にマイナスなのではない

例えば、約10年前のPS1バブルにおいて、『パラッパラッパー』(96年12月)は音ゲーという巨大なジャンルを生み出しました。模倣があり、派生があり、新しいユーザーを獲得し、巨大なジャンルに急成長しました。開発するにあたっての技術的な壁が低かった事も大切なポイントです。

FPSは93年の『DOOM』の世界的なヒットがきっかけで、巨大なジャンルに育ちました。FPSの場合は技術的な壁があったのですが、ゲームエンジンが外販されたり、公開されることで、低コストで似たようなゲームを作ることができ、ジャンルの成長に大きく寄与しました。最初は似たゲーム、次に似ているけれど違うゲーム、そして派生的なゲームが発売され、多数のソフトの洪水の中から、新しいソフトが生まれていったのです。

似たようなソフトが出てくることは、必ずしも先行者利益を損ないません。ジャンルが成長することで、ユーザーに選択の幅が広がり、その結果、ユーザーが増加し、定着していくのです。


パクられもしないソフトは寂しい

逆に似たようなソフトがあまり出なかった例を挙げましょう。
約10年前、『マリオ64』というゲームが発売されました。全世界1000万台の出荷を達成した、箱庭系3Dアクショングームの原典といえるソフトでした。

しかし後に続くソフト会社がほとんどなく、ジャンルとして十分な大きさに成長できませんでした。当時N64の開発が難しく、任天堂の施策がソフトメーカーから支持されなかったこともあり、キャッチアップしようとした会社が少なかったのです。また当時、3DアクションゲームはFPS同様、技術的な敷居が高かったのです。

任天堂は(『DOOM』を生み出した)id Software とは違い、ゲームエンジンを公開するような施策を取らなかったため、少数のフォロワーのクオリティは『マリオ64』と歴然の差があり、売上が伸びませんでした。そのせいで、さらにフォロワーは減っていきました。

任天堂と協力体制にあったレア社が精力的に箱庭系3Dアクションゲームをリリースしましたが、『マリオ64』のフォロワーといえる『バンジョーとカズーイの大冒険』が発売されたのは98年12月、じつに2年半も後なのです。


情けは人のためならず。おおらかさも必要

音ゲー、FPS、箱庭系3Dアクションの3つのジャンルを比べてみました。作りやすさは多数のフォロワーを生み、その中から新しいソフトが生まれることで、ジャンルが成長していきます。逆に作りにくさはフォロワーを少数に限定し、ジャンルの成長を阻害します。

ジャンルの成長は先行者にも大きなリターンをもたらしますし、巨大ジャンルの誕生はプラットフォーム競争に重大な影響を与えます。PS1とN64のハード競争は、流通政策の違い、メディアコストの違い、『FF』と『ドラクエ』の争奪戦だけで決まったわけではありません。音ゲーの他にも、ホラーゲームが成長したのも、PS1時代です。新しいジャンルが生まれることで、シェアを激動させる程の巨大な市場が創出されたのです。

ジャンルの成長を促進するには時として、ゲームエンジンを外販するような「おおらかさ」が必要です。N64当時、任天堂は自分達のアイデアが他社にパクられる、と強く主張していました。自分達のアイデアを守るのは当然です。しかし、過剰に言い過ぎ、大らかさを欠いたため、むしろ任天堂は孤立を深めていきました。

ところが最近では、コーエーの『まるごと帝国ホテル』に自社タイトルの名前を貸して協力するように、「おおらかさ」を発揮しています。もしかすると、任天堂はこの10年で、何かを学んだのかもしれませんね。

ヒット作が出れば、どのみち後に続くソフトは出てきます。中途半端に似たり寄ったりのソフトが乱発されるよりも、健全な多様性が生まれるように積極的に協力した方が、最終的なメリットは大きいかもしれないのです。情けは人のためならず。「おおらかさ」は他者を利するだけでなく、回りまわって自分に返ってくるものです。id Softwareや任天堂に限りません。あらゆるゲーム会社はこうした歴史的な経験則を忘れないでほしいのです。


残念な議論も目につく

にも関わらず、ゲームの世界では伝統的に、過剰に「似たようなソフト」を叩く悪習が残っています。違う特徴をもったソフトでも、共通部分ばかりに目を向けて、パクリ、パクリと騒ぐのです。悲しいことに、ネットのごく一部にそういう人達がいらっしゃいます。

本のような他のメディアと比べて、ゲームは伝統的に不寛容な見方が強い、とボクは感じています。眉間にしわを浮かべて、共通点を探し出し、鬼の首を取ったかのごとく、「このパクリ野郎が!」と叫び声を上げる。ちょっと異様な光景が展開されがちです。

出版の世界では、かなり前からレシピ本ブームですが、『調理以前の料理の常識』があり、『クッキングパパのレシピ366日』があり、多様性が広がっています。そうした本の著者やファンは「このパクリ野郎が!」と、口から唾を飛ばしてわめき合っているのでしょうか? 

レシピゲームを出しただけでパクリと批判されるのなら、ゲーム業界の今の実用ソフトブームは、出版の世界から見れば、業界を挙げてのただのパクリではないですか? しかし出版の人達がそういう批判をしたでしょうか?

もしかしたらそういうケースもあるのかもしれませんが、ボクはお目にかかったことはありません。もちろん本の世界にも、盗作批判はあります。けっきょくは程度問題なのです。ただし、成熟したメディアには、類似性よりも個性に目を向け、多様性を許容する風土があります。

ゲームの歴史も、ファミコンから数えて20年以上。そろそろ1ステップ、文化的成熟をしてほしいのです。今よりもう少し多様性を許容し、共通点を神経質に探すよりも、それぞれの作品の個性に着目する豊かな文化が育まれてほしいのです。それがゲーム業界の次の10年、20年の発展につながると思います。

テーマ:ゲーム製作 関連 - ジャンル:ゲーム

夢のコラボレーション小説 『Fate / Zero』

『Fate / Zero』(虚淵玄)
大人気ノベルゲームメーカーのTYPE-MOONとニトロプラスのコラボレーション!
『Fate』の過去の物語。主人公たちの親の世代が戦った第四次聖杯戦争を描いた小説です。『Fate』本編では過去として書かれた物語が、目の前に再現されるのです。これは興奮しないほうがおかしいでしょう!

聖杯戦争は、7人の魔術師が7人の英霊を召喚して、手にした者の願いを何でも叶える願望機「聖杯」を奪い合うバトルロイヤル。だから出てくる連中がクセ者ぞろいなほど面白い。

主人公は士郎の育ての父親、本気で正義の味方になろうとして挫折した男、衛宮切嗣。そしてもう1人は目的を持たない生を送ってきた教会の神父、言峰綺礼。さらに、遠坂凛と間桐桜の父親である遠坂時臣。凛の回想だと、不器用な父親で、割といい人っぽい印象でしたけど、やっぱりあの遠坂の父親なんだなあ、という感じです。周到に計画を練っておいても土壇場でドジったり、サーヴァントに振り回されたり。魔術師としての矜持と誇りを体現する性格といい。この父あって、あの娘あり。

魔術師と共に戦う、死して精霊となった英雄=サーヴァントも、第五次聖杯戦争に負けず劣らず、クセ者ぞろいです。士郎と出会う前のセイバー、傲岸不遜を極める王の中の王たるアーチャー。そして豪快さでは歴史上ナンバーワンのライダー。

特に新キャラのライダーは、破格の強さとぶっ飛んだ豪気の最強ブレンド。図体もデカければ、野望もデカいし、器もデカい。描写は無いけど、たぶんクソもデカい。『花の慶次』に登場しそうなキャラです。まさにかぶき者、覇王という感じを存分に体現しています。
「わっはっはっはっは!! はははッ! 小さい! あれだけ駆け回った大地がこの程度か! うむ、良し! もはや未知の土地などない時代というから、いささか心配しておったが……これだけ広ければ文句はない! 良い良い! 心高鳴る! ……では坊主、いま我々がいるのは、この地図のどこなのだ? ほほーぅ、丸い大地の反対側か……うむ。これまた痛快。これで指針も固まったな」
「……指針って?」
「まずは世界を半周だ。西へ、ひたすら西へ。通りがかった国はすべて陥としていく。そうやって凱旋し、故国の皆に余の復活を祝賀させる。ふっふっふ。心躍るであろう?」

(注:地の文を省略。また最後の台詞の一部からネタバレ部分を削除)
魔術師、サーヴァントはそれぞれ他に4人もいて、痛快奇怪な連中ばかりです。プレイ時間40時間以上といわれる『Fate』の過去エピソードだけに、1冊では収まりきるはずもなく、全部で4巻刊行予定。第1巻は役者が揃っただけにすぎません。3月に早くも第2巻が出るようで、続きが楽しみです。

またこの本は一般流通を通しておらず、同人流通で販売している点も特徴的です。パブリッシャーや流通が市場を持っているのではなく、クリエイターが市場を持っているからできるのですね。現代はまさしく「市場を持つ奴が一番強い」(by 糸井重里)時代になりました。
(参考:オルタナティブな出版の拡大


Fate / stay night [Realta Nua] extra edition 特典 Fate胸像コレクション第一弾:聖杯【セイバー】付き

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PS3を とかちつくちて オタコンテンツの囲い込みはXBOX360が一歩リード?

アイマスが相変わらずニコニコ動画を賑わしてますが、とりわけ「とかちつくちて」が大人気ですね。
Wikipedia「下田麻美」
『THE IDOLM@STER』内で自身が演じる双海亜美・真美が歌う曲を「エージェント夜を往く」に設定した場合、「溶かしつくして」という歌詞の部分が「とかちつくちて」と聞こえる事がWEB等で話題になった。その後、2006年7月23日に行われたライブにおいて、同曲を披露した際「とかちつくちて」(本人は「とかちちゅくちて」と表現)と歌い、ファンの注目を集めた。

1.ニコニコ動画「THE IDOLM@STER アイドルマスター とかちラーメン大盛り ~望みの限りに~」
ワルキューレスタイルかよ!
18万ビューって……。

2.ニコニコ動画「THE IDOLM@STER アイドルマスター とかちつくちて with 美希&真」
ニコニコ動画常連の3人がそろった「とかちつくちて」。
お前らホントに好きだなー。俺も。

3.ニコニコ動画「アイドルマスター ファミコン 版? とかちつくちて も 無残」
じゃあWii版はこれで。
バーチャルコンソール専売ってことでぜひ。

4.ニコニコ動画「アイドルマスター 放送事故」
1:17から放送事故が……。

5.アイドルマスター 本家まことさんの「エージェント夜を往く」
カッコいい!!!!
ですが、あれ? あれれれ?
おかしいなおかしいなおかしいな、幻影が……見えます(笑
幻影が見えた人はきっと十勝の見すぎです。
十勝は1日1時間で。

と、いまだに話題が尽きてないわけですが、ダウンロードコンテンツ第2弾もそのぶっ飛んだ値段で話題になってます。EXTEND系衣装第1弾「スクールウェア」、なんと1000マイクロソフトポイント(=約1500円)。なんて強気な価格なんでしょうか。ていうか、いくら搾り取るつもりなんですか? 

『アイマス』は売上こそ『DOA』に遠く及ばないものの、ネットでの話題性の大きさと、アイテム課金の成功例としての実績はすさまじいですね。

実際のところ、XBOX360を取り巻く言説が変わったのって、『アイマス』発表からだと思うんですよ。中立系のオタニュースサイトに頻繁に取り上げられるようになりましたし。それまではオタ世界の辺境、洋ゲーオタの趣味の機械って位置づけで、オタでも持ってるのが恥ずかしいマシンでした(暴言)。ぶっちゃけ問答無用で馬鹿にしていい役割だったんですよね。

今ではPS3がそのポジションを交代してくれましたからね。
それにしても、PS3はオタコンテンツの囲い込みでやや出遅れが目立ってきているような気がします。

アキバOS:PS3がバカ売れする方法「ハルヒ出せばバカ売れんすんじゃね?」
ハルヒのテレカに3万円以上出すやつがいるんだから、PS3でハルヒを出せば、売れるんじゃないかという案です。やー、だから『ハルヒ』のブルーレイディスクを出せと、去年あれほど……もっとも角川はHD-DVD陣営なんですが。

しかしアニメなら今、『ハルヒ』に負けない売上を期待できる作品があるのです。こちらの記事によれば、『コードギアス 反逆のルルーシュ volume01』が絶好調に売れている模様。そっちを押さえれば……って、バンダイビジュアルもHD-DVD陣営なのですが。
アイドルマスター
コードギアス 反逆のルルーシュ 1
コードギアス 反逆のルルーシュ 2
コードギアス 反逆のルルーシュ 3


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ナムコの考えるPのお仕事  ニコニコ動画アイマス関連まとめ

テーマ:ニコニコ動画 - ジャンル:ゲーム

タグ:アイドルマスター  ニコニコ動画  

よくわからないが面白い小説 『ROOM NO.1301』

ROOM NO.1301 おとなりさんはアーティスティック!?新井輝

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ROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリック?

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ROOM NO.1301 #3 同居人はロマンティック?

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「僕は恋愛に向いていない」と思っている高校生が主人公の「恋愛」小説。新井輝の書くこの『ROOM NO.1301』は世間的には恋愛小説に位置づけられるのですが、それにしては妙にエロいです。しかし明らかに萌え小説とは違います。萌え小説はエロさを嫌うからです。

といっても、いわゆる18禁的な表現や、露骨なエロシーンがあるわけではないのです。それもそのはず、この本は富士見ミステリー文庫の本で、陵辱系を中心としたエロライトノベルではないのです。セックスシーンが具体的に描写されることは一度もありません。よくある手法ですが、その前後で必ず時間が飛ぶのです。

ケータイ小説とか、さらに高年齢の女性向けの小説とも違います。そうした小説は、少女小説の頑なな純情さを捨てて、徐々に「大人向け」の要素をはらんでいきます。いい大人がセックスの無い恋愛小説なんて読めるかと言わんばかりに。

しかし『ROOM NO.1301』は、萌えライトノベルとも、エロライトノベルとも、少女小説とも、ケータイ小説とも、大人の女性向けの小説とも違うのです。うーむ……。このシリーズを明確に分析した書評をボクはこれまで読んだことがないし、書けたこともありません。

ジャンルの文脈を想定して読んでいく読み方では、必ず予想を外されてしまうのです。よくわからない。でも面白い。読んでしまう。リーダビリティが非常に高いのは確かですが、それだけではない。じゃあ、なんだ? やっぱりわからない。

1つ言えるのは、この小説にはある種のリアリティがあるという事です。それはライトノベル的なリアリティとは明らかに違うものです。青春小説的リアリティ。しかしライトノベル的なご都合設定はありまくるし、12階建てのマンションの存在しないはずの13階に入れる鍵という設定はファンタジー小説のようです。

やはりよくわからない。でもそれはボクにも、多くの読者にも身に覚えのある感覚です。エロとエロいの微妙な違いなんですよね。「エロい」のは若い人の特権なんです。大人はみんな「エロ」ですよ。中高生ぐらいです、「エロい」領域に留まれるのは。そういう「エロい」を描ききっているのがこのシリーズの特徴です。エロでも、萌えでも、青春でも、恋愛でもない、何か。
「健ちゃん、もう一つ聞いてもいいかな?」
 耳の側で囁くような声で、自分の名前が呼ばれるのが聞こえた。それはさっきまでのしょげた声ではなく、笑ったような柔らかさを感じさせる声だった。
「い、いいですけど……」
「じゃあさ、私、健ちゃんを襲ってもいいかな?」
 そんな綾の質問。その意味を理解する前に、綾の手が伸びてきて健一は抱きしめられるのを感じた。そして彼女の柔らかい感触も。
「え、ええ!?」
 健一は驚きながらも、身動きができなかった。必死に声を上げたが、それが最後の抵抗だという気がした。
「でも健ちゃんにも選ばせてあげる。こことベッドとどっちがいい?」
 さっきより耳に近い場所から、綾の怪しい質問が響いた。それで健一は、自分の頭の中でプツンと何かが音を立ててキレるのをハッキリと聞いた――ような気がした。
そうそう。この本はそれだけじゃありません。それについては、また別の書評を書いてみたいと思います。このシリーズでは、ちょっと普通の恋愛じゃない恋愛が描かれます。普通からちょっとズレた人が多いんです。けど、そもそも普通ってなんでしょう? よくわからない。「僕は恋愛に向いていない」と呟く主人公といっしょに、あなたもこのよくわからないが面白い小説とつき合ってみませんか?

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リアリティがあるとはどういうことか 『ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・すりー』

タグ:新井輝  ROOM  NO.1301  

砂漠での対決! 居合VS無刀の『刀語カタナガタリ 第2話 斬刀・鈍(ザントウ・ナマクラ)』

刀語カタナガタリ 第2話 刀・鈍(ザントウ・ナマクラ)西尾維新

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1年を通して毎月刊行される時代劇『刀語カタナガタリ』の第2巻。
刀を使わない剣術、虚刀流の使い手・鑢七花(やすり・しちか)と幕府の奇策士・とがめは、伝説の刀鍛冶・四季崎記紀の変体刀を求めて、因幡砂漠へ。数年前に急速に広がった砂漠は、鳥取藩全土をおおいつくし、だれも住まない巨大な砂の大地と化していました。無人の地にそびえる下酷城には、ただ一人、居合いの達人・宇練銀閣だけが住んでいます。

守るものがある奴は強い。
拡大する砂漠の前になす術はなく、だれも彼もが藩を捨てて、友人も隣人もすべていなくなった鳥取藩。最後の住人、宇練銀閣にとって、変体刀と下酷城は守るべきもの。銀閣が所有する第二刀は、ありとあらゆるものを一刀両断にする、斬刀・鈍(ザントウ・ナマクラ)! そして銀閣の剣術は、見えない速度で繰り出される超音速、神速、光速の抜刀術!!

たまたま勝ってしまった感もある前回の対戦とは異なり、今回は本格的な実戦勝負。無人島育ちで実戦経験の少ない七花が居合いの剣士と戦うのは初めて。しかし七花にも、守るもの(=とがめ)はあります。少しずつ実戦を学んで、戦う意味を知って、成長しているのです。

さあ、剣術の王道・居合 VS 剣術の邪道・無刀の決着やいかに!?

異能バトルの小説でありながら、戦い以外の部分も魅力的なのが西尾維新。『刀語』。1巻から1ヶ月が経過して、七花ととがめの二人はすっかり打ち解けています。ヒロインのボケと主人公の突っ込み、いつもの西尾維新節がいい感じに弾んでます。
「わたしはひとつ、大事なことに気付いたのだ」
「へえ。大事なことって」
「そなたは個性が弱い」
「こ、個性が弱いって……」
「どうも報告書を書いていると、そなたよりもあの忍者の方が目立ってしまうのだ。何回も書き直しを試みたが、無駄だった。推敲しても推敲しても結果は同じだ。ついぞ、蝙蝠よりもそなたを目立たせることはできなかったのだ。最終的に清書を終えて、自分で読み返してみても、そなたのことは上半身裸のばかという印象しか残らなかった」
「い、いや、ちょっと待てよ、とがめさん。あんなよ、口から刀を取り出すような奴を相手に、個性で勝てるわけがないだろうが。それに、個性ではともかく、戦闘ではおれの勝ちだったんだし――」
「それはもちろん、戦闘で負けてもらっては困るが、個性でも負けてもらっては困る。そなたの人間性には、いまいち花がないのだ」
「あんたに気遣いはねえのか!?」

(注:地の文を省略しています)


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西尾維新が送る、12ヶ月連続刊行の時代活劇『刀語カタナガタリ 第1話 絶刀・鉋(ゼットウ・カンナ)』
千人の巫女対無刀 『刀語カタナガタリ 第3話 千刀・ツルギ』

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:西尾維新  刀語  

業界と企業と人の話の補足

先日の「業界と企業と人の話」で、内向型と外向型の分類を持ち出しましたが、某氏から「対立項に見えると危険では?」と指摘を受けて、そういえばそう誤読されるような書き方かもなあ、と思いました。

文脈的にいっても、リンクを張ったあれれさんの記事には「二者択一」「踏み絵」といったそれっぽい単語が出てきていますし、samonaさんの記事も2分類による思考の罠を感じなくもありません。ボクにしても、「実際には『外向型』『内向型』の2つに分けるのは難しくて、人によって比率が違う」とうっかり書いてますが、1軸上で考えているように読めますね。

内向型(自分を表現する喜び)と外向型(他人を楽しませる喜び)は対立項?
内向型と外向型(1D)

これはあまりにも単純化しすぎています。なぜ単純化されてしまうかというと、「行動の選択」をベースに考えすぎているからです。確かに生き方としては、ある種、二者択一的な部分もあるでしょうし、自分の人生時間というリソース配分を考えれば、優先順位をつけていく必要があります。
ただ、ちょっと思い詰めすぎという印象もありますね。

X軸上の一方が「外向型」、もう一方が「内向型」なのではなくて、「外向型」と「内向型」はそれぞれ別の軸と捉えるほうが健全です。またボク自身の経験からしても、そちらのほうが実態に近い気がします。

しかし、内向型と外向型が対立項として考えられがちなのは確かです。例えば、小説家の宮部みゆき氏は、以前インタビューの中で、自分の書きたいことと読者の読みたいことを半々に折り合いをつけています、と語っていました。

それにも根拠があるはずです。つまり、軸としては2次元的に考えるべきなんですが、分布に偏りがあるんじゃないか、だから「対立項」っぽく見えるんじゃないでしょうか。そこで、これも図にしてみました。1分ぐらいで描いた下手な図なので、細かい部分の不備はご容赦ください。
実感に近い分布図
内向型と外向型(2D)

ボクがこれまで色々な人に出会ってきた中では、だいたいAとBとCの群があって、圧倒的に多いのがBの群です。そのため、時として1次元的な対立項に見えやすいのでしょう。しかし実際には、内向型と外向型のどちらか極端に走らない人が大半です。図では、2つの軸が交わる辺りで最も膨らんでいるはずです。
それから、ごくたまに、AとCの人がいます。

Cの人はそもそもこの仕事に向いてないか、サラリーマン的になってしまっている人です。モチベーションの低下などでも起こる話ですね。

Aの人は天然というか、自分の思想や世界観を表現することを優先すると、そのまま他の人を喜ばせることにつながる人です。そういう人は政治家にでもなれよ、と思わなくもないですが(笑

Aの人は一見、理想像に思えますが、内向型のMAXにも、外向型のMAXにも届いていません。そこはかなり意識して描きました。あくまでボクの考えになりますが、内向型と外向型がMAXな人間なんて、クリエイティブな業界にはいないと思います。自分=他人の境界線が無い人間ということですから。もしいるとしたら、宗教家ぐらいだと思います。

Aの人やBの右下の人は現場に留まるより、プロデューサーを目指した方がいいんじゃないかと思います。まぁなろうと思ってなれるものではないですが。Bの左上の人は、これからの時代は企業に留まるよりも、個人メディアの世界に飛び込んだ方が精神的には幸せかもしれませんね。Cの人は若くて独身なら、転職した方がいいと思いますが、家族を抱えるとそうもいきませんから、自分の心の健康を大切にしてうまく生き残ってほしいです。

……とまあ、以上のように補足してみたのですが、長すぎですね(笑

テーマ:ゲーム - ジャンル:ゲーム

デビューから10年以上、溜めに溜めたものを吐き出した新感覚サイバーパンク『シャギードッグ』

シャギードッグ 天使の序章七尾あきら
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面白い!
サイバーパンク好きなら間違いなく読み逃せない一冊。GA文庫という新しいレーベルだからこそ、思いきり趣味に走って書けたのかもしれないですね!

作者のホームページの既刊リストを見ると、サイバーパンクはデビュー作以来、約10年ぶり。溜まるに溜まったものを吐き出してきた感じ。

脳改造をして、プログラムを脳にインストールするとその戦闘能力を使える格闘プログラム保持者(ホルダー)。ヤクザの息子の鳴神大介もその一人。ユニークなのはあくまで肉体は元のままという設定です。つまり経験や肉体が未熟なら、格闘の達人の戦闘プログラムをインストールしても、肉体がついてこれず、自分の身体を壊してしまうのです。

そういう能力者たちのSF格闘アクション物かと思いきや、ブレインハッカー=強制催眠能力者=<ドリーマー>による、まさにサイバーパンクな精神感応バトルも始まります。それだけじゃない。汎用重装歩兵<猿人>、ナチュラルボーン最強の格闘家の老人、発火能力者、サイボーグ。次から次へとギミックが放り込まれたごった煮です。

自分の気に入ったギミックをどんどん放り込み、ちょっと整理のつかない有様は、デビューしたてのような若さとエネルギーを感じます。再デビューというわけではありませんが、きっと作者は久しぶりに思いきったものを書けたんでしょう。

多数のサイバーパンクなギミックが、ホルダーの鳴神大介、幼なじみのまりん、死にたがりの<ドリーマー>オズの3人を軸に急速に展開します。戦闘、戦闘、戦闘、戦闘。一応この巻のエピソードは1巻で完結していますが、この世界の全貌を描ききれるはずがなく、2巻以降も続くようです。張り巡らされた伏線はまだまだ残っています。
「むだだよ、オズ。おれはおまえがただの人間だってことを、絶対、忘れたりしない」
「では見ろ!」
 突如、雷鳴にも似た怒号が耳もとで轟き、心臓が止まりそうになる。
 腕の中のなにかは、今や魔物のようにのたうっていた。手に触れるのは今やそそけだつ剛毛、硫黄臭のするウロコ、ぬめるもの、硬いもの、なまぐさいもの――あらゆる不快で、究極の敵意と悪意に満ちた恐ろしいもの、ほとんど神話的な、見てはならないものだった。
「見ろ鳴神! 私がただの人間かどうか、見ろ! ハハハ、できないだろう? できるわけがない! 認めるがいい。おまえはほんとうはこの夢の底で、私の正体を見てしまうのが恐ろしいから目を閉じているのさ! 皮一枚の上っ面の美にしか興味はないんだ。それが人間だ。恥じることはない。今すぐ私を放して去るがいい。でなければ殺す」
孤独な天使と、因縁にまみれたヤクザの息子と、ただの人間の物語はまだ動き出したばかり。まさしくサブタイトル「天使の序章」の指し示す通りです。

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:七尾あきら  

業界と企業と人の話

マネージメントの議論と関連して、ゲーム開発者の選択についての議論が盛り上がっています。発端は最近刺激的な発言(?)が増えているあれれさん。
特に2番目の記事のコメント欄の荒れっぷりはなかなかのもので、(ボクじゃあるまいし)こんな記事を書く人だったかな??? と正直、不思議でした。3番目の記事で自分の心情を率直に語っておられるのを読んで、ようやく納得。

荒れている間は言及するのを避けてたんですが、一応の収拾がついたようなので、今更ながら感想を書きます。たぶん混乱の原因は「業界の選択」(趨勢)と「企業の選択」と「人の選択」がゴッチャになっていたからでしょう。

この3つはそれぞれ持ってるリソースが違いますし、判断の基準も違います。ゲーム業界の現状を踏まえて、少し整理してみます。


業界の選択(趨勢)

国内でいえば、もう議論する段階を過ぎていると思います。『ドラクエ9』がDSに供給されるという時点で、多数派の見解というか趨勢は固まってしまった感があります。ボクが煽りぎみの記事を書かなくなった理由もそこにあって(笑、今さら書くまでもないでしょう、と。

最近は商業メディアのほうがむしろ舌鋒鋭く、新しい時代を語っているので、個人メディアで書く意義を感じていません。というのは、個人メディアは認識が浸透しきっていない段階で物を書けるところに価値があると思っているからです。現状認識では常に個人メディアが先行し、商業メディアが後追いするものです。

市場のシェアというものはハッキリ数字で出ますから、趨勢というものは割りと明確に答えが出ます。自分の好みと合わないからといって、突発的に不満や歪んだ現実認識をぶち上げる開発者がたまにいますが、そんなことしたって、現実は変わりません。シェアや売上という数字は客観的なものです。

業界全体が大きな変化を迎えている時には、まぁ例外はあるかもしれませんが、とりあえず業界全体に対して強い言葉を響き渡らせる方がメリットが大きいです。そうでないと、変化に乗り遅れる企業や開発者が出てきて、莫大な機会損失につながります。去年はまさしく、時代の変化に対して、認識の共有化を進める段階だったと思います。


企業の選択

このレベルの議論は、なかなかまとまらないでしょう。というのは、企業ごとに「正解」は異なるからです。ボクが見るところ、各企業は割りとそこそこ良い選択をしていると思います。

『まるごと帝国ホテル』を筆頭にコーエーは遅まきながらDSにシフトしつつあります。元々コーエーはPC系のメーカーで、古くは『ナイトライフ』、PS時代には英会話学習アドベンチャー『EMIT』など、多様な実用ソフトを発売している企画力のある会社です。また、ゲーム業界では珍しい女性経営者の襟川会長が率いているため、古くから女性向けゲームに手をつけています。

最近『無双』やMMORPGを乱発しすぎてバランスが偏ってましたから、企画のバランスが持ち直すのは良いことでしょう。特に今後は女性向けのマーケットが拡大していくと予想されますから、飛躍するチャンスは十二分にあると思います。

カプコンは逆に大作路線を貫いていますが、高い開発力を誇る会社なので、適切な選択といえるでしょう。率直にいってカプコンの体質で、『脳トレ』系のソフトを作って当たるとも思えません。自社開発のエンジンも軌道に乗りましたし、今後も日本のゲーム開発者の技術力の高さを立証しつづけていただきたいものです。

スクウェアエニックスは『ドラクエ』をDS、『FF』をPS3に振り分けました。対極の方向性を取ったわけで、リスク分散という点では良い判断です。それぞれのソフトの方向性に沿っています。

『ラブ&ベリー』を擁するセガも忘れてはならないでしょう。他にもハドソン、アトラス、ロケットカンパニーは規模が小さいながら、小回りを利かしてDSでうまく稼いでいますね。アトラスは知育系のゲームは出さず、むしろ『世界樹の迷宮』のようなマニアックなソフトをヒットさせていますが、アトラスのイメージからすれば自然な流れです。

……とまあ、基本的にその会社の体質をうまく活かしていくべきで、自社の中に無いことを無理やりやろうとしてもうまくいかないと思います。まずおのれ自身を知れ、です。

例えば、任天堂が軽いゲームを中心に展開して成功したのは、ユーザーのライフスタイルの変化にうまく当てはまったからですが、そちらに舵を切ったのはN64→GCと中途半端に重厚長大な方向に引っ張られていたのを反省したからでしょう。体質に合わないことはやるものじゃない、という事です。

しかし変化には自分なりに適応しなければ生き残れないのも事実です。時代の変化と相性が悪ければ、市場全体の傾向を読んで、より大きな市場にシフトしていく必要があります。当然、体質改善を推し進めなければならない企業もあるでしょう。そこは企業体力との兼ね合いですね。


人の選択

好きにしろよ、もう。
という感じですね。とにかく売れる物が作りたい人は時流に乗ればいいし、とにかく自分の好きな物を作りたい人はそうすればいいんです。

しかし、多額の開発費を浪費したくせに大して売れず、他のゲームが上げた利益を食い潰すのは「ただの寄生」です。また、自分が好きに作ったゲームが売れないからといって、ユーザーが保守的などと言い出す人はみっともないです。そういう事を言っていた開発者は、この数年で存在感が薄くなってきました。

黒字になってる分にはどういう選択をしても、引け目を感じる必要は微塵もありません。また、sam113さんが書いておられるように、企業でゲームを作ることにこだわる必要性も薄れていると思います。
しかし今では、そのヒエラルキーも崩壊しつつある。仮にゲーム企業に就職してクリエイティブな職種につけても、これから仕事として作らなければならないのは、「脳トレ」や「Wii Sports」、あるいはもっと別の何かだ。それらを作りたいと思う人にとっては、最初からプロになるのも魅力的な選択肢かもしれないが、そう思わない人もおそらく多いだろう。
(略)
そのように始めから考える人も、きっと多いことだろうと思う。そういう人にとっては、もはやメジャーもマイナーも関係ないのだ*3。

共通の価値観が崩壊した結果として、プロとアマチュアがフラットになった。人によっては、プロよりもアマチュアの方が、自分のやりたいことをやるための有力な選択肢になりつつある*4。
外向型開発者は、他人が喜ぶモノを作ることで、自分自身も幸せになることができる。いわば天性のサービス精神の持ち主だ。そして、他人が喜ぶということは、需要があるということに他ならない。つまり外向型開発者は、売れるものを作ることで、自分自身も幸せになれる*1。

一方、内向型開発者は、他人を喜ばせることよりも、自分の思想や世界観を表現することに、幸せを見出す。このタイプの開発者が作ったモノは、独自の個性的な作品性を強く放つ場合が多い。それが多くの人の共感を呼べば、作ったモノが大ヒットする可能性も稀にあるが、しかし本人にとっては、単に売れるものを作ることは「迎合」であり、意にそぐわない場合も多い。
長文の引用になってしまいましたが、ぜひとも元記事を読んでください。大いに共感できる内容です。

古くからの読者はご存知のとおり、ボクは基本的に個人メディアに肯定的な記事を書き続けてきました。個人の持つメディアの力が強くなった現在、企業内にクリエイティビティーを集約し続けるのは非常に困難になっています。PC系でも、コンシューマー系でも、同人ゲームを作っているプロの開発者は結構いるわけです。会社では自分の好きな物をなかなか作れませんからね。

今の時代はプロでクリエイトしていくのに厳しい時代です。ユーザーは日増しに強くなり、ユーザーの生み出すコンテンツ(というよりそのライブ感)が支持を集めるからです。したがって各企業では、クリエイティビティーマネージメントが重要になっています。


補足

実際には、「外向型」「内向型」の2つに分けるのは難しくて、人によって比率が違うはずです。例えば、勝手に分析して申し訳ないですが、この記事を読んだ感じからすると、あれれさんはかなり「外向型」の比率が高いと思います。ボクはどちらかといえば外向型ですが、さすがにあれれさん程ではないなあ、と感じています。正直ちょっと引きました(笑
(別にどちらがいい/悪い、正しい/間違ってると言っているわけではありませんよ)

ゲーム業界について割と似たような方向性の記事を書いている割に、たまにまったく共感できない事があるのは、たぶんそのせいなんだろうなあ、と勝手に自己分析してます。

補足2

「人の話」ではちょっと誤読を招く部分があったので、補足の記事を書きました。
業界と企業と人の話の補足


関連エントリー

開発マネージメントについての議論が高まっている

半身浴はじめてます

最近、半身浴をはじめました。
半身浴というのは、胸から下までを体温より少し高い程度のお湯につけて、20~30分間ゆっくり入る入浴法です。流行ってますよね。全身浴に比べて身体への負荷が少ないので、ゆっくり時間をかけて入れるというわけです。身体の奥からじわじわ温めて、汗をかくんです。

以前から興味はあったんですが、風呂の中にいる時間がもったいなくて、なかなか始められなかったんですよね。

ネットで暇つぶしのアイテムを探したんですが、防水CDプレイヤーと防水ラジオがやはり定番なんでしょうか。防水ラジオ付きのスピーカーはiPodを入れられるのが便利そう。公式ページによると、ソフトラバーの前面パネルの上から操作するみたいです。この手の製品の防水性能は、買ったことないからわからないんですが、濡れた手で触るぐらいなら問題なさそうですね。

TWINBIRD 充電式防水CDプレーヤー AV-J179PW

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TWINBIRD AV-J122W FMラジオ付防水スピーカー x ZABADY ホワイト

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同じ発想で、携帯ゲーム機を持ち込めてもいいですよね。
……と思ってたら、やはり防水グッズは存在するみたいですね。台所で使う『お料理ナビ』が発売されているDSはもちろん、PSPでも発売されています。これも使用してないので、防水性能はわかりませんが、濡れた手で遊ぶぐらいなら大丈夫そうに見えますね。

NintendoDSLite用 アクアトーク ゲームプラスDSLite シルバー

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けっきょく今の所は読書をしてます。水に濡れるのが心配でしたが、注意すれば大丈夫でした。まあ本をきれいなまま保存したいコレクタータイプの人にはオススメしませんけど。
半身浴の間に読んだ本は以下の3冊。そのうち書評を載せます。

テーマ:美と健康! - ジャンル:心と身体

タグ:半身浴  

ミステリーの無いミステリー文庫に誕生したゴシックホラーミステリー 『麗しのシャーロットに捧ぐ』

麗しのシャーロットに捧ぐ尾関 修一
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注意
表紙がメイドなので、萌えを期待する人もいるかもしれませんが、1ミリグラムもないので、ご注意ください。


第6回富士見ヤングミステリー大賞で佳作を受賞した作品。ネットを見回しても、どうしてこれが佳作なんだという声が多い、かなり評判の良い小説です。佳作にとどまったのは、ミステリーの無い富士見ミステリー文庫に、まっとうな正統派ゴシックホラー・ミステリーを送ってしまったせいでしょうか?(笑

メイドのシャーロットは、高名な人形作家のフレデリックに仕えていました。彼は仕事の域を超えて、人形を偏愛している変人でしたが、恋は盲目、シャーロットは気にしていません。それに人形を愛している男にも溺愛する妻、ミリアムがいるのです。彼女の世話はフレデリック自らが行い、メイドは直接世話をしていません。食事も部屋の前までは運ぶものの、実際に食べている様子はシャーロットも見たことがありません。

人形への異常な愛情の注ぎ方。そして人前に姿を現さない奥様。そこから導き出される結論は……。
疑念を抱いたシャーロットは好奇心とフレデリックへの恋慕をこられられず、奥様の部屋にこっそり足を踏み入れます。それが恐ろしい惨劇の始まりとも知らず。そして三部構成でつづられる物語の果てに、読者は長い時間をかけて準備された、周到な悪意の存在に気づくでしょう。

あやしいご主人と召使いというオーソドックな設定ですが、テンポの良い文章でスピード感がついたところに、少しずつおかしな感覚が挿入されていき、読者はいつのまにか後戻りできなくなっています。さりげなく忍び寄る恐怖を描き出す、小説家としての巧みな腕前が冴えています。このままライトノベルにとどまるか、飛び出すか。しばらく注目しておきたい作家です。

タグ:尾関  修一  麗しのシャーロットに捧ぐ  

ゲームブック復刊リスト!!

いつのまにか『悪魔に魅せられし者』が復刊していたんですね。なつかしー。もう20年以上経つんですねえ……。
(参考:読書百遍:「ドルアーガの塔」裏攻略

ついでに最近復刊されたゲームブックをリストアップしてみました。
悪魔に魅せられし者
(鈴木直人)
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チョコレートナイト
(鈴木直人)
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パンタクル 1.01
(鈴木直人)
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鈴木直人氏の作品はどれも名作ぞろいでしたね。50冊ぐらい読んだ記憶があります。復刻された本があるとはいえ、ゲームブックは再ブームが起きませんでしたね。

テーブルトークRPGやゲームブック文化がコンピュータゲームのRPGに取って替わられた様子をリアルタイムに目撃したことになるんだなあ……。『ロードス島戦記』『ドラゴンランス戦記』のようなリプレイ小説も出ていました。いやはや懐かしい。

そういえばこの間、某先生に「『薔薇のマリア』はウィザードリィ小説というより、ロードス以来のリプレイ小説のノリを感じた」といわれて、なるほどと思いました。『世界樹の迷宮』とその人気っぷりもそうですが、80年代中盤のRPG文化(テーブルトーク、ゲームブック、初期コンピュータRPG)に浸かった世代がクリエイターになり、当時の影響を受けた作品を送り出しているんでしょうね。で、消費者もその世代の人間なんでしょう。

ソーサリー1 シャムタンティの丘を越えて
(スティーブ・ジャクソン)
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ソーサリー2 魔の罠の都
(スティーブ・ジャクソン)
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ソーサリー3 七匹の大蛇
(スティーブ・ジャクソン)
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ソーサリー4 諸王の冠
(スティーブ・ジャクソン)
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火吹き山の魔法使い
(スティーブ・ジャクソン、イアン・リビングストン)
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バルサスの要塞
(スティーブ・ジャクソン)
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暗黒城の魔術師―グレイルクエスト
(ハービー・ブレナン)
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ドラゴンの洞窟―グレイルクエスト
(ハービー・ブレナン)
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テーマ:ゲームブック - ジャンル:小説・文学

タグ:鈴木直人  スティーブ・ジャクソン  ドルアーガの塔  

リセットし続ける勇者の物語 『All You Need Is Kill』

All You Need Is Kill桜坂洋
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「据置ゲーム機の分裂」で予告したとおり、桜坂洋の代表作『All You Need Is Kill』の書評を書きます。SFで戦場物というと、人類が絶滅の危機に脅かされていると相場が決まってますが、この小説の人類も例外ではありません。

突如人類の前に現れたギタイという謎の敵によって、人類勢力は後退と減少を続けていました。交渉のできない相手との生存を賭けた戦争が続くなか、臆病な少年、新兵のキリヤ・ケイジは世界のあちこちにいる、使い捨てのろくでもない雑魚として、あっけなく戦死しました。

……はずなのに目が覚めれば、自分は生きていて、クソったれな出撃前日の朝に戻っているのです。最初は夢かと疑い、戦死。そしてクソったれな朝に。現実と認識すれば、戦場から逃走するも戦死。そしてクソったれな朝に。拳銃で自殺を図るも、やはりクソったれな朝に。

敗北必至の激戦の前日を永遠に繰り返すループ。キリヤはこのループから抜け出す努力を続けます。戦場の牝犬リタ・ヴラタスキのように圧倒的に強い兵士になり、独力で敗北戦を生き残る! 出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。出撃、戦死。

どんなベテラン兵士でさえ経験できない、膨大な数の死地を乗り越えて、臆病な新兵にすぎなかったキリヤは人類最強の兵士に成長していきます。そしてループが158回を数えた時、戦場の女神と再会します。

繰り返されることで、キリヤの「生」は薄っぺらくなっていき、「死」への恐怖も次第に薄らいでいました。彼女との再会後、急激に生の実感が回復していく様子は、心温まる微笑ましい部分です。
 渦巻く梅干しの中からひと粒を選びだし、リタは口の中に放りこんだ。
 もぐもぐ。ごくん。ぺっ。種が転がった。
「すっぱくなんかないぞ」
 目尻に涙が浮かんでいる。
 彼女は樽をずいと押した。次はぼくに食べろということらしい。
 できるだけ小ぶりのひとつを選びだし、口に入れる。
 食べる。種を吐きだす。
「ぼくもすっぱくなんかない」
 チキンレースだ。受けてたとう。
しかし、この二人に関しては、もういくつかエピソードが欲しかったのも確かです。ネットでも、後半をもっと描きこんでほしかったという意見を割と見かけます。これだけのクオリティの物語がコンパクトにまとまっている事には作者の大きな力量を感じますが、読者は贅沢なもの。優れたアイデアの作品に出会ったとき、もっと味わいつくしたいという欲求をおぼえるものです。

本好きでも、SFというと文章が読みにくいというイメージを抱いている人はいらっしゃると思います。そういう人にぜひオススメします。この本は密度の濃い物語が、読みやすい文体で綴られています。もちろん、戦場SFが大好きな野郎どもにも最高の一冊。

実際、この作品によって、『よくわかる現代魔法』という少女小説でデビューした桜坂洋は、本格SF作家として認知されるようになったのです。

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:桜坂洋  

1月の売上集計

うちのブログで1月にどの本(ソフト)が売れたかを集計してみました。1月の売上は、以前のブログの3ヶ月分の売上を越えてます。移転したばかりなので、さほど良い結果は期待してなかったのですが、書評中心のブログにした効果が思いのほか大きく、3倍強に増加。ありがたいことです。

コンバージョン率は7%でした。コンバージョン率は、商品のリンクをクリックしたうちで実際に購入された比率のことですが、7%というのはなかなか良い数字のようです(参考:404 Blog Not Found「Amazonアソシエイト決算2007.01」)。少し雑な解釈になりますが、この数字が高いほど、書評の効果が大きかったと考えてもいいでしょう。

ボクも「本を売りたい」というより「みなさんにもこの本を読んでいただきたい」という気持ちが大きいので、自分が紹介した本が売れるのが一番うれしいです。書評の評価として、アマゾンはわかりやすいです。読者の反応を見ながら、より良い書評を書いていきたいですね。


■ゲーム部門

1位 世界樹の迷宮

やはり『世界樹の迷宮』がトップでした。ネットでの評判がダイレクトに反映されやすいのはネット通販ですね(参考「ゲーム販売の地域格差と伸びるネット通販」)。売れたのは特典つきの初回版ですが、現在アマゾンでは売り切れています。リンクは通常版に張ってあります。

2位 ルーツ PE

そんなにプッシュした覚えはないのですが、3位の『アイドルマスター』を引き離して堂々の2位。ネットでの話題性ではアイマスに完全に食われていたと思うのですが。逆に、取り上げた数少ないブログだったことが好売上の理由かもしれません。コンバージョン率も高いです。

初回限定版の在庫はまだあります。評判の良い作品にも関わらず、アニメやネットラジオでメディア展開が行われた『うたわれるもの』と比べると、販売数ははるかに下。PC版もどこか地味で、埋もれてしまった感がありました。もったいないことです。

3位 アイドルマスター

話題性の割りに『ロストプラネット』や『Gears of War』の初週販売本数を下回っているのは残念。XBOX360にとっては単純な売上効果よりも、宣伝効果や話題性効果が大きかったという位置づけか。家庭用ゲームというよりエロゲーに限りなく近いイベントの数々は、ニコニコ動画でも大いに話題になりました(参考「ナムコの考えるPのお仕事  ニコニコ動画アイマス関連まとめ」)。

やはり注目はアイテム課金での売上でしょう。ワルキューレのコスチュームも最初から用意し、アイテム課金専用のUIをゲーム中に実装する気合いの入りっぷりです。

求心力の強い『アイマス』は成功の見込みがありますが、アイテム課金はよほど強力なタイトルでない限り、難しい仕組みだと思います。どっちかというと、ユーザー間のオークション(でほんの少しの手数料を取る)や、神プレイや珍プレイに対する投げ銭のほうが、うまくいくんじゃないかな。

またコンシューマー系のゲーム会社はアイテム課金の経験値がないのが痛いですね。スクウェアエニックスがハンゲームにソフトを供給してるぐらいです。ポータル=プラットフォームと捉えるなら、敗北宣言に等しい。以前のブログで書いたように、やはり開発戦略を指揮できるチーフクリエイティブオフィサーの不在がスクウェアエニックスの最大の問題点でしょう。

4位 三国志大戦DS
三国志大戦DS(特典無し)
4位と5位は取り上げてないゲームがランクインしました。

5位 .hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで
.hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで


■ライトノベル部門

1位 DDD奈須きのこ
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圧倒的な売上でした。奈須きのこパワーを思い知りました。
どこかのインタビューだったか対談だったかで、今年の夏までに『DDD』を終わらせて、ノベルゲームの新作に取りかかると話していたそうです。1巻はまだキャラクターが出揃っただけという感じなので、2巻が楽しみです。

2位 薔薇のマリア 1巻 夢追い女王は永遠に眠れ十文字 青
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ウィザードリィ小説、TRPGリプレイ小説の雰囲気をもったライトノベル。割としつこく取り上げていますから、それが素直に売上に反映された感じです。4巻まで順に書評を掲載していますが、5巻、6巻の分も書いてますので、今月中には公開したいですね。

3位 化物語 上・下西尾維新

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登場人物たちの軽妙な会話のやりとりがたまらなく楽しい。ぶっちゃけストーリーを追いかけるのなんてどうでも良くなります(笑 西尾維新の名前は聞いたことがあるけど、『戯言』シリーズは巻数が多くて手を出しにくくて……という人はぜひこの『化物語』を手にとってみてください。

4位 ぼくと魔女式アポカリプス水瀬 葉月

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現代学園異能の究極形ともいえる、ねじれて壊れたゆがんだ小説です。いかにもあやしい雰囲気の表紙で引いてしまう人もいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫、中身は別にエロチックじゃありません。表紙の女の子も基本的にメッチャ内気な少女ですから。でも大丈夫、歪みっぷりはきっとあなたの想像を超えています。

5位 再始の女王三浦良

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紹介しておいてなんですが、意外でした。4巻ばかり売れているところを見ると、うちのブログの読者には、このシリーズを読んでいる人が結構いたのかも。

タグ:アフィリエイト  

開発マネージメントについての議論が高まっている

■デバッグについての話題を多く見かけた

バンダイナムコの『カルドセプト』、セガの『ファンタシースターユニバース』と『ぷよぷよDS』、任天堂の『ポケモン』など、ゲームソフトの不具合が相次いでいます。そのせいか、昨年末から年頭にかけて、ゲーム開発者のブログや掲示板で、デバッグについての話題をいくつか見かけました。

ユーザーレベルの議論としては、重大なバグを出した会社を吊るし上げて集中砲火で叩く意見が圧倒的に多いものの、一方で制作サイドとしては、対岸の火事として安穏と眺めてもいられない気分なのでしょう。騒がれ、目立った事例だけが問題ではなく、たまたま騒がれなかった事例もあるはずで、リスクが高まっているという認識が、ゲーム制作者の間で共有され始めています。

単に、重大なバグを出した会社の問題という視点ではなく、ネットの普及にともない、不具合についての情報、それに対する企業の対応がまたたく間にネットを駆け巡って、炎上する時代だというリスク認識です。

同業他社の人と飲んだり、あるいはメール、チャット、その他で色々な雑談をしていても、不具合に関する話題はやはり出てきました。こういうブログをやっていると、開発スタジオの現場の方からタレコミ的、オフレコ的なメールをいただく事もあります。議論の深さはまちまちなものの、問題がそう単純ではないという認識に至ります。

わかりやすい理由に帰結できるかというと、意外と根深いものに突き当たったりします。個々の事例にフォーカスを当てすぎると、表層的な理由が目について、かえって深層の要因を見失う可能性もあります。包括的に見ていけるよう、事例の収集を淡々と行い、精神論や表面的な解決に陥らないことが必要でしょう。


■要因を探る

比較的、表層レベルの要因を箇条書きにしてみます。
  • 短期開発の案件が増えて、デバッグ期間も短くなった。
  • 国内市場の拡大や、欧米の次世代機市場の好調を受け、仕事の発注が増えていて、管理が甘くなっている。
  • 次世代機の開発において、十分な開発期間が得られなかったり、技術的についていけない部分があり、チームの人数が肥大化したことで、不具合発生の確率が上昇した。
  • デバッグチームの外注化が進み、デバッグ専門の会社の仕事のクオリティにばらつきがある。
  • 海外拠点の活用をふくめて、開発の分業化が進んだため。
要因はもっとたくさん挙げられるでしょう。よりふかく探っていくと、開発マネージメントと企業経営の問題に行き着きます。

少なくない企業で、品質に対してのモチベーションが低下しがちのようです。短納期化は明らかに、この傾向に拍車をかけています。何故なら、期間内で開発を終えることは評価されやすいのですが、不具合を起こさないことは評価されないからです。起きたら責任を問われますが、起きなければ何の評価もされない性質のため、相対的に優先度が下がってしまうのです。失敗を防ぐ仕事は、失敗が起こらないがゆえに評価されないというジレンマを抱えています。

また失敗事例は、企業内においてタブー視されがちです。誰だって、成功はみんなから誉められたいし、失敗は誰からも言及されたくないからです。失敗を失敗と言うと、当事者や関係者から無用の恨みを買ったり、組織内に亀裂を入れることになりかねません。そして失敗はろくに要因分析されず、腫れ物にさわるような扱いになり、結果として同じような失敗を繰り返します。

これは別にゲーム会社に限らず、一般的によく起きていることで、その反省から例えば「失敗学」などが注目を高めているわけです。企業経営において、いかに感情をこじらせずに失敗データベースを蓄積し、未然のミスを防ぐかは、優先度の高い課題になりつつあります。
技術の伝え方(畑村洋太郎)

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失敗学のすすめ

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■「知」の継承

また開発のノウハウ、基本知識の継承がうまくいってない事例も耳にします。と書くと、ゲーム開発者でない人間がまたぞろ「ゲームデザイン学が……」などと言い出しかねませんが、従来感性でやっていた部分を合理化しようという話ではなく、それ以前の問題なのです。

事はもっと単純かつ深刻で、「誰がやってもあんまり変わらない部分」がきちんと伝達されていないケースが多いようです。
  • 各チームで使用するCGツールの種類がバラバラ。
  • 効率的な作業法やデータの管理の方法が異なる。
  • 開発用語の微妙な方言。
  • プログラミングにおける注意事項や、リスク回避のコーディングが浸透していない。
  • 技術情報がまるで共有化されないし、ドキュメントも無い。
  • ビルド周りの環境に落差がある。
  • 処理速度やメモリの最適化のノウハウがシェアできてない。
  • プロジェクトのホームページおよびドキュメント管理、デバッグ管理に差がある。
  • 事後反省がなされない。やっても愚痴と批判の応酬になったり、蓄積されなかったりする。
  •        :
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もちろんきちんとコツコツやってる所はやってるわけで、開発スタジオ間の格差が開いているという事なのかもしれません。幸いにして、ボク自身は比較的良いほうの環境にいると思いますが、割と名の通った会社、世間的には技術力があると思われている企業から、意外とズサンな実態が、風聞として聞こえてくることもあります。

学問的な志としては、ゲーム開発において感性や才能に依存した部分を解体し、汎用化し、プロセス化(マニュアル化)したいという欲望があるのかもしれませんが、じつは現場に最も不足しているのは、「誰がやってもあんまり変わらない部分」のプロセス化と共有化なんじゃないかと思います。

つまり学問的には、ドキュメント化しにくい部分をドキュメント化しやすくするために、理論と用語を整備しましょう、というのが第一歩になりがちなのですが、現場的に必要性が高いのは、ドキュメント化できる/しやすい部分をまずはきちんとドキュメント化しましょうよ、という事です。

■開発戦略とモチベーションの維持

ゲーム会社の存在意義
モチベーションの維持は非常に重要な課題で、ゲームのマボロシのあれれさんの記事は、ゲーム会社のマネージャー向けの、興味深い問題提起です。ゲーム業界は他業種に比べて、ユーザーの声が大きく、伝統的にユーザー志向の強い産業ですが、制作者の「作りたいもの」とユーザーの「欲しいもの」が乖離している、という指摘は説得力があります。

経営側は開発側よりも先に市場に反応しますから、開発側に「作りたくないもの」を押しつける事があり、去年表出した「脳トレクローンなんて作りたくないけど、会社が作れって言うんだよ」問題が思い出されます。開発側からは「ブームなんてすぐに終わる」「脳トレクローンなんて売れないよ」という抵抗が出てくることもありましたが、50万本出荷した『漢検DS』を筆頭にサードパーティの実用ソフトの売れ行きが堅調なため、任天堂の実用ゲームしか売れないという主張は瓦解し、経営サイドが自信を深める材料がむしろ揃いつつあります。

ややバブリーに展開してきているので、さほど長くは持たないかもしれませんが、弾けるまでの儲けられる間に儲けたいのが経営サイドの欲望でしょう。1、2年の間は、この路線の案件は増えるでしょう。

開発技術のキャッチアップにしても、「キャハ。キバっちゃっても、どうせショボグラはショボグラだろ。スクウェア以外ほしくねーよ、ぶははは」という辺りが、ユーザーサイドからの残酷な本音でしょう。開発サイドの強迫観念に報いるほどのリターンはどこにも無いのが実情でしょう。無論、スクウェアやカプコンなどは高い開発力を維持する努力に、リターンが得られます。ユーザーの使える時間が減っているなか、全体として「選別」が進んでいます。いまだに筋の悪い路線に、多大な労力が無駄に突っ込まれている感はあります。

■日本のゲーム業界は復調しているはずだが……

2006年の国内ゲーム市場は97年の記録を追い抜き、史上最高の規模に成長しました。E3縮小を受け、ゲームショウも4日間に増え、日本のゲーム業界は衰退どころか再び絶頂期を迎えつつあります。

任天堂のひとり勝ちと言われつつも、スクウェアエニックスは大幅に利益拡大し、カプコンも北米市場で大成功をおさめています。ハドソン、イマジニアなど、小回り重視で儲けている会社もあり、各社の業績は上向いていて、悪い材料は少ないです。据置ゲーム市場の縮小のあおりで、ロスが生じている企業はあるものの、来期には路線転換の効果が現れてくるはず。2003年頃の停滞期に比べれば、明るい材料が多いです。

しかしモチベーションに関連して、最近「うつ」の話を耳にする事が増えました。ボク自身はあまり縁のない(少なくとも実感のない)ものなので、身近な所でどれぐらい深刻なのかはじつは把握できてはいないのですが、ここ数ヶ月、同業他社の人たちから「うつ」についての話が出てくる事があり、なんとなく頭に残った状態で本屋に行くと、割と目立つところに「うつ」本が置かれているのを見ると、流行ってるのかなあ……などと思うのですが、サンプリング数が少なすぎて、全体の傾向としてどうなのかはちょっとわかりません。
今年一年の様子を見てみないと、何とも言えませんが。

とはいえ、好景気のほうが仕事の量は増えるから、労働負荷という点では、じつは増加傾向にあるのです。また市場の変化が急激なため、多くのゲーム開発者に考え方の転換が求められていて、大きな負荷になっている可能性はあります。数字を達成するために各企業でストレスが生じているのでしょうかね?

ある種の有能さが従来の路線への最適化によるものだとするなら、有能な人物に限って、変化への対応が遅れ、心理的なストレスも抱えこむという、嫌な事態を招いているのでしょうか?

してみると、昨年末あたりからネット上において、マネージメントについての議論、論考が増えつつあるのも、潜在的なニーズが高まっているからかもしれません。

以上、まとまりの無いトピックを飛び飛びに書きましたが、今後ぽつぽつと関連する話題を書いていこうかなと思っています。

(センシティブな話題なので、コメントの際に「管理者にだけ表示を許可する」を使っていただいても結構です。これをチェックして投稿すると、管理人のボクにしか読めませんし、ボクでも公開は不可能です。オフレコ専用機能ですね。)

テーマ:ゲーム - ジャンル:ゲーム

選挙+神様ゲーム 『神様ゲーム5 カミハナミダヲサガスベキ?』

神様ゲーム5 カミハナミダヲサガスベキ?宮崎柊羽
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4巻でかのう様の秘密の一端が明かされて、今回は再びいつもの神様ゲームが始まります。逃げ出した雨の鳥を追いかけて、雨の神が叶野市にやってきました。神様である事にプライドをもち、人間を馬鹿にしている彼女を、多加良たちは持て余します。なにしろ今は忙しい。生徒会選挙が始まったからです。打倒、鈴木! をめざして頑張ってきた多加良の執念がついに実るのか!? 

生徒会選挙、願いの種、雨の鳥探し、と三重のゲームが多加良の前に立ちはだかります。選挙もなぜかルールが改定されて、この高校らしい要素が加わります。さすがにボリュームが多く、シリーズで最もぶ厚い400ページ超!

今回の白眉は、一年の立候補者である五藤と友人の岸田、雨の神である雨緒の三人の友情の部分でしょう。相手に何を望むのか、相手が本当は何をしたいのか、その違いって難しいです。そもそも自分が本当は何をしたいのかさえ気づかないこと、なかなか認められないことがありますよね。この三人の間には、多加良たちがすでに失っている初々しさがあります。

シリーズを通した謎も深まります。
願いの種をもつ者はすなわち何かしらの成長を遂げることで、願いの花を咲かせます。神様でも、人間でも例外はありません。多加良の役目は、見守り、時に導くことです。しかし、では叶野市で唯一願いを持たない(夢は持っている)多加良はどうなのでしょうね? 今回彼の特異性にあらためて言及されてますが……。

彼にも何らかの謎が隠されているのでしょうね。また最後に登場した謎の人物が気になりますが、次巻以降はいよいよ叶野市の謎とかのう様の目的を巡る物語が展開するのでしょうか。


関連
ゲーム小説のお手本かも 『神様ゲーム』

テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

タグ:スニーカー  神様ゲーム  宮崎柊羽  

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